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【特集】すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 とりでみなみさんの場合-第1回

残業が多くて基本は「ほったらかし」投資、それでも200万円から1.5億円に拡大した技
登場する銘柄
ジャパンエレベーターサービスホールディングス<6544>、弁護士ドットコム<6027>、日本動物高度医療センター<6039>
筆者:福島由恵
金融機関出身のフリーライター。株式、投資信託、不動産投資などを中心とした資産形成に関連する記事執筆を主に担当。相続、税金、ライフプラン関連も数多く執筆。

とりでみなみとりでみなみさん(ハンドルネーム・40代・男性)のプロフィール:
普段は残業&休日出勤に追われる多忙なサラリーマン。使用中の証券口座のパスワードを忘れること5回以上という、自称「超長期投資家」。投資に割く時間の最小化を図りながら、最大の投資効果が出るよう目指す。長期で伸びそうな産業に着目し、10~20年で株価が上昇する銘柄をじっくり探す。投資歴は17年。200万円を元手に資金を追加しながら、「50歳で資産3億円」を目指している。現在の運用資産は計画より1年遅れだが約1.5億円に。相場が荒れようがその場に居続けることが大切と、足元のような不安定な状況になっても継続投資の姿勢は揺るがない。

 今回登場のとりでみなみさん(ハンドルネーム、以下とりでさん)は、IT企業に勤務するサラリーマン投資家。毎日、仕事に追われ、今年のお盆には12日連続で出勤したように、平日はもちろん、土日や休日も仕事に忙殺されることも多い。
 超多忙で投資に時間を割く余裕があまりない中でも、とりでさんは20歳代後半から投資を続け、200万円で始めた資金を40歳代前半の現時点で、追加資金の投入もあるが約70倍の約1.5億円に膨らますことに成功した。
 その極意は一度選んだら、原則ほったらかしていても不安がなく、長期でリターンを狙うというもの。途中で欲をかいたために約7000万円の含み益のほとんどを取り逃すという大失敗をやらかしてしまったものの、「50歳で資産3億円達成」という目標に、1年遅れのペースで前進している。
 働き方改革で時短を促す職場は増えているが、人手不足で仕事の負荷はかえって高まり、投資に時間を割く余裕も気力もないというサラリーマン投資家さんもいるだろう。そんな人にとって、とりでさんの手法は限られた時間の中でお宝銘柄を発掘し、育てていくための打開策となる可能性がある。
 これから、とりでさんが実践してきた忙しくても投資を続けていく秘訣を、4回にわたって紹介していく。初回は長期ほったらかし状態でリターンを狙う戦略の中身と、その戦略を基に足元で注目する銘柄を選んだポイントに触れる。
使う暇がなく20歳台後半で預金額は1800万円に
 まず戦略の中身に入る前に、これまでの投資人生を簡単に振り返っていく。とりでさんが日本株投資を始めたのは、今から17年前の03年頃。先に紹介したように最初に投入した資金は200万円だった。実はその200万円は、1800万円まで積み上がっていた銀行預金の一部。20代後半にしてこれだけの現金を持っていたのは、「とにかく仕事が忙しくて、使う暇がなかったから」(とりでさん)。
 「ボーナスは一切使わず、給与だけでやりくりする」と無駄遣いをしないように心掛けていたこともあるが、ボーナスどころから給与さえもほとんど手を付けられない社会人生活が続いていた。投資を始める転機になったのが、知り合いが日本株に投資していることを知ったこと。
 話を聞くと、銀行預金の金利は0%台に落ち込む中、超優良企業のトヨタ自動車 <7203> の配当利回りは3~4%あることを知る。金利がほとんどなかった時代にこんな高利回り商品もあるのかと驚き、自分もやってみようと証券口座を開いた。詳しくは別の回の記事で紹介するが、投資を始めてから3つの転機が訪れ、それが積み重ねって「ほったらし&長期リターン獲得」の投資スタイルを確立した。
アキュセラ株で7000万円の含み益がパーに
 その戦略がはまり、リーマン・ショックなどの大暴落の時期も乗り越え、15年には資産が9000万円と目標にしてきた“億り人”にあと一歩のところまで近づく。そこで早く億り人になりたいと、短期で株価の2倍化を狙えそうなバイオベンチャーのアキュセラ・インク(当時、現在は同社子会社が窪田製薬ホールディングス <4596>として上場)に1000万円ほど投じた。
 アキュセラ株は16年春に急騰、その際にとりでさんのアキュセラの含み益は7000万円以上に拡大。予想以上のリターンを得たのに、とりでさんはまだ上がるだろうとホールドを続ける最中、アキュセラは新薬開発が頓挫する事態に。それをきっかけに同社株は連続ストップ安となり、とりでさんは利益のほとんどが吹っ飛び、億り人の座を逃してしまった。
 長期でリターンを狙ってきたのに、手っ取り早く利益をさらおうとしてさらい損ねるという痛い経験から教訓を得て、とりでさんは再び本来の投資スタイルに戻す。それによって翌17年には念願の資産1億円超えを達成、足元ではさらに利益を積み重ねている。
 ではとりでさんを億り人に導いた「ほったらかしで長期リターンを狙う」戦略とはどのようなものか。次に見ていこう。
取手みなみさんの資産拡大のあゆみ
分身を就職させるつもりで投資先を選ぶ
 とりでさんの投資戦略を、一言で表せば割安成長株だ。銘柄選びでポイントにするのが、その企業が手掛けている事業は成長市場なのか。長期保有を考える上では、「銘柄より前に市場の見極めが何よりも重要」と考えている。
 「市場全体が成長していれば、言い方は悪いがへっぽこ経営でも、業績は伸びる可能性はある。逆に縮小市場では、よほどの手腕を持っている名経営者でも長期で業績成長を続けるハードルは非常に高い」(とりでさん)
 市場の成長余地を見極めてから、その市場の中で競争優位を保てそうな銘柄を選んでいく。競合に比べて優れているのは、事業モデルなのか、商品なのか、技術力なのか、経営力なのかはケース・バイ・ケースになる。
 とりでさんの銘柄選びで最も印象的な考えが、「自分の分身を就職させたいと思えるような会社」かどうか。就職(銘柄保有)後、安心して働いてもらうには「人々がお金に糸目を付けずに欲しい、手に入れたい」と思えるような商品を提供しているのかを重視する。
 銘柄の前に有望市場なのかを分析し、自分の分身を就職させたいと思う銘柄に投資する手法は以前から変わっていないが、具体的な銘柄選びの段階で重視する要素は、初期の頃と現在とでは異なっている。経済や社会の構造、相場環境そして自身の資産規模が変わっている中で「投資手法もバージョンアップは欠かせない」というのがとりでさんの信念だ。
 投資初期の頃に好んだのは、現金資産が潤沢な割安銘柄だった。長期で保有するからには、資金繰りが悪化して潰れる心配が少ない銘柄を好んだ。また製造業の銘柄も多かった。しかし、今は財務の安定性より、世の中を変革していく可能性がある市場&事業なのかに着目し、製造業よりもサービス業に期待値を高めている。揺るぎない高い成長力があると判断すれば、たとえPER(株価収益率)などの指標が割高な水準になっても、保有を続けることを基本にしている。
 大雑把に言えば、初期は割安成長株の「割安」面、現在は「成長」面へのこだわりを強くしていることになる。

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