【特集】キャッシュレスの急先鋒、「QRコード関連」統一規格で躍動高の予感 <株探トップ特集>
政府がキャッシュレス決済の更なる普及に力を入れている。導入店舗の一段の拡大に向けて切り札となりそうなのが複数のQRコード決済を一括で利用できる統一規格「JPQR」だ。
― 本格始動する「JPQR」、総務省の後押しで国策関連として投資マネー呼び込む―
政府が キャッシュレス決済の更なる普及に力を入れている。背景には消費者の利便性向上や店舗の効率化、データの利活用を促進する狙いに加え、新型コロナウイルスの感染予防につながることがあるもよう。キャッシュレス決済は紙幣や硬貨に触れる必要がないことから、厚生労働省が5月4日に公表した新しい生活様式の実践例でも利用が推奨されている。2019年10月の消費税率引き上げに伴って始まったキャッシュレス・ポイント還元事業は今月末で終了する予定だが、導入店舗の一段の拡大に向けて切り札となりそうなのが複数のQRコード決済を一括で利用できる統一規格「JPQR」だ。
●現状の課題解決へ
政府は昨年10月からキャッシュレス決済で支払うと2~5%のポイントが還元される制度を始め、今年6月時点の登録加盟店数は約115万店と開始時の約50万店から順調に伸びた。全国に対象となりうる中小・小規模事業者は約200万店あるとされ、半数以上が参加したことになる。ポイント還元事業に参加した店舗では対象決済金額が消費支出全体の傾向を上回る割合で増加し、経済産業省によれば19年10月の数値を1とした場合、20年3月の消費支出全体が1.03であるのに対し、対象決済金額は1.26とキャッシュレス決済比率の上昇が裏付けされた。
同事業によってキャッシュレス決済は一定程度広がったが、今後は“お得感”に頼らない普及策が求められることになる。そこで注目されているのが、キャッシュレス推進協議会が策定した決済用QRコード・バーコードの統一規格「JPQR」で、これは複数社ある決済コードをひとつにまとめる(統一化)もの。現状では決済事業者ごとにコードが異なるため、対応している店舗がまちまちで消費者にとってわかりにくいほか、店舗側にとってもそれぞれのサービスにあわせてシステムを拡張する必要があり、中小小売店などへの浸透の足かせとなっている。JPQRを導入すれば、こうした課題を解決することができ、政府が掲げる「25年までにキャッシュレス決済比率を40%程度まで高める(18年は約24%)」との目標に一歩近づくことが期待される。
●参加予定18サービス
総務省は経済産業省と連携して、昨年から5つの地域(岩手県、長野県、栃木県、和歌山県、福岡県)で加盟店開拓業務プロセスなどの検証と、低廉な決済手数料率でのサービス提供などによるキャッシュレス化の進展の検証を実施。この結果を受けて今月22日から全国の店舗を対象に導入の受け付けを開始する。
JPQRには現在、ソフトバンク <9434> とZホールディングス <4689> 傘下のヤフーが出資する「PayPay」をはじめ、LINE <3938> の「LINE Pay」、メルカリ <4385> [東証M]の「メルペイ」、楽天 <4755> の「楽天ペイ」、ゆうちょ銀行 <7182> の「ゆうちょPay」、ファミリーマート <8028> の「FamiPay」、沖縄銀行 <8397> の「OKI Pay」、KDDI <9433> の「au PAY」、NTTドコモ <9437> の「d払い」など18事業者が参加を表明済み。
また、普及事業の請負事業者に凸版印刷 <7911> 、WEB受け付けシステム提供事業者にTIS <3626> 、JPQR店舗売り上げ一括管理画面提供事業者にはマネーフォワード <3994> [東証M]が選定されている。
このほか、キャッシュレス推進協議会の会員となっているビリングシステム <3623> [東証M]、フライトホールディングス <3753> [東証2]グループのフライトシステムコンサルティング、GMOペイメントゲートウェイ <3769> 、バリューデザイン <3960> [東証M]、インテリジェント ウェイブ <4847> 、メタップス <6172> [東証M]グループのpring、イオンフィナンシャルサービス <8570> 、エムティーアイ <9438> などの今後の動向にも注目しておきたい。
●アイティフォー、メディアSなどにも注目
経済産業省は10日、キャッシュレス決済の普及促進に向けた課題や方策を議論する検討会を立ち上げた。6月末のポイント還元制度の終了後も非現金化の機運が下がらないようにすることが主な目的で、加盟店手数料の負担が重いことや売り上げ入金サイクルが長いといった問題について話し合う。また、再選を目指す東京都の小池百合子知事は都知事選の公約のひとつとしてキャッシュレスの推進を掲げており、キャッシュレス社会の実現に向けた流れに変わりはない。こうしたことから、その他の関連銘柄にも更なるビジネス機会が期待できそうだ。
QRコードを使った電子通貨サービス「MONEY EASY」を手掛けるアイリッジ <3917> [東証M]、QRコードを使ったスマートフォン向け決済サービス「SKIYAKI PAY」を運営しているSKIYAKI <3995> [東証M]、スマートフォン向けQRコード読み取りアプリ「アイコニット」を展開しているメディアシーク <4824> [東証M]、バーコードリーダー大手のオプトエレクトロニクス <6664> [JQ]などに商機がありそう。
直近ではアイティフォー <4743> が12日、キャッシュレス決済端末「iRITSpay(アイ・リッツペイ)決済ターミナル」の新製品開発に着手したと発表。従来の決済端末は対面販売用の据置型やモバイル型(ポータブル型)マルチ決済端末だったが、新たに開発するのはクレジットカードのコンタクトレス決済、QRコード決済に対応した無人販売用の組み込み型決済端末「iRITSpay決済ターミナル S1(エスワン)」で、上期中の開発完了を目指すとしている。
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