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【特集】IT融合で飛躍する生産性、白熱化する「不動産テック」関連に照準 <株探トップ特集>

不動産テックを導入する動きが国内で加速している。効率化と生産性向上のカギを握る新ビジネスとして投資家の注目が高まるなか、関連有望株の動向を探った。

―スタートアップへの投資熱高まり、マーケットでも新たなる物色テーマに浮上気配―

 不動産業界で今、「不動産テック」への関心が高まっている。不動産テックとは、「不動産×テクノロジー」のことで、ほかに「Prop Tech(プロップテック)」「Real Estate Tech(リアルエステートテック)」などと呼ばれることもある。単にインターネットやITツールを利用するだけではなく、不動産管理や仲介、ローン、保証、マッチング、不動産情報、価格・査定などの不動産にまつわる現場にさまざまなテクノロジーを活用して生産性を改善する動きのことで、海外企業やベンチャーを中心に新たなビジネスとして業界を席巻しつつある。上場企業にも関連銘柄が増えており、今後も更に存在感を増しそうだ。

●不動産業界は小規模事業者が乱立

 国内で不動産テックを巡る動きが加速している背景には、不動産業界のIT化が遅れていたことが挙げられる。不動産流通推進センターの「2019不動産業統計集」によると、2016年時点の不動産会社の法人数は32万1361社を数え、年々増加傾向にある。ただ、その95%以上は従業員数が10人未満しかおらず、小規模の事業者が乱立している状態にある。

 こうした小規模の企業の多くでは、ITリテラシーの不足や生産性の低さが問題となっている。そのなかで顧客や物件を確保しなければならず、また人手不足もあることから、効率化と生産性向上のために、不動産テックの導入が必要となっており、これが関心を高めることにつながっている。

●スタートアップへの投資が拡大

 一方、不動産テックで先行する海外では、不動産テックベンチャーやスタートアップへの投資熱が高まっている。ソフトバンクグループ <9984> 傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンドは、価格査定のアルゴリズムを駆使して不動産売買のプラットフォームを提供する米オープンドア社や、不動産取引に関わるさまざまな手続きをオンラインで行えるようにした米コンパス社、コワーキングスペースを展開する米ウィーワーク社など複数の不動産テック企業に大型の出資を行っている。また、三井不動産 <8801> は300億円規模のスタートアップ投資ファンドの運営を行っており、商業用不動産向けローンのデータベースを運営するイスラエルのクレディフィ社やスペースシェアリングサイトを運営する米ピアスペース社などに出資する。

 同様の投資熱は国内でも広がっており、三井不は前述のファンドでインテリアのシミュレーションサイト「RoomCo(ルムコ)」を運営するリビングスタイル(東京都新宿区)などに出資。三菱地所 <8802> は今年2月、国内外のスタートアップ企業やベンチャーキャピタルなどへの出資実績が累計で100億円に到達したと発表したが、不動産に特化したクラウドファンディングを手掛けるクラウドリアルティ(東京都千代田区)や物件確認の電話を自動音声で応答する「スマート物確」、内覧の管理を行う「スマート内覧」などを展開するライナフ(東京都千代田)などへ出資している。不動産テックへの投資は全世界で年約80%ペースで拡大しているとの見方もあり、今後もこうした活発な投資が話題になりそうだ。

●不動産テックの裾野は拡大中

 国内外で関心が高まる不動産テックだが、不動産テック協会では不動産テック企業を「ローン・保証」「クラウドファンディング」「仲介業務支援」「管理業務支援」「価格可視化・査定」「物件情報・メディア」「マッチング」「VR・AR」「IoT」「リフォームリノベーション」「スペースシェアリング」に分類している。

 分類されるサービスは、同協会によって定期的に更新されているが、徐々に拡大している。このことから、小規模事業所で業務の効率化が進む一方、大手不動産会社では新しい不動産ビジネスが創出されていることが見て取れ、不動産テックの裾野は更に広がるとみられる。そのなかでも、分野ごとに注目銘柄を紹介したい。

●マッチングや仲介業務支援の不動産テック

 上場企業にも不動産テック銘柄は増えているが、なかでも注目されるのは、GA technologies <3491> [東証M]だ。

 同社は、中古不動産と購入希望者を人工知能(AI)を活用してマッチングする流通プラットフォーム「RENOSY(リノシー)」が主力。また子会社イタンジでは、物件確認から内覧予約までを自動化し、更に申し込みや契約までをオンライン上で行う仕組みを構築している。9月11日に発表した第3四半期累計(18年11月-19年7月)連結決算で営業利益が4億5300万円となり、通期計画に対する進捗率は43%と低いが、会社側によると減益は好調な業績を踏まえての投資計画を前倒しで進めていることが要因としている。第4四半期(8-10月)は回収フェーズに入ることから、通期予想の営業利益10億4100万円(日本基準、IFRS12億100万円)は達成可能としている。

●クラウドファンディングの不動産テック

 ロードスターキャピタル <3482> [東証M]は、不動産投資やアセットマネジメントと並んで、少額資金で始められる不動産投資クラウドファンディング事業「OwnersBook」や、AIによる不動産査定を行う「AI-Checker」などを展開している。8月5日に発表した第2四半期累計(1-6月)連結決算では、クラウドファンディング事業で大型案件の組成や大型案件を募集できるだけの会員層の拡大などがあり、営業利益は19億8700万円(前年同期比31%増)に拡大。通期計画に対する進捗率は63%に達している。

 このほか、不動産投資型クラウドファンディング「FIT FUNDING(フィットファンディング)」事業を行うフィット <1436> [東証M]、不動産特定共同事業特化型クラウドファンディング「Jointoα(ジョイントアルファ)」事業を行う穴吹興産 <8928> などにも注目だ。

●管理業務支援の不動産テック

 いい生活 <3796> [東証2]は、物件及び取引データを一元管理するクラウドサービス「ESいい物件One」や入居者と管理会社のコミュニケーションをサポートするアプリ「pocketpost(ポケットポスト)」などを展開している。足もとではクラウドサービス事業が順調に拡大し、8月1日に発表した第1四半期(4-6月)連結決算では営業損益1300万円の赤字(前年同期2100万円の赤字)と赤字幅が縮小。通期では同4000万円の黒字(前期比3.1倍)が見込まれている。

 また、プロパティデータバンク <4389> [東証M]は、不動産の運用管理に関するクラウドサービス「@プロパティ」を展開している。7月30日に発表した第1四半期(4-6月)単独決算で営業利益は800万円(前年同期比85%減)と大幅減益だったが、会社側によると外注加工費の増加や積極的な採用活動に伴うものが要因で見込み通りであるとしており、通期では同3億1100万円(同3%増)を見込む。

 これらのほかにも、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(ホームズ)」を運営するLIFULL <2120> 、固定金利住宅ローン「フラット35」の販売首位のアルヒ <7198> なども不動産テックの有力銘柄として注目度が高いようだ。

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