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【市況】2019年後半は円高トレンドか【フィスコ・コラム】


早いもので、2019年も後半戦に突入しました。年前半は米中貿易戦争に振り回され、世界経済に影響が出始めました。そうしたなか、円はドルや他の主要通貨の値動きに挟まれ比較的底堅く推移してきましたが、各国の利下げで目先はどうなるでしょうか。


毎年8月にアメリカのワイオミング州ジャクソンホールで開催される金融市場関係者の会合で、今年のテーマは各国中銀が利下げの正当性を主張する場になるでしょう。豪準備銀やNZ準備銀、「予備軍」の米連邦準備制度理事会(FRB)や英中銀など、利下げの打ち上げ大会が見込まれます。2年前の2017年には競うように金利正常化に乗り出していたのが、今となっては遠い夏の思い出のようです。


7月5日に発表された米雇用統計で、非農業部門雇用者数が前月の大幅減による反動で予想を大きく上回ると、ドルは米10年債利回りの急回復を手がかりに水準を切り上げました。しかし、大幅利下げは回避されるとの市場の期待は裏切られ、長期金利は失速に向かいます。10日のパウエルFRB議長の議会証言は、想定以上に国内経済の下振れを懸念し、市場に利下げを織り込ませる内容でした。


ファンダメンタルズだけではありません。トランプ米大統領は6月末の習近平・中国国家主席との首脳会談で貿易交渉継続を決めました。が、その直後にトランプ氏は中国が為替操作で通貨安に誘導し有利な政策を進めていると非難。返す刀でFRBに対し「理解しているなら利下げするはず」と脅しのような見解を示しました。FRBが政治圧力に屈したとの批判はともかく、現時点で踏み込んだ利下げは避けられないでしょう。


欧州中銀(ECB)は当局者の間で意見が分かれるものの、ドイツをはじめ主要な経済指標から域内経済の回復の遅れは鮮明で、やはり一段の緩和は必定とみます。興味深いのは、10月末に任期切れを迎えるドラギ総裁の後任候補に、フランスの政治家であるラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事の名前が挙げられている点です。中央銀行は金融政策の理論だけでは不十分で、力による調整が必要というメッセージかもしれません。


主要国の中銀が利下げに舵を切れば、金利差重視の取引で円に上昇圧力がかかりやすくなりますが、日銀はどのような対応をとるのでしょうか。黒田総裁は直近の支店長会議で景気の先行きについて「緩やかながら拡大を続ける」との見方を示しています。しかし、今月行われる参院選で与党勝利により予定通り今年10月に消費税率が引き上げられれば、景気の鈍化は回避できないとみられます。


日銀は2020年春ごろまで現行の緩和的な金融政策を維持する見通しですが、マイナス金利の深掘りにも限界はあり、円高を食い止める政策手段が狭められています。アメリカの利下げで強気相場が続けば日本株も上昇基調を維持できるかもしれませんが、最近は日本株高でも円安は限定的という場面が目立ちます。「株高・円安」を維持できるとの希望的観測には無理があると言えそうです。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

 提供:フィスコ

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