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【特集】コロナ時代を疾走する「ギグワーク」関連株、副業・兼業の解禁も追い風 <株探トップ特集>

新型コロナによる景気悪化で、インターネットを通じて単発で仕事を請け負う「ギガワーカー」は急増している。それとともに、ギガワークに絡むビジネスも活発化している。

―収入減をクラウドソーシングで補う、新しい働き方として注目度は急上昇中―

 新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言が発令された4月以降、「ギグワーカー」が急増している。休業者数が過去最高に達するなど雇用環境の悪化によって、収入減を クラウドソーシングで補いたいと考える人々が増加したためだ。一方で、政府は副業・兼業の普及拡大に向け、労働者が本業以外で働いた労働時間を自己申告制とし、企業側の労務管理負担を軽減する新たなルールを整備する方針を示している。国や企業の動きによってギグワークの市場は今後、一段と拡大しそうだ。注目を集めるギグワーク関連株を探った。

●緊急事態宣言を機に増加、雇用環境の悪化が背景に

 インターネットを通じて、単発で仕事を請け負う「ギグワーク」と呼ばれる仕事に対する関心が高まっている。新型コロナ感染症の拡大を背景に4月以降、ギグワークをこなすギグワーカーは一段と増加している。雇用環境の悪化に加え、緊急事態宣言の解除後も、依然として多くの企業が在宅勤務を継続していることも副業を後押ししている。

 更に国の政策も追い風だ。少子高齢化による労働人口の減少などを背景に国が進める「働き方改革 」の一環として、厚生労働省では副業・兼業の普及促進を図っており、2018年1月に副業・兼業の促進に関するガイドラインを策定。「モデル就業規則」から副業禁止の規定を削除し、「原則禁止」から「原則自由」へと方針を180度転換した。副業・兼業は、本業では得られない経験やスキルを身につけて、主体的なキャリアを形成することができるとして関心を持つ人が増加傾向にある。また、働き方改革によって、労働時間が減少する一方で残業代が減少したため、副業ニーズが高まった側面もある。

●「ウーバーイーツ」が代表例、大手業者の登録者数は前年末比2ケタ増も

 ギグワークという用語は、IT時代の労働市場を象徴するキーワードとして15年ごろから米国を中心に使われ始めたが、日本での認知に大きく貢献したのが飲食店の料理を自転車などで配達する「ウーバーイーツ」だろう。配達員は、時給制(拘束時間)やノルマ制ではなく、報酬が1件の配達ごとに支払われる形式のため、空き時間を使って自由に仕事ができる。6月24日付の日本経済新聞は、仕事の発注者と受注者を専用サイト上で仲介するクラウドワークス <3900> [東証M]、ランサーズ <4484> [東証M]、うるる <3979> [東証M]、ココナラ(東京都品川区)、の大手4社主要サイトの累計登録者数は「5月末時点で昨年末比約15%増の約700万人となった」と報じている。同報道によると、主要な専門仲介サイトでは新型コロナ感染拡大前までは副業者の登録は3割程度だったが、「コロナ以降は副業者の割合が6~7割以上になっているサイトもある」という。

 政府の方針を受けて、企業側でも副業・兼業の解禁が進んでいる。従来、日本企業の大半は副業を認めていなかったが、副業の解禁は逆に「優秀人材」が自社から離れることを防止することができるメリットもある。更に、副業で社員が得た知識やスキル、経験は、本業にもプラスとなると考えられている。また、企業側の「外部人材」に対する意識もこうした潮流の中で変化してきており、企業経営の中枢にあたる部分でも仕事を外部の個人に発注する動きが広がりをみせている。

●副業・兼業の環境整備も進む、ウィズコロナ時代の新たな働き方に

 ここにきて、政府は副業・兼業の普及拡大に向け、労働者が本業以外で働いた労働時間を自己申告制とする新たなルールを整備する方針を示した。ウィズコロナ、ポストコロナの時代の働き方という観点からも重要で、今秋の導入が目指されている。そもそも従来の労働基準法では、過度な労働を避けるために、企業が本業と副業の労働時間を通算して把握することを求めている。しかし、実際にはこの労務管理が非常に難しい面もあることから、新たなルールでは労働時間の申告漏れや虚偽申告があっても企業側の責任を問わないとすることで、副業・兼業の促進を企図している。こういった国や企業の動きも加わることで、ギグワーカーと呼ばれる労働者が増えることが想定され、関連企業への業績寄与が見込まれるだろう。

 なお、「フリーランス」という働き方も増えているが、ギグワーカーがインターネットを通じて単発で仕事を請け負うのに対して、フリーランスは一つのプロジェクトを請け負い、納期までに完成させるような働き方である。ギグワークという言葉には、ちょっとした副業といったようなニュアンスも含まれている。

●クラウドワークス、ランサーズ、うるるなど要マーク

 関連銘柄としては前述のクラウドワークス、ランサーズ、うるるの3社が中核となるだろう。その他、ソーシャルメディアシェアリングエコノミーに注力するガイアックス <3775> [名証C]は副業・パラレルキャリアの流れにあわせ、社内の事業リーダー育成研修を「ワークシフト・スクール」と命名し、社外公開している。ギークス <7060> はITフリーランスの働き方を支援し、企業とマッチングするサービスを展開している。働き方改革、コロナ禍における生活スタイルの変化によって、IT人材事業の需要が増えそうだ。ギグワークス <2375> [東証2]は10万人を超える登録エージェントの空いた時間やスキルに合わせて、多様な業務をマッチングする。

 人材サービス大手のパソナグループ <2168> は、中小企業等とフリーランスや副業・兼業、プロボノ(Pro bono:各分野の専門家が、職業上持っている知識・スキルや経験を生かして社会貢献するボランティア活動のこと)などで活動する複数の仕事を持つ複業人材をマッチングする複活プロジェクトを展開している。また、ディップ <2379> は人材サービスに加え、AIRPAを提供する「労働力の総合商社」を掲げており、エンジニア特化の人材紹介サービス「Dev.Dev.」を展開。みらいワークス <6563> [東証M]は、都心の副業・兼業人材を地方の中小企業に紹介する。

●資格取得などキャリアアップでTAC、LINK&Mなども

 更に、新型コロナ感染症の影響によって解雇され生活に大きな影響を受けている人たちや、雇用され続けていたとしても将来の人員削減に不安を抱いている人は少なくないだろう。一方で、コロナ禍による新たな経済のなかで強いキャリアを得ようとする動きもみられる。こうした流れは、資格取得などのキャリアアップに向けた事業を展開する企業への追い風となる。主な関連銘柄として、TAC <4319> は公認会計士、税理士、簿記検定、法律、司法試験、公務員・教員、国家総合職、経営学検定、情報処理・パソコン、実務・スキルアップなどさまざまな分野における資格試験・資格取得対策の学校を展開している。リンクアンドモチベーション <2170> は、「PCスキル」「プログラミング」「資格取得」「語学スキル」をワンストップで提供している。

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