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【特集】Jオイル Research Memo(2):「おいしさデザイン企業」を目指し、高付加価値品を創出する

Jオイル <日足> 「株探」多機能チャートより

■事業概要

1. 会社概要
J-オイルミルズ<2613>は、ホーネンコーポレーション、味の素製油、吉原製油の3社が統合して設立された油脂メーカー大手である。油脂事業(油脂・ミール)を基盤に、マーガリンや粉末油脂といった油脂加工品事業、スターチやケミカルといった食品・ファイン事業などを展開している。味の素<2802>グループ企業の1社だが、3社がそれぞれに培ってきた長い歴史と様々な商品群に裏打ちされたノウハウ・技術は、大きな強みとなっている。現在、そうしたノウハウ・技術をもとに第五期中期経営計画を策定、成長戦略と構造改革を推進しているところである。生産や物流などの効率化を進める一方、将来にわたって「おいしさをデザインする」ことで新たな高付加価値品を創出し、強みの業務用を磨き、家庭用を強化し、遅れていた海外事業の展開も図っていく考えである。


独自技術を生かした商品を展開
2. 事業内容
同社は国内で搾油し、国内で油脂・油糧製品を製造販売することを主力事業としている。油脂汎用品の需要は安定しているが、大きく伸びず横ばいを続けている。これは、少子高齢化や女性の社会進出などによる需要構造の変化が理由と考えられる。一方、原料を輸入に依存しているため、大豆相場や菜種相場、為替相場といった海外市況の変動が収益に影響を与える構造になっている。そうした環境のなかでも同社は、統合した3社がそれぞれに培ってきたノウハウや技術をもとに、「あぶら」の持つ価値や可能性を広げ、調理、健康、調味といった様々な機能の高付加価値化を徹底的に追求することで、収益性と成長性の向上を目指している。2020年3月期第1四半期のセグメント別売上高構成比は、油脂事業85%、油脂加工品事業7%、食品・ファイン事業7%、その他1%となっている※。

※用途別には、家庭用(植物油とマーガリン)、業務用(植物油とタンパク質、スターチ、その他)、油糧(ミール)の3つに分けることができる。


油脂事業では、サラダ油やキャノーラ油など様々な用途に使われるベーシックオイルから、調理や調味、健康といった様々な領域で使うことのできる高付加価値品まで幅広く品ぞろえしている。消費者や顧客企業に対し、安心・安全を基本に、「油を良い状態で使っていただく」「油で美味しく」「油で健康に」という3つの軸で貢献することを目指していることが、品ぞろえの幅になって現れていると言える。「AJINOMOTO」ブランドで有名な家庭用油脂では、国内オリーブオイル市場のリーディングブランド「AJINOMOTO(R)オリーブオイル」や栄養機能食品「AJINOMOTO(R)さらさら(R)キャノーラ油健康プラス」、特定保健用食品「AJINOMOTO(R)健康サララ(R)」など、消費者のおいしい料理づくりと健康づくりに役立つ様々な商品を取りそろえている。市場シェア40%を誇る業務用油脂では、長持ち効果がある「長調得徳(R)」シリーズを独自技術により酸化を抑制してリニューアルしているほか、肉メニューに香ばしさと旨味を増強した「グリルオイル」やミルクのような贅沢な香りとコクのある「バターフレーバーオイル」など「J-OILPRO -プロのための調味油-」シリーズのラインナップ拡充も進めている。油糧では、良質なタンパク質を多く含む、大豆や菜種などの原料を搾油処理した後の搾り粕(ミール)を、配合飼料の原料などに活用している。なお、業務用油脂の売上高構成比が54%であることから、業務用に強いという同社の特徴がうかがえる。

油脂加工品事業では、マーガリンやショートニング、粉末の油脂などを取り扱っている。なかでも「ラーマ(R)」ブランドの家庭用マーガリンは長く好評を得ている。業務用マーガリンでは、製菓・製パン分野における製造現場の課題解決に向けた提案を強化しており、独自のフレーバー技術でバター風味を実現した「マイスター」やバターコンパウンドマーガリン「グランマスター(R)」などシリーズで商品を展開している。液体の油脂になく固体や粉体の油脂にある様々な機能を生かした商品によって、顧客の課題に対するソリューションを提案している。食品・ファイン事業は、原料から出る粕や微量成分の持つ効果に着目した事業である。スターチはトウモロコシやタピオカ由来のでん粉をベースに独自の高機能加工を施した加工でん粉で、ジューシー感など食感改良材として様々な加工食品に使われている。また、ビタミンK2やイソフラボンといった食品素材のほか、住宅建材や家具などに使用される、合成樹脂接着剤・塗料といった商品も開発・販売している。


3社の強みを統合してシナジーを発揮
3. 強みの源泉
同社の強みの源泉は、15年前に統合した3社が三様に有していた強みとそのシナジーにある。もともと味の素製油は油脂のおいしさの研究や「AJINOMOTO」ブランドによる家庭用市場での高い認知度に強みがあり、ホーネンコーポレーションは原料を使い切る取り組みや業務用市場での強固な営業基盤、吉原製油は油種のバラエティや顧客に対する課題解決力に強みがあった。こうした三者三様の強みを掛け算することで、3社の販路を合わせた広範なカバー範囲と対応可能な商品カテゴリーの多さ、味の素グループの営業力、業務用商品の展開力、業務用ノウハウの家庭用への展開力、必要とあらば他社の素材や商品を利用するフレキシビリティ??などのシナジーが生じ、高付加価値な商品を創出することができるのである。しかし、統合後しばらくは効率化に経営の主眼が置かれていたため、現在、改めて三者三様の強みを掛け合わせ、相乗的な強みを発揮しようとしているところである。その結果、商品の高付加価値化のみならず、味や作業など料理や調理場におけるソリューション能力をも高めることができるようになった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《YM》

 提供:フィスコ

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