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【特集】西に吹く新時代の風、関西復権で上昇気流に乗る「ワケあり銘柄」総点検 <株探トップ特集>

2020年の東京五輪後の経済低迷を警戒する声が強い。しかし、関西がその懸念を払拭する役割を担いそうだ。今年6月のG20に始まり、21年のWMG、満を持しての大阪万博と、ビッグイベントを控え浮かびあがる有望銘柄群を追う。

―大阪万博だけじゃない関西が注目されるこれだけの理由、そして上がるのはこの株―

 新しい元号が「令和」に決まり、5月1日には皇太子さまが新天皇に即位、日本は新しい時代を迎えることになる。令和時代に期待する声は大きいが、経済に関しては東京五輪後の景気低迷を懸念する向きも少なくない。ただ、今後世界的なビッグイベントが相次ぐ関西の存在が“日本を救う”との観測もある。まずは今年6月の20ヵ国・地域首脳会合(G20サミット)に始まり、2021年には「ワールドマスターズゲームズ2021関西」、そして25年には満を持して 大阪万博を迎えることになる。言われて久しい「関西復権」だが、こうしたビッグイベント開催を背景にいよいよ現実味を帯びることになりそうだ。勢いづく有望関西銘柄の動向を追った。

●温故知新で日本経済の行方に光明

 20年の東京五輪開催を境に日本は不況に陥る……そんな不安が、列島を覆っている。景気後退局面に入ったことをうかがわせる、さまざまな指標も散見されるようになってきた。五輪終了後の開催国における経済低迷は、経験則から「むしろ当たり前」といった諦めに似たムードも漂っている。じわり“五輪後悲観論”が広がるなか、振り返れば1964年の東京五輪のケースでは、翌65年にかけてその反動が出たものの、同年11月には「いざなぎ景気」に突入し70年の大阪万博を迎えることになった……という事実があったことを忘れてはならない。景気の「気」は気持ちの「気」、温故知新で日本経済の行方に光明を見いだしたいところだ。

●G20サミットで東洋テック、シップヘルスケア

 令和元年となる今年、関西復権へのスタートとなるビッグイベントが、6月28~29日に大阪で開催されるG20サミット。いまさらながらだが、世界19ヵ国と欧州連合(EU)の首脳が参加して毎年開催される国際会議。また招待国の首脳、そしてさまざまな国際機関の代表も参加することに加え、首脳会合が行われる大阪以外でも日本各地で関係閣僚会議が開催され、その規模は想像以上に大きい。複雑に絡みあう国際情勢を背景に、テロ防止など各国関係者の安全確保は、初の議長国となる日本にとって国の威信をかけた最重要課題で、こうしたなか株式市場では「警備保障関連株」に注目が集まる可能性が高い。まさに、絶対に失敗が許されないミッションなのである。ある準大手証券のストラテジストも「G20サミットでは関西圏の存在が改めて意識されることになりそうで、差し当たっては警備保障関連銘柄に物色の矛先が向くのではないか」という。

 6月は日本列島がサミット一色となりそうで、当然のことながらALSOK <2331> 、セコム <9735> など大手をはじめ警備保障各社は、“繁忙期”を迎えることになる。このなか、関西地盤の警備保障関連株は限られる。そのひとつが東洋テック <9686> [東証2]で、同社では「さまざまなイベントについては準備を行っているが、具体的な受注については警備上の問題もありお話しすることはできない」(経営統括部)という。G20をはじめ関西でビッグイベントが続くことについては「好影響を与えると考える」としたうえで、「イベントというのは一時的なものであり、そこで人手不足が発生する」と問題点も語り、更にロボットなど機械警備が進展する契機になりそうだと指摘する。業績も好調で、19年3月期第3四半期累計の連結経常利益は前年同期比29.1%増の8億7400万円に伸び、通期計画の11億円に対する進捗率は79.5%に達している。株価は1100円台半ばでもみ合う。商い薄が難点だが、G20サミットが接近するなか思惑買いを誘う可能性もある。同社は、関西キー局で3月から新コマーシャルを開始しており、ブランド力の向上を図る方針だ。

 警備などを手掛ける大阪地盤の日本パナユーズを傘下に擁するのが、シップヘルスケアホールディングス <3360> 。同社は、医療・保健・福祉・介護の4分野で展開する医療介護の大手だが、警備保障関連の一角としても目を配っておきたい。株価は大発会に3795円まで売られ大幅安となったが、ここを基点に順調に下値を切り上げ、新元号「令和」発表で沸く4月1日に4590円まで買われ年初来高値を更新。ここ数日は調整を入れ4400円近辺で推移している。

●ワールドマスターズゲームズでミズノ

 20年の東京五輪を経て、関西では21年に「ワールドマスターズゲームズ2021関西」を迎えることになる。全国的にはまだ知名度は低いが、想像以上に規模・経済波及効果ともに大きい。ワールドマスターズゲームズ(WMG)は、4年に一度開催され、おおむね30歳以上のスポーツ愛好者であれば誰もが参加できる。第10回となる関西大会はアジアで初めての開催となる。参加基準は年齢のみ、予選なしで複数種目も登録可、元プロ・元アマ選手問わず出場可能という生涯スポーツの国際総合競技大会。競技参加者は約5万人を目標としており、過去最大規模の大会を目指す。組織委員会によると経済波及効果は1461億円と試算している。

 このWMG関連では、スポーツメーカーとしては唯一のメジャーパートナー契約を結んでいるミズノ <8022> にやはり関心が集まりそうだ。同社の業績はパッとしない。2月8日に発表した19年3月期第3四半期累計の連結経常利益は前年同期比21.1%減の41億3600万円となった。通期の同利益を従来予想の90億円から70億円に下方修正、一転して同13.6%減益見通しとなった。株価は8日の決算を受けて3連休明けの12日に急落し下ヒゲで2311円まで売られたが、ここを底に値を戻し現在は2600円を挟みもみ合っている。今後、WMGの知名度向上により株価再評価機運を高めるかもしれない。また、スポーツ用品企業ではWMGとパートナー契約を結ぶアシックス <7936> にも目を配っておきたい。

●京阪HDは万博、カジノ、WMGと切り口多彩

 WMGは、更に多くの訪日客を関西に誘うことになる。現在でも関西地域は、訪日客にとって京都などの古都を擁し人気の観光地だが、WMGでアジアにとどまらない世界各地からの新たな訪日客需要を呼び込むことになる。更に、25年には半年間にも及ぶ大阪万博も控えるだけに、関西のホテル業界にとっては東京の“五輪後懸念”も「大きな不安はない」(ホテル業界関係者)という。また、ある関西企業の広報担当者は、相次ぐビッグイベントに「大阪や関西だけなく、日本経済にとっても東京五輪後の大きな起爆剤になると思う」と、期待感と自信をのぞかせる。

 関西地盤のホテル関連株としては、“関西の名門”といわれるロイヤルホテル <9713> [東証2]、“京都の名門”京都ホテル <9723> [東証2]があるが、特に活躍期待が高まるのが、京阪エリア地盤の私鉄でレジャーランドやホテルも展開する京阪ホールディングス <9045> だ。株価は、今年に入って4400~4700円水準のボックス相場。直近では、1日に上ヒゲで4715円を付けたあと大幅安でボックス圏を上抜けず、またしても返り討ちとなった形で、現在は4500円近辺で推移している。傘下のホテル京阪は多くのホテルを展開するが、特に夢洲(ゆめしま)に近いJR桜島線のユニバーサルシティ駅前に、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のパートナーホテルを2つ運営していることが大きなポイント。夢洲は大阪万博の会場予定地であると同時に、カジノ誘致も期待される場所だ。まさに、「ドリームアイランド夢洲関連」の一角といえ、切り口多彩で折に触れて物色の矛先が向かいそうだ。更に、同社はWMGではサポーター契約を結んでいることも妙味を増幅しそうだ。

●三精テクは地元+実績=万博感応度抜群の方程式

 G20サミットが関西復権スタートの祝砲だとすれば25年開催の「大阪万博」は、まさに“大トリ”。万博開催は、関西経済を大きく刺激することになる。前出のストラテジストも「大阪万博はやはりインパクトが大きい。鉄道や宿泊施設などインフラ整備の進展で関西地盤の大林組 <1802> をはじめとするゼネコンや、関西地盤ではないが(夢洲など港湾地域の再開発で)海洋土木の五洋建設 <1893> などに収益機会が広がりそうだ。万博後も鉄道やホテルなどを整備する以上、そのままというわけにはいかない。カジノ誘致が見込まれるのは当然の流れで、大阪はこれまでになく消費意欲の高いエリアに生まれ変わる可能性がある」と指摘する。ちなみに大林組は登記上の本社は東京だが、現在も創業の地である大阪に本店を置く。また、愛・地球博(愛知万博)では主要パビリオンなど手掛けており、万博での実績もある。

 大阪万博関連では、地元大阪企業の三精テクノロジーズ <6357> [東証2]の存在を忘れることはできない。遊戯機械、舞台機構、昇降機、特殊機構メーカーで、前回の大阪万博をはじめモントリオール万博や、つくば博、愛・地球博でも豊富な実績を持っている。株価は、大阪での万博思惑と誘致決定で急騰、11月初旬1500円水準だった株価が同月26日には2160円まで買われた。まさに、万博感応度の高さを見せつけた格好だが、現在は軟調展開のなか年初来安値圏の1500円を挟みもみ合っている。地元+実績=万博感応度抜群という方程式のなか注目度は高く、今後開催日程が具体化するなかで、再び脚光を浴びそうだ。

●上組は“シンクロ銘柄”

 大阪万博関連株とカジノ関連株は同じ夢洲が舞台ということもあり、銘柄もシンクロする。特に夢洲の用地に絡む銘柄は、まさに“シンクロ株”。なかでも夢洲の“土地持ち企業”として山九 <9065> 、上組 <9364> の注目度は高い。特に、上組の株価の強調展開は目を引く。万博関連の一角として昨年12月初旬に2600円を突破したものの、同月25日には2000円割れ寸前まで売り込まれることになった。しかし、ここを底に切り返し、再び上昇波動に乗り4月4日には2679円まで買われ12月高値を奪回、現在も年初来高値圏を舞う展開が続いている。また夢洲思惑では杉村倉庫 <9307> [東証2]、櫻島埠頭 <9353> [東証2]も関連株の一角として注視しておきたい。

●翻訳センターはカジノ誘致で恩恵?

 統合型リゾート(IR)ではカジノばかりにスポットライトが当たっているが、国際会議場の推進などMICE(マイス)施設の設置も謳われている。国際会議の増加は、当然のことながら同時通訳、翻訳などの需要が拡大することになる。大阪に本社を置き、幅広い専門分野で翻訳事業を手掛ける翻訳センター <2483> [JQ]にも活躍の舞台が広がる。グループのISSは通訳者・翻訳者の養成をはじめ、通訳サービス、国際会議などのコンベンション運営や人材派遣人材紹介に至るまでサービスを展開しており、今後大阪のみならず国際的なビッグイベントが続くなか、需要が拡大しそうな気配だ。

 大阪府知事、市長のダブル選挙では“維新コンビ”が勝利。大阪都構想にむけ拍車がかかりそうだが、異論反論が交差するなか、これもダイナミック関西を象徴するひとつといえそうだ。関西復権が日本を救う。いま、その道程は始まったばかりだ。

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