【市況】明日の株式相場戦略=トヨタ急ブレーキでも動じない相場
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
きょうの相場における一つのポイントは、後場取引時間中に発表されるトヨタ自動車<7203>の20年3月期決算と21年3月期の見通しがどうなるかということだった。売上高30兆円規模で時価総額21兆円のトヨタはいうまでもなく全上場企業の中で群を抜く。主力大型株としても東京市場において野中の一本杉的存在であり、自動車業界の盟主というべき同社株の動向は全体相場に与える影響も大きい。同社は今回の決算に先立って2月6日に通期業績の上方修正を発表しており、この時は営業利益を従来見通しの2兆4000億円から2兆5000億円に1000億円上乗せしていた。ただし、新型コロナの影が覆いかぶさってきたのはこの増額を開示した後だ。その意味でも注目されたが、結果として、営業利益は前の期比微減の2兆4428億円だった。計画ラインに未達だったとはいえ、増額前の従来予想水準は上回って着地した。
もっとも、マーケットが目を剥いたのは今期、つまり21年3月期の営業利益見通しの方だ。業績見通し非開示の企業が多いなか、当然同社も右に倣えで「未定」で仕方ないというムードはあったはずだが、売上高と営業利益について予想を開示した。売上高で前期比2割減の24兆円、そして営業利益段階では何と8割減の5000億円という予想を出してきた。営業利益については事前の市場コンセンサスは1兆8000億~1兆9000億円であったから、その見通しの厳しさには「唖然とするよりないところ」(国内中堅証券アナリスト)である。しかし、これを受けた同社の株価はどうだったかというと、ショック安というような形容は全くあたらない落ち着いたものだった。さすがに織り込み済みとはいかなかったが、下げ幅は2%程度にとどまり、25日移動平均線を下放れることもなく、通常モードのもみ合いの延長に過ぎなかった。更に、全体相場に与える影響も極めて軽微で、むしろ発表後の日経平均は先物主導で上値慕いの動きとなり、一時プラス圏に切り返す強さをみせた。トヨタの今期見通しを受けて市場関係者は唖然とさせられたが、同社株を売り建てていた空売り筋は、その後の株価の頑強ぶりに開いた口がふさがらなかったのではないか。
ともあれ、警戒はすれども下値の固い相場が続いている。個別株戦略もその分やりやすさがあるものの、通期決算発表が本格化すると特殊な地合いとなることも否定できない。ボラテイリティが高まる銘柄というのは直近決算を発表したものに集中しやすく、日計り対応の動きとしては、例えば前日引け後の好決算銘柄(今期予想も含む)のギャップアップにいかに乗るかというようなムードが強い。ただし、それはその時の板情報に特化したトレードであり、テーマや成長シナリオは関係ない文字通りのマネーゲームだ。
それよりは決算が既に発表されたものや決算期のずれたものの中から、冷静に強い銘柄を見つけるという作業が、こういう時期であるからこそ大切である。
コロナ禍にあっても収益デメリットを受けにくい銘柄としては、繰り返しになるがシステム開発関連の銘柄が挙げられる。その範疇では自動車や金融向けソフトウェアで強みを発揮する東海ソフト<4430>や、IoT市場開拓に意欲を燃やすACCESS<4813>の今の株価ポジションは魅力的だ。また、NTTグループや日立グループ向けで実績の高いCIJ<4826>も上値慕いのトレンドでマークしておきたい。
このほか、瞬発力に富む好業績の小型材料株では、計測用記録紙の大手で、呼吸機能検査記録紙、脳波計記録紙、心電図記録紙など医療関連分野とも関係の深い国際チャート<3956>あたりに妙味がありそうだ。
日程面では、あすは朝方取引開始前に財務省から3月の国際収支が発表され、午後取引時間中に内閣府から4月の景気ウォッチャー調査が発表される。海外では4月の米生産者物価指数が開示される。米30年債の入札も予定。このほか、ニュージーランド中銀の政策金利発表、3月のユーロ圏鉱工業生産など。(中村潤一)
出所:MINKABU PRESS