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【特集】成長産業化に向け国策の号砲 「スポーツテック関連」が奔る! <株探トップ特集>

IoTやAIなどを活用して選手のパフォーマンスを向上させる「スポーツテック」が盛り上がりを見せ始めている。日本は米国や中国に比べ市場規模が小さい分、それだけ成長余地も大きい。関連銘柄の動向に注目だ。

―2020年に11兆円市場、最先端のICT技術活用で新たな付加価値を創出―

 「FinTech(フィンテック)」という言葉が金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせて作られたように、さまざまなジャンルに最先端のICTを融合させた「○○テック」という言葉をよく耳にするようになった。

 「フィンテック」はもちろん、教育(Education)×Technologyの「EduTech(エデュテック)」やHuman Resource(HR:人的資源)×Technologyの「HRテック」などはこれまでにも取り上げてきたが、最近、「スポーツテック」(Sports×Technology)への関心が高まりつつある。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えて、スポーツ関連の一角として人気化する可能性もあり、今から関連銘柄には注目しておきたい。

●スポーツテックとは

 スポーツテックとは、IoT人工知能(AI)ビッグデータなど最先端のICT技術を活用することによって、選手のパフォーマンスの改善やファンの観戦体験の向上などを行い、スポーツの新たな付加価値や、新たなビジネスモデルを実現すること。

 例えば、スポーツの見える化ともいうべき選手の動きや力、速度、心拍数などを測り、データとして蓄積できる機器などが開発されているが、これもスポーツテックの一つ。また、この分野の先進国である米国では、AIによるサッカーの戦況分析やチケット購入者のニーズに合わせた新しいチケット購入サービス、VRやARなどを使った臨場感のある観戦体験・実戦練習ができるサービスなどが展開されており、スポーツ産業への投資も急成長している。

●スポーツ市場拡大策の一環

 日本では、政府が打ち出した「日本再興戦略2016」で、「第4次産業革命と有望成長市場の創出」や「環境・エネルギー制約の克服と投資拡大」などと並んで「スポーツの成長産業化」が柱の一つと位置付けられている。12年に5.5兆円だったスポーツ市場の規模を、20年までに10.9兆円、25年に15.2兆円にまで拡大させる方針だ。

 そのために同戦略では、「デジタル技術(ICT)の活用によるスポーツの新たな価値創造、健康産業などの他産業との融合によるスポーツ新市場の創出・拡大などに向けた方策を検討する」としており、スポーツテックの活用はいわば“国策”といえる。わが国のスポーツ市場規模は約50兆円といわれる米国や約25兆円といわれる中国に比べてまだ小さい分、成長余地も大きい。今年のラグビーワールドカップ、20年に東京オリンピック・パラリンピックを開催する今こそ、スポーツ産業を成長の軌道に乗せるチャンスであり、スポーツテック産業の活躍の場も増えそうだ。

●大手広告会社による取り組みに注目

 スポーツテック関連銘柄にはまだベンチャーが多い。AIを使った試合の戦況予測サービスを運営するSportsAI(東京都港区)や、ヘッドマウントディスプレーとアームセンサーを装着し、画面上で光る仮想ボールを投げ合う拡張現実(AR)スポーツ「HADO(ハドー)」を開発したmeleap(東京都港区)などはその好例だろう。

 上場企業として、スポーツテックに本格的に取り組んでいる企業はまだ少ないが、そうしたなかで注目されるのは、電通 <4324> や博報堂DYホールディングス <2433> といった広告会社の動きだ。

 電通は昨年10月、米国のベンチャーキャピタルであるスクラムベンチャーズと共同で、スポーツテック分野のスタートアップを支援する日本発のアクセラレーション・プログラム「SPORTS TECH TOKYO(スポーツテック・トウキョウ)」を日米で開催すると発表した。スポーツ分野で優れた技術や事業アイデアを持つスタートアップを世界から募り、独自のプログラムで約1年間の支援を行うというもので、日米の競技団体やプロリーグがスタートアップに助言し、実証実験の場として競技場も提供するという。日米だけでなく、イギリスやイスラエル、フィンランドなどからも応募があり、同社ではそのなかから159社を選出。更に10~20社をファイナリストとして選出する予定だ。

 一方、博報堂DYは18年11月、スポーツテクノロジーの研究・開発を行う新会社Sports Technology Lab(スポーツ・テクノロジー・ラボ)を設立した。17年12月に出資したPreferred Networks(プリファード・ネットワークス、東京都千代田区)と共同で、ディープラーニング技術を用いたスポーツアナリティクス領域のプロダクト開発を行うとしており、国内だけではなく、海外マーケットも見据えたスポーツ領域での新規ビジネス展開を目指すとしている。

●プロ野球球団もベンチャーを支援

 楽天 <4755> は、傘下のプロ野球 球団である東北楽天イーグルスが仙台市と組んで、試合やファン、グッズ販売などのデータにICTを活用し、スポーツ観戦をより楽しむためのコンテンツ創出を目指す「仙台市×楽天イーグルス エンターテックアイデアソン」を開催し、3チームのアイデアを採択した。4月以降、楽天イーグルスの主催試合や、球場施設、仙台市の各スポットでの実証実験を予定しており、新たなビジネスによる地方創生を目指すという。

 また、ディー・エヌ・エー <2432> も傘下のプロ野球球団である横浜DeNAベイスターズが、スポーツ分野で事業を展開するベンチャーを発掘・協業する新事業「BAYSTARS Sports Accelerator(ベイスターズ スポーツアクセラレータ)」を実施した。ベイスターズが保有する選手を始めとするさまざまなデータや外部とのネットワーク、更に資金をベンチャーに提供するなどして、新たなスポーツ事業の創出を目指すのが目的で、昨年は第1期プログラム参加企業としてカジュアルギフトサービス「giftee」を運営するギフティ(東京都品川区)が採択された。

●体操競技の採点支援でも活躍

 富士通 <6702> は、国際体操連盟と共同開発した体操演技の採点支援システムが、10月に独シュツットガルトで開催される「第49回世界体操競技選手権大会」で一部種目に導入され、20年以降は自動採点の実現を目指すとしている。また、NTT <9432> はJリーグなどとスタジアムや周辺地域のICT化を図る「スマートスタジアム事業」を推進しており、ともに注目したい。

 このほかにも、硬式野球ボールの中心部にセンサーを組み込んで投球データを計測するIoT野球ボールを展開するアクロディア <3823> [東証2]やミズノ <8022> 、更に、スポーツ競技の計時計測システムの構築などを行う日本ソフトウェアエンジニアリングを子会社に持つ日本システムウエア <9739> なども関連銘柄として要注目だ。

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