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【特集】原油追加減産の行方は?OPEC総会に向けサウジは米中通商協議を注視 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 石油輸出国機構(OPEC)総会が約3週間後に迫っている。OPECのバルキンド事務局長は全ての選択肢を排除しないと述べているものの、市場参加者の思惑とは裏腹に追加減産協議は進んでいない。ロシアのノバク・エネルギー相は、60ドル超で推移する原油相場は安定しているとの認識を示している。ロシアの石油大手ルクオイルのアレクペロフ最高経営責任者(CEO)は、減産期間の延長を期待すると述べた。

●態度を明らかにしていないサウジ

 ロシアが減産に否定的なのはこれまで通りである。現在は日量120万バレルの減産を来年3月まで行うことで合意しているものの、この合意に至る前もロシアは減産に消極的だった。原油高誘導に積極的なサウジとそうでないロシアとで、両国が舵取り役であるOPECプラスのバランスが取れているといえるが、減産強化が望ましいのかどうかサウジは態度を表明していない。

 アブドルアジズ王子がサウジアラビアの新たなエネルギー相に就任した後、サウジアラムコの上場に関する発言を除いてほとんど報道されておらず、どのようにOPECプラスの舵取りを行うのか不明である。先月、ナイジェリアのティミプレ・シルバ石油担当国務相がサウジは追加減産の準備は出来ていると述べているものの、アブドルアジズ・エネルギー相は今のところ追加減産について発言していない。前任のファリハ・エネルギー相の方針を引き継ぐのであれば、現状の価格水準は不十分だと思われるが、発言が伝わらないため判断のしようがない。

●今は待たなければならない

 OPECプラスの生産水準を巡って、ロシアとサウジは水面下で協議を行っているのだろう。第1弾の米中通商合意が成立しそうであることから、産油国もこの動向を見守っている可能性が高い。自らの行動で原油高を実現せず、米国と中国の協議が前向きな方向に前進し、景気見通しの改善によって原油価格が上振れすることが望ましい。来月のOPEC総会を前に手がかりをあまり与えず、相場を刺激しないことが重要である。

 ただ、米中通商協議の行方がどうであれ、世界経済は減速し、石油需要は鈍化する方向にある。今月あるいは来月に米中通商協議が第1段階の正式合意に至り、来年以降の景気見通しが多少なりとも改善するにしても、協調減産は来年3月以降も続けなければならないだろう。減速する世界経済の再加速を見通すのは楽観的である。現在の協調減産の規模が十分か不十分か、産油国は協議する必要があり、OPEC総会が近づけば産油国が目指す方向が伝わりそうだが、今は待たなければならない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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