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【特集】金は買い意欲強まるか、景気減速懸念や米利上げ休止観測で <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 の現物相場は2月20日に昨年4月以来の高値1346.58ドルを付けたのち、ドル高などを受けて調整局面を迎えた。ただ、各国の経済指標が悪化するなか、欧州中央銀行(ECB)理事会で利上げ先送りと新たな刺激策が決定されるなど景気減速懸念が強い。また、2月の米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが大幅に鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ休止観測が高まった。

 調整局面で金ETF(上場投信)から投資資金が流出し圧迫要因となったが、先行き懸念から再び買われるようなら、金の支援要因になるとみられる。

●米中の通商協議進展も次は欧米の協議

 ECBは7日の理事会で利上げを先送りし、新たな刺激策を再開することを決定した。政策金利に関するフォワードガイダンスを修正し、「主要政策金利は少なくとも今年末まで、また、必要な間、現行水準にとどまると予想する」とした。また、期間2年の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の第3弾(TLTRO-III)を9月から実施すると発表した。スタッフ予想で、2019年のユーロ圏の経済成長率は1.1%になるとし、昨年12月時点の1.7%から引き下げた。また、19年のインフレ率は1.2%とし、前回の1.6%から下方修正した。

 国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)も、貿易摩擦や新興市場のストレス、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感などを指摘し、景気見通しを下方修正しており、景気減速懸念が強い。英国のEU離脱では、メイ英首相が欧州委員会のユンケル委員長と英議会可決を可能にするための修正で合意したが、英下院で否決された。

 英下院は13日に合意なきEU離脱について採決を行う。否決されれば離脱延期の採決が行われる。英首相は、EU離脱の協議期間延長を求めれば、EUに主導権が移ることになるとの認識を表明しており、先行き不透明感が残る。

 米中の通商協議は継続しており、4月には合意に達するとの見方が出ているが、一方、米国とEUの通商協議に対する先行き懸念が出ている。米国は農産品の市場開放を求めているのに対し、EUは農産品を交渉の議題にすることを否定している。また、トランプ米大統領が、通商合意に達することができなければEUからの自動車輸入に関税を課すと表明すると、EUは報復措置を採るとした。

 トランプ米大統領は2月24日、週末の米中通商協議で「大きな進展」があったとし、中国製品に対する関税の引き上げを延期すると表明した。ただ、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、米中の通商問題は非常に深刻で、中国が米国製品の購入を増やすだけでは不十分とした上で、両国が通商合意に至るには依然、相当な努力が必要になるとの認識を示した。

 その後は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、米大統領と中国の習近平国家主席が3月27日ごろに首脳会談を開き、正式に通商合意を結ぶ可能性があると報じたが、米フォックス・ニュースが習国家主席の訪米がキャンセルされたと報じた。米大統領は合意に向けた作業が依然多く残されていることから、米中首脳会談が4月にずれ込む可能性に言及した。米中の通商協議が合意に達するかどうかが当面の焦点である。

●米朝首脳会談決裂後にミサイル施設に動き

 トランプ米大統領は2月28日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談後の記者会見で、北朝鮮が制裁解除を要求したため、合意することができなかったと明らかにした。

 一方、北朝鮮の李容浩外相は、ハノイで記者会見を開き、物別れに終わった米朝首脳会談で北朝鮮は寧辺の核施設廃棄を提案し、その見返りとして制裁の一部解除を求めるという現実的な提案を行ったと説明した。その後は北朝鮮がミサイル発射施設の再建を進めていると伝えられると、米大統領は、事実であれば金正恩委員長に「失望するだろう」と述べた。

 米政府筋によると、米当局は、北朝鮮が対米協議の継続を明らかに求めていることを踏まえ、発射が差し迫っているという結論には至っていないが、北朝鮮はいつでも発射を再開する能力を維持していると誇示したいようだ、としている。3回目の米朝首脳会談に向けて取り組んでいる、とされたが、緊張が高まるようなら、金の支援要因になる可能性がある。

●中央銀行の金購入意欲が強い

 ウズベキスタンの金準備拡大計画に加え、中国の金準備増加が伝えられ、中央銀行の金購入意欲が強いことが示された。ウズベキスタンは国内の金鉱床の開発を進め、2020~2024年に金準備を430トン増加させる。今年は中央銀行が81.37トンの金を購入することを計画している。また、2月末の中国の金準備は1874トンと1月末の1864トンから増加した。中銀の外貨準備の分散化で金購入が続くと、支援要因になる。

 金の内部要因では、金ETFから投資資金が流出し、圧迫要因になった。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は1月31日時点の823.87トンが当面のピークとなり、3月8日時点で766.59トンに減少した。ただ、米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが大幅に鈍化すると、投資資金が戻り、12日時点で772.46トンとなった。再び買われるかどうかが当面の焦点である。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは2月19日時点の14万5647枚がピークとなり、3月5日時点は8万8018枚に縮小した。どのタイミングで拡大に転じるかを確認したい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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