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【特集】桂畑誠治氏【強気継続?「日経平均急騰の宴」とその後】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―2万4000円近辺の目先利益確定売りをどうこなす―

 週明け16日の東京株式市場は、米中協議第1段階の合意を受けたものの、目先利益確定の動きが出て日経平均株価は上値の重い展開を強いられた。ただ、下値では押し目買いニーズが強く、前週末の600円高の後であることを考えると比較的強い地合いだったともいえる。2万4000円近辺での売りをこなし、安倍政権発足後の高値である昨年10月の高値を抜き去ることができるのか。年末年始相場の見通しについて第一線で活躍するマーケット関係者に話を聞いた。

●「不透明感残すも早晩アベノミクス高値奪回へ」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 米中貿易協議については第1段階の合意がなされ、米中対立の構図が和らいだことは大きな前進といえるが、関税引き下げが限定的だったこともあり前週末の米国株市場の反応はそれほど強くはなかった。米国市場に先立って前週末の日経平均が約600円という急騰を演じた東京市場では、これを受けて目先利益を確定する動きが上値を押さえる格好となった。

 第1段階の合意に関しては、その実現の不透明感と関税の再引き上げの懸念が残る。例えば米国は、米国産農産物の輸入額を中国が500億ドルと過去最高水準の2倍に拡大すると発表しているが中国側から数字のコメントがでていないうえ、中国の輸入額が目標を達成できなければ、米国が再び関税を引き上げる可能性もある。来年1月に両国は署名の見通しだが、今後は第1段階の合意の履行、第2段階の貿易協議に向けての思惑が交錯することになろう。関税については撤廃ではなく、非常に部分的な税率引き下げにとどまっており、中国側のメリットは限られる。東京市場では前週末に中国関連株などが買われる展開となったが、今後実際に日本から中国への輸出拡大に結び付くかどうかという点では不透明な部分も多い。

 ただ、差し当たって15日の関税引き上げが実施されるなどのネガティブサプライズは回避されたことで、全体相場は下値を売り込む理由も見当たらない。アベノミクス相場の頂点である2018年10月2日につけた日経平均2万4448円(ザラ場ベース)奪回が早晩実現する可能性は高そうだ。

 先の日銀短観でも明らかとなったように日本国内の需要自体は弱くなっており、消費増税後の消費はポイント還元で支えられているとはいえ、自動車や百貨店の落ち込みが大きい。一方、世界のPMIは底入れ感が明示され、海外要因からはポジティブな局面にある。物色対象としては半導体製造装置関連などハイテクセクター中心に上値余地が期待できるとみている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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