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【市況】明日の株式相場戦略=アルゴ売買で企業のダイナミズムは失われない

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 相場は人間心理の塊でできている。昨今はAIを使ったアルゴリズム売買が幅を利かせているとはいえ、本質的な部分は今も昔も変わらない。ニュースヘッドラインに反応してAIがマシンガンのように売り始めたら、誰もその流れに逆らって買い進もうとは考えないし、場合によっては売りで追随して利益を得ようとする。結局相場を左右するのは人の心だ。

 きょう(8日)の東京株式市場では日経平均が一時600円を超える下げをみせた。朝方にイラク国内の米軍が駐留する基地にイランが攻撃を仕掛けたことが伝わり、相場は一気にリスクオフに傾いた。しかし、しばらく時間が経過してミサイル攻撃による犠牲者は出ていないと報じられ、イラン外相が報復停止を示唆するコメントを出すなど、イラン側も“本気モード”ではないことをマーケットも感じ取り、その後は例のごとく糸を巻き戻すようにアルゴリズムで先物が買い戻され日経平均も下げ渋った。波乱展開には違いないが、投資家サイドもやや目が慣れてきたフシがある。

 大発会から3日間は決して合理的とはいえない動きで、全体相場は激しく上下動を繰り返した。米国とイランの対立激化に伴う中東リスクが急速にその存在を大きくしているが、ひとついえるのは、大きく下に振られた局面ではすぐに行動を起こすかどうかは別として買いを狙うタイミングであるということ。今後もしばらく米国やイランの動きに神経質な地合いとなりそうだが、大勢トレンドそのものを揺るがすには至らない。もし、これまでの長期上昇トレンドが瓦解するとすれば地政学リスクではなく他の要因だ。

 アルゴリズム売買が個別企業の活力を封殺することはない。例えば直近人気化している両毛システムズ<9691>は驚くべき強さをみせている。今年に入ってから前日までの2営業日で連続ストップ高と気を吐いたが、きょうも全体相場に逆行して一時700円高と値幅制限いっぱいに買われる場面があった。さすがに買われ過ぎと考えるのが普通の感覚ながら、同社株は1999年にも大相場を経験しており、当時は年初1300円台にあった株価を9月下旬に5900円まで大化けさせた実績がある。同社株に限らず、AIIoT全盛時代を迎えてシステムやデバイスの提供などコンピューター周辺企業にかつてのITバブル時代を彷彿させるような株価変貌をみせる銘柄が目立っている。

 前日紹介のアイティメディア<2148>は全体地合い悪のなかも上値追い継続、上昇率も一時5%を超え、むしろ上げ足を加速させている状況だ。同社はネット上でBtoBの「見込み顧客」を発掘し、営業機会の創出を支援するリードジェン事業を推進し需要を捉えているが、昨今のクッキー規制の流れは気になるところ。ところが、同社の場合は「サードパーティー・クッキー」ではなく、同社サイトに訪れるユーザーのみを対象とした「ファーストパーティー・クッキー」で、規制のコンセプトからは外れており、ターゲティング広告関連市場でも相対的優位性を持っている。これが株高の原動力となっている可能性がある。きょうは一気に新高値圏に浮上する強さをみせており、押し目は引き続き注目となりそうだ。

 このほか、新しいところではEストアー<4304>も上値に期待を持たせる値運び。ASPやレンタルサーバーの提供及びウェブ店舗運営など電子商取引支援ビジネスを手掛ける。ECサイト構築を行うヤフー子会社を傘下に収めたことで、業容拡大思惑が膨らんでいる。

 また、中小病院向け電子カルテシステムを展開するCEホールディングス<4320>の500円近辺の株価は魅力的だ。 電子カルテは大病院では普及しているものの、中小病院では普及が遅れており、市場開拓余地が大きい。大株主の光通信<9435>が同社株を純投資目的で買い増し、直近5.49%まで保有株を増やしていることも見逃せない。

 日程面では、あすは12月の輸入車販売、12月の車名別新車販売、12月の都心オフィス空室率などが発表される。また、30年国債の入札も予定されている。海外では、12月の中国CPI(消費者物価指数)、12月の中国PPI(卸売物価指数)、11月のユーロ圏失業率などが注目される。このほか、米30年国債入札など。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2020年01月08日 19時04分

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