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【特集】深まるコロナ危機、迷走する世界株市場と経済対策の行方を追う <株探トップ特集>

新型コロナウイルスの感染拡大を背景に世界の株式市場の混乱が続いている。金融政策に続き財政政策の方にも期待が高まるなか、政府の緊急経済対策に注目が集まることになる。

―12兆円「日銀ETF砲」に期待と不安、所得補償策の実施などが焦点政策に―

 新型コロナウイルスの感染拡大を背景にした、世界の株式市場の混乱が続いている。米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行はそろって緊急の金融政策決定会合を開き、追加緩和を決定したが、日米ともに株価は大幅下落した。期待した政策への株価反騰の効果はみられず、「コロナ危機」に直面した市場は、なす術もなく立ちすくんだ状態にみえる。ただ、「今回の危機に対応する主役は中央銀行ではなく政府だ」との見方が多い。また、金融政策に対しても今後着実に効いてくるともみられている。金融対策への評価と今後の展開を探った。

●FRBと日銀の矢継ぎ早の対策も株式市場は急落で応える

 16日の米株式市場で、 NYダウは前週末に比べ2997ドル安と過去最大の下げ幅となり終値ベースで3年2ヵ月ぶりの安値圏に下落した。15日には臨時の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ1.0%の緊急利下げを実施し、ゼロ金利政策の復活と量的緩和の再開に踏み切ることが発表された。それだけに、16日のNYダウ大幅安に対する失望感は大きい。市場からは「利下げによって新型コロナの感染拡大を食い止めることはできない」(市場関係者)と突き放す声が出ている。また「FRBはこれで打てるだけの手は全て打った」(アナリスト)との見方も多い。それだけに、手詰まり感を背景に売り方の攻勢が強まったことも、NYダウ大幅安の要因となった様子だ。

 また、日銀も16日に臨時の金融政策決定会合を開催し上場投資信託(ETF)の購入目標を年12兆円と倍増することなどを発表した。しかし、この対応を発表した同日の 日経平均株価は429円安と大幅安となった。きょうは9円高と小幅に上昇したが、上値は依然重い。ただし、今回の危機の本源は、新型コロナの感染拡大に伴う実体経済の急激な落ち込みにある。リーマン・ショックのような金融システム不安の際とは、処方箋も当然、異なってくる。

●移動制限や国境封鎖で実体経済の悪化は必至の情勢に

 実際、新型コロナのイタリアやスペイン、それに米国など欧米へと感染が拡大し、移動制限や国境封鎖の動きが強まっている。こうしたなか市場は、これから表面化する実体経済の急激な縮小に備え、身をすくめている状況にある。既に、その一端は見え始めた。中国の1~2月小売売上高は前年同期比20%減、鉱工業生産は13%減となった。また、16日に発表された3月ニューヨーク連銀製造業景気指数はマイナス21.5と大幅に落ち込んだ。企業業績の大幅な悪化も必至であり、日本では4月下旬から発表される決算内容と来期見通しの内容への警戒感が高まっている。

●自営業などへの現金給付や中小企業減税に期待感高まる

 そんななか、今回のコロナ危機で市場が期待しているのは、金融対策より財政政策だ。特に、自営業やフリーランスなどを対象にした現金給付や中小企業向け減税などが注目されている。米国では給与税減税への期待が強い。日本政府は4月に緊急経済対策をまとめるとされ、そのなかで新型コロナの影響で落ち込んだ所得の補償策が打ち出されるとみられている。「政府の緊急経済対策は前倒しで打ち出されることも求められている」と東海東京調査センターの庵原浩樹シニアストラテジストはいう。

 更に、いま市場が最も注目しているのは、新型コロナの新規感染者数の推移だ。それだけに、感染者数の増加傾向が続くなかでは、金融対策の効果は限定的だ。とはいえ、「感染者数の増加が落ち着けば、金融政策の効果は出てくるだろう」と庵原氏はいう。その具体例として注目されているのは、中国株式市場の動向だ。中国の上海総合指数は2月初旬を底に3月上旬にかけて上昇した。新型コロナの感染者数の増加に歯止めがかかってきたことに加え、中国政府が積極的な経済対策を打ち出したことが相場を押し上げた。

●日銀ETFの評価には強弱感、日経平均はPBR0.8倍ラインの攻防に

 また、日銀によるETF買い入れ枠が12兆円に倍増したことに対する市場の関心は高い。アベノミクスが始まった13年には外国人が15兆円を買い越したことが話題となったが、もし日銀がETFを通じて12兆円を買い入れれば、当時の外国人買いに匹敵する規模となる。このため、日銀のETF砲への市場の期待は強い。もっとも、日銀のETF買いの評価には強弱感があり、「下げ相場でのETF買いは絶好の売り場提供となるかもしれない。また、日銀保有のETFの損益分岐点が1万9500円程度といわれるなか、含み損が発生しかねないことも気になる」(キャピタル・パートナーズ証券の倉持宏朗チーフマーケットアナリスト)と賛否の声が入りまじっている。

 いずれにせよ、いまや市場の関心が向かっているのは新型コロナの感染者数の推移と政府の所得補償や減税などの政策だ。日経平均株価は、リーマン・ショック時の下値サポートラインとなったPBR0.81倍(約1万6800円)前後で下げ止まっている。市場関係者から「コロナ危機に対する政策の主体は、いまや中央銀行から政府に移った」との見方が出ている。市場が持ちこたえている間に、政府が有効な政策を打ち出せるかが焦点となりつつある。

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