【特集】“医療ビッグデータ&AI”融合、「ヘルステック関連株」変貌の夏へ <株探トップ特集>
最先端のICTを駆使して効率的かつ付加価値の高い医療サービスを生み出すヘルステックが注目されている。株式市場でも関連銘柄が相次いで人気化する動きがでてきた。
―超高齢化社会と新型コロナ遭遇が世界を変える、医療ICT加速で難局打開―
新型コロナウイルスによって日本経済や株式市場は激震に見舞われたが、日経平均株価はその後急速な戻り足をみせ、実体経済も活動再開の動きが徐々に軌道に乗ってきた。ただ、コロナショック後の世界はこれまでとは異なる風景が待っている可能性が高い。われわれの日常生活、そしてビジネス社会に変革の流れが生じている。歴史的な経済のパラダイムシフトへとつながっていくケースも想定される。そうしたなか、新型コロナとの共生をテーマに産業界ではデジタル化投資が加速する気配がある。金融、流通、建設、そして医療業界もまたその一つの断片図となる。
●医療のデジタル化は時代の要請
全人口の5分の1が65歳以上という超高齢化社会に既に突入している日本だが、第1次ベビーブームで生まれた世代が後期高齢者になる2025年には、この比率が30%にまで高まると予測されている。わが国にとって医療におけるコスト効率改善とサービスの付加価値化は重要な課題となっていることは言うまでもない。たとえ患者が増勢となり医療従事者が減少しても、デジタル化を推進して医療・ビッグデータ ・人工知能(AI)の3つを融合させることで、これまでは考えられなかった新たな可能性が生まれる。
ここにきて最先端のICTを駆使して効果的な医療サービスを生み出すヘルステックが世界的見地で注目されており、医療ビッグデータをベースとした医療情報の電子化や電子カルテの導入、ウェアラブルデバイスの活用などによってその市場は拡大の一途にある。ヘルステック分野において、今から2年後の22年には3000億円を上回る規模のマーケットが創出されるとの試算もあるが、年々高齢化が加速するなかで、これは中長期拡大シナリオの入り口の段階に過ぎないことも明らかだ。
●新型コロナで導入加速のスイッチ入る
日々の診察で蓄積された膨大な情報を集積した医療ビッグデータは、それを活用することにより、疾病予防や個々の患者に合わせた最適な医療サービスの提供を実現させることを可能とする。政府は18年5月に医療分野に特化したビッグデータを利活用できる法律「次世代医療基盤法」を施行し、昨年12月には実際の運用を担う機関を選定するなど、本腰を入れて取り組む姿勢をみせている。民間企業の参入も本格化しており、今後は官民一体となって医療のデジタルシフトを後押しすることになりそうだ。
世界を震撼させた新型コロナの驚異的な感染拡大もヘルステックを推進する大きな契機となり得る。今回、感染者数が増加する過程で病院クラスター(院内感染 )が問題視されたが、これからは遠隔医療やAI診断といった技術に対するニーズも加速的に高まることが予想される。株式市場でも投資テーマとしてヘルステックはがぜんその存在を大きくしていくことは必至だ。
●「ヘルステック」の最強プレーヤー5銘柄
全体相場はここにきて上昇一服モードで最近の空模様のようにはっきりしない動きとなっているが、ここは梅雨明け後に待つ夏相場のリード役としてヘルステック関連の有望株に照準を合わせたい。ここから株価の居どころを変える可能性に満ちた5銘柄を選出した。
◎キーウェアソリューションズ <3799> [東証2]
NEC系のシステムインテグレーターで金融や通信向けで実績が高いほか、医療分野での案件獲得が進んでいる。医療ICTではオーダリング・電子カルテシステムのほか、臨床検査システム、病理検査システムなど各種検査システムを取り揃えている。また、新型コロナ感染症では院内感染によるアウトブレークが問題視されるなか、同社は国内初の院内感染監視システム「Medlas-SHIPL」を手掛けている点が注目されている。20年3月期営業利益は前の期比35%増の4億3300万円と大幅な伸びを達成、続く21年3月期も前期比4%増の4億5000万円と伸び率こそ鈍化するものの増益基調を維持する見通し。中期成長期待の高さとは裏腹にPERやPBRなどの投資指標に割安感がある。
◎ケアネット <2150> [東証M]
医療向け情報サイト「ケアネット」を運営し製薬メーカーの営業支援業務のほか、動画配信による講演や医師向け教育コンテンツなども展開している。情報サイトの医師会員数は5月25日時点で16万人を突破するなど拡大が顕著だ。新型コロナ感染症への対応で、製薬企業のマーケティングも対面ではなくWeb講演会を活用する動きが加速しており、同社の商機拡大につながっている。20年12月期は最終減益見通しも本業のもうけを示す営業利益は前期比3%増の6億2400万円を予想している。しかし、第1四半期(1-3月)に前年同期比53%増の1億8900万円と大幅な伸びを達成しており、既に中間期計画を超過していることから通期予想も増額修正への期待が募っている。
◎ファインデックス <3649>
国立大病院など大規模病院向けを主力に医療用汎用ファイルシステムを展開している。ここ最近は遅れていた中小医療機関のICT活用の動きも徐々に広がりをみせており、同社の収益機会も膨らんでいる。ヘルステック分野ではビッグデータを活用した独自の視野検査システムや、企業や個人の安全・健康管理、遠隔医療などに対応したウェアラブルデバイス関連などで実績が高い。主力製品を中心に複数製品納入で案件の大型化が進み収益に寄与している。20年12月期は本社移転に伴うコストやシステム納入の後ズレなどが影響して営業利益段階で前期比22%減の5億8000万円を見込むが、第1四半期(1-3月)時点で前年同期比2.3倍の6億5100万円と通期計画を大幅に上回った。
◎メディカル・データ・ビジョン <3902>
医療機関や製薬会社向けに医療ビッグデータの独自構築と利活用サービスを提供する。病院や個人から2次利用許諾を経て情報を蓄積し、日本最大級の量と質を誇る診療データベースを確保しており、医療現場での薬剤処方実態の分析などを可能としている。近年重視されるEBMでも同社の活躍余地は大きい。そのデータベースは今年5月末時点で既に3200万人弱に達している。また、医用画像や血圧などのバイタルデータを活用した分析事業にも傾注している。業績も好調を極め、ここ数年にわたりトップラインの伸びが顕著で、利益面でも19年12月期は営業利益段階で前の期比2.3倍の8億900万円、続く20年12月期も11%増の9億円と2ケタ成長を継続する見込みにある。
◎MRT <6034> [東証M]
非常勤医師の紹介サイトの運営を主力に医療人材サービスビジネスを提供しており、全国8000医療機関と連携して医師の転職サポートも行う。また、日本初のスマートフォンで利用可能な遠隔医療アプリ「ポケットドクター」は有名で、このほかパソコン、スマートフォン、タブレットに対応した医療向けグループウェア「ネット医局」など展開エリアは多彩だ。塩野義製薬 <4507> とは6月初旬に新型コロナ抗体検出キットの販売契約を締結したことを発表し注目を集めた。業績は決算期変更に伴い前期実績との単純比較はできないが今期も好調を持続、システム投資などのコストをこなしながら、20年12月期営業利益は2億5000万円と高水準をキープする見通しだ。
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