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【特集】ホルムズ海峡波高し、イラン・リスク台頭で「防衛関連株」急浮上 <株探トップ特集>

イランを中心とする地政学リスクが高まるなか原油価格が急騰しており、株式市場でもその影響が懸念されている。一方、防衛関連に位置付けられる銘柄がにわかに動き始めた。

―海上封鎖ならWTI原油価格は100ドル突破も、OPEC総会に世界の視線―

 株式市場でイランを中心とする地政学リスクが高まっている。今月に入り米国とイランの緊張が強まり、原油相場の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格が急伸。市場には、両国による軍事衝突の可能性を懸念する声が出ており、イラン情勢がリスク要因に急浮上した。また、7月には石油輸出国機構(OPEC)総会も開催される。こうしたなか、今夏に向けキナ臭さが増すイラン情勢と原油価格はどう動くのか。イランリスクの行方を探った。

 ■米国とイランは一触即発状態、原油価格も急反発基調に

 足もとでWTI価格が反発基調を強めている。6月初旬に1バレル=51ドル前後の水準にあった原油価格は24日には57.90ドルと10%強上昇した。この背景にあるのが、イラン情勢を巡る緊張感の高まりだ。今月13日に中東のホルムズ海峡近くのオマーン湾で日本などの石油タンカー2隻が何者かにより攻撃された。この石油タンカー攻撃に関して、米国は「イランに責任がある」と非難した。また、20日にはイランが米国の無人偵察機を撃墜した。このイランによる米国の無人偵察機撃墜に関しては、トランプ米大統領はイラン攻撃を一度承認した後に撤回したことが判明。両国は一触即発の状態にあることが表面化し、市場には緊張が走った。

 米国と対立するイランは、かねてからホルムズ海峡閉鎖もちらつかせてきた。このため、米国とイランが軍事衝突しホルムズ海峡が封鎖されれば「WIT価格は100ドル突破へ急騰する可能性も否定できない」(アナリスト)との懸念が強い。万が一の場合、原油価格は2倍に跳ね上がる可能性があるというわけだ。

 ■先行きに強弱感は対立、軍事衝突の懸念はくすぶる

 市場関係者が注視していたのが、トランプ米大統領が24日発表した「イランに対する大規模な追加制裁」の内容だ。実際に、同大統領はイランの最高指導者ハメネイ師や軍高官8人に制裁を科すことを明らかにした。ハメネイ師と同師の組織は金融資産にアクセスできなくなった。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「追加制裁で懸念されていたのは、軍事オプションなどが示されるようなことだったが、それはなかった。制裁内容は厳しいものではあるが、一気に状況が悪化するものでもない。当面、米国とイランのにらみ合いが続くのではないか」と予想し、緊張はいったん緩和する可能性をみている。

 一方、「当面、状況を確かめることとなるだろう。しかし、米国が圧力をかけることで、イランが耐え切れず暴発しそれに対して米国はミサイル攻撃をかけるようなことは起こり得るシナリオだ」と上田ハーローの山内俊哉執行役員は警戒感を示す。米トランプ政権は死傷者が出る地上軍の派遣のような軍事行動は避けたい意向だが、イランが強力な抵抗姿勢を示した場合、どうなるか。この点が18年に行われた米国のシリア空爆とは大きく異なる点とみられている。

 トランプ米大統領が、イラクに攻撃的な姿勢を示すのは、来年の大統領選を意識している面もあるとの見方も少なくない。同大統領の支持基盤であるキリスト教福音派は、イスラエルを支持しており、そのイスラエルと敵対するイランを叩くのは有効な選挙対策となるとも見られている。

 ■金価格は6年ぶり高値圏に上昇、日米防衛関連株も動意づく

 そんななか、来月1日にはOPEC定例総会が開かれ、2日にはロシアなど非OPEC加盟国を含む「OPECプラスワン」が開催される。今回のOPEC総会では、「世界景気に減速懸念があるなか、原油価格の維持に向け協調減産は維持されるだろう」(芥田氏)との見方が出ている。同氏は、世界の景気減速懸念が強い一方、米国での原油需要は底堅いとみており、「当面WTI価格は50ドル後半での推移」を予想している。ただ、これはイラン情勢が現状を維持することが前提だ。

 気になるのは、イラン情勢にも絡み金価格防衛関連銘柄が強含みで推移していることだ。金価格は1トロイオンス=1400ドル台と約6年ぶりの高値圏に上昇している。米国の金利低下を先取りして、ドルと逆相関関係の強い金が買われている面は大きいが、イラク情勢の緊迫化も上昇の要因となっている。

 また、防衛関連株も動意づいてきている。米国ではロッキード・マーチンが年初来高値圏にあるほか、日本では石川製作所 <6208> や豊和工業 <6203> 、三菱重工業 <7011> などが値を上げている。トランプ米大統領が「日米安保条約破棄の考えを側近に示していた」との報道の影響もあるが、同大統領は中国とともに日本を名指ししホルムズ海峡のタンカー防衛は自国で行うべきだ、と24日にツイッターへ投稿した。ホルムズ海峡で軍事衝突があった場合、日本は集団的自衛権を行使することを余儀なくされ、軍事的に関与することになる可能性を懸念する声も市場には出ている。今夏に向けイラン情勢はどう動くのか。その動向を市場関係者は固唾を飲んで見守っている。

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