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【特集】成長加速“Eコマース業界”の黒子を追え、脚光「EC支援企業」 <株探トップ特集>

緊急事態宣言下で続いた自粛は、Eコマース利用の拡大にさらなる拍車を掛けた。こうしたなかEC支援企業の商機も拡大している。

―止まらないEC利用増加で参入企業にも広がり、注目は裏方にも―

 新型コロナウイルス の感染拡大は、消費動向に大きな変化をもたらした。特に4月7日に埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、及び福岡県に緊急事態宣言が発出され、4月16日にこの対象区域が全国へと拡大して以降、一部商業施設への休業要請とも相まって、消費者の実店舗での利用が減少し、一方でEコマース(EC)を利用する人が増加した。

 その後、感染拡大の勢いが緩やかになり、5月25日には緊急事態宣言が解除されたものの、引き続き「ステイホーム」の状況は続いている。商業施設にも客足が戻りつつあるものの、「コロナ前」に回復するのには時間を要するとの見方が一般的だ。

 こうしたなか、実店舗の来店客の減少を少しでもカバーするために、本格的にECに乗り出す企業が増加している。それに伴い、こうしたECを支援する企業のビジネスチャンスも拡大しており、関連銘柄には注目が必要だろう。

●EC市場は年9%台の高い伸び

 もともとEC業界は、成長過程にある市場だ。経済産業省が昨年5月に発表した「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、2018年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は17兆9845億円(前年比9.0%増)に拡大した。ここ数年では、9%台の高い伸びとなっており、19年も同様の伸長が見込まれている。もっとも、商取引金額全体に対するECの割合を示すEC化率はBtoC-ECでは6.22%(物販分野)に過ぎず、20%を超える中国などに比べて成長余地が大きい。

 こうした市場の成長が新型コロナウイルスの感染拡大で更に加速する可能性が高まっている。消費者庁が6月17日に発表した6月の物価モニター調査(速報)で、この2ヵ月の間にどの程度の頻度でネットショッピングを利用したかを聞いたところ、「月に2~3回程度」と回答したモニターの割合が34.9%に達し、「月に1回程度」26.4%、「週に1回程度」17.8%、「ほとんど利用していない」14.0%、「週に2~3回以上」6.9%と続いた。ECの利用は日常生活に根付いており、コロナ禍をきっかけにこれが更に市場を拡大させそうだ。

●EC支援への注目高まる

 市場の拡大に伴い、ECに参入する企業も広がりをみせている。特に最近では、新型コロナウイルス感染症の影響で、実店舗の集客が厳しくなった事業者がECを始めるケースが世界的に拡大しており、これを支援するサービスも増えてきた。

 5月19日には、米フェイスブックが、中小企業が手軽にECを始められる「Facebook Shops(フェイスブックショップス)」を開始した。新型コロナウイルスの感染拡大が日本に比べてはるかに深刻な米国では、企業も死に物狂いとなっており、急速に使用を広げているという。

 日本でも、フェイスブックの日本法人であるフェイスブック ジャパンが6月16日に同サービスの提供を開始した。また、既に国内でサービス展開している、EC開業支援の世界大手であるショッピファイの日本法人では4月、新規サイトの開設件数が3月より5割増えたと伝わっている。

 こうした世界的大手以外にも、日本でECのノウハウを持ち、EC進出への支援を行う企業が注目を集め始めている。これまで株式市場では、ECといえば自らプラットフォームを有する楽天 <4755> や国内におけるCtoC-EC(個人間電子商取引)大手のメルカリ <4385> [東証M]などが注目されがちだったが、今後はEC支援企業も脚光を浴びそうだ。

●BASEやHameeなどに注目

 BASE <4477> [東証M]は、誰でも簡単にネットショップが作成できるサービス「BASE」を展開しており、累計ショップ開設数は5月時点で100万ショップを突破。特に新型コロナウイルス感染症の影響が深刻化した3月下旬以降、新規ショップ開設数が急増しているという。20年12月期第1四半期(1-3月)はBASE事業及びネットショップ向けに決済機能のみを提供するPAY事業ともに伸長し、売上高は前年同期比実質47.1%増の11億2400万円と成長。営業損益は人件費の増加で2800万円の赤字となったが、前年同期の2億300万円の赤字よりは改善している。

 Hamee <3134> は、ECバックオフィスの業務効率化・自動化を目的としたクラウド型ECプラットフォーム「ネクストエンジン」を提供。総契約社数は4000社を突破している。20年4月期はEC関連市場の好調さに新型コロナウイルスの影響によるECシフトの動きが加わり、営業利益は17億4400万円(前の期比50.0%増)と大幅増益となった。21年4月期通期営業利益は17億7800万円(前期比1.9%増)を見込む。

 ジェネレーションパス <3195> [東証M]は、自社でEC事業やネットマーケティング事業などを展開するほか、子会社カンナートがECの導入コンサルタントからシステム開発、運用までのECサポート事業を展開している。20年10月期上期業績はEC需要の高まりや、ECサポート案件の増加などにより、連結営業利益が6700万円(前年同期比5.0倍)に伸長。通期業績予想で営業利益は1億円(前期比5.0倍)を見込んでいる。

 ソフトクリエイトホールディングス <3371> は、自社開発のソフトウェアにカスタマイズを加え顧客システムを構築するシステムインテグレータで、主力の「ecbeing」はECサイト構築分野で高いシェアを有している。「ecbeing」の販売、保守及びホスティング売り上げの伸長を牽引役に20年3月期連結営業利益は23億7900万円(前の期比26.1%増)となった一方、21年3月期は同22億7000万円(前期比4.6%減)と減益を見込むが、Windows10へのリプレース需要の剥落が要因で、「ecbeing」は引き続き需要の増加が期待できる。

 ラクーンホールディングス <3031> は、アパレル・雑貨などのメーカーと小売店や飲食店などの事業者が利用する卸・仕入サイト「スーパーデリバリー」を運営しており、小売店は実店舗とネットショップを対象としている。20年4月期は、期末の会員小売店数が16万7067店舗(前期末比31.4%増)、出展企業数が1853社(同30.6%増)と拡大しており、これを牽引役に営業利益が7億600万円(前の期比28.7%増)と連続で最高益を更新した。21年4月期は会員小売店数、出展企業数の増加スピードが加速するとみて、連結営業利益8億1000万円~9億円(前期比14.7~27.5%増)を見込んでいる。

 このほか、ECの決済に強いGMOペイメントゲートウェイ <3769> などにも注目。また、博報堂DYホールディングス <2433> 傘下の博報堂は6月16日、企業が自社の製品をネットを通じて消費者に直接販売する「D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)」ブランドの立ち上げなどを支援するサービスを開始すると発表。博報堂グループの企業と連携し、ブランド設計や商品企画から店舗運営までを支援するとしていることから、注目されそうだ。

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