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【特集】レンジ上限突破のプラチナ、鍵握る米中通商協議と南ア情勢 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

 プラチナ(白金)の現物相場は、米中の通商協議に対する懸念や、世界的な景気減速懸念を受けてレンジ相場となった。だが、通商協議の合意期待が出たことや、南アフリカのストライキ通知を受けて地合いを引き締めると、2月26日に過去3カ月のレンジ上限を突破し、昨年11月以来の高値861.23ドルをつけた。米中の通商協議で合意できれば追加関税が見送られ、景気の先行き懸念が後退する。協議の行方を見守っていた実需筋の買い意欲が強まるようなら、プラチナの需給が引き締まるとみられる。

 ただ、米国と欧州連合(EU)の通商協議次第では、米国が欧州から輸入する自動車に関税を課す可能性がある。英国のEU離脱の行方も不透明であり、景気の先行き懸念が残ると、プラチナの上値を抑える要因になる。

 一方、南アフリカで国営電力会社エスコムへの金融支援が発表された。同社の発電能力は不足しており、鉱山会社への電力供給の行方も今後の焦点の一つである。南アフリカでは労働組合が賃上げなどを要求し、短期ストライキを繰り返しており、供給不安につながるかどうかも確認したい。また、供給ひっ迫感の強いパラジウムが史上最高値を更新し、1500ドルから一段高となり、引き続き上値を試している。プラチナへの代替の動きは見られないが、価格差が拡大していることはプラチナの下支え要因になる。

●米国の対中関税引き上げは延期

 米中の通商協議は今年に入ってから本格化し、北京やワシントンで協議が継続された。米国の貿易赤字を解消するため、中国側が農業・エネルギーなどの製品やサービスを「相当量」購入することを約束したが、市場では知的財産権や技術移転など構造問題で合意に達するのは難しいとみられ、先行き懸念が残っていた。

 しかし、期限となる3月1日を控えて協議が進むと、知的財産権保護や技術移転強要の見直し、為替など中国の構造改革に関して6つの覚書を作成すると伝えられた。トランプ米大統領は24日、中国との通商協議が「生産的」だったとし、3月1日に中国製品への税率を引き上げる計画を延期する意向を示した。また、米大統領は、中国の習近平国家主席と近く会談する見通しを示し、両国の通商問題について最終的に合意する可能性があると述べており、今回の米中の通商協議は大詰めを迎えている。今回の協議で合意できれば、これまでに課された関税の行方が焦点になる。

 米商務省は17日、安全保障を理由に検討している自動車や部品への輸入制限について、米大統領に調査報告書を提出した。内容は公表されなかった。米国と欧州連合(EU)は昨年7月の米欧首脳会談で貿易を巡る協議を進めていく間は新たな関税を導入しないことで合意していた。ただ、今回の調査報告書で追加関税に対する懸念が出ており、EUは米国が輸入自動車に追加関税を課すとの脅しを実行に移した場合は速やかに報復すると表明した。米大統領は90日以内に輸入制限を発動するか判断する見通しであり、今後は欧米の通商協議も焦点になろう。

●南アで短期の支援ストライキ

 南アフリカの鉱山会社15社がストライキの通知を受けた。南アでは鉱山労働者・建設組合連合(AMCU)が昨年11月からシバニェ・スティルウォーターの金鉱山でストを実施している。同社が金鉱山部門で約6000人のリストラを発表すると、AMCUはプラチナ鉱山を含む鉱山会社15社で2月28日から3月7日に支援ストを実施するとした。AMCUは1月22日からシバニェ・スティルウォーターのルステンバーグのプラチナ鉱山でもストを実施した。賃上げなどを要求し、ストライキを繰り返しており、鉱山生産に影響すると、強材料視されるとみられる。

 南アの国営電力会社エスコムは、2月9日から4日連続で計画停電を行った。300億ドル以上の負債を抱えるなか、発電能力が不足している。実質破綻状態となるなか、存続するには4月までに金融支援が必要とされた。南ア財務省は20日、今年から3年にわたり、エスコムに対して690億ランド(年230億ランド)にのぼる救済措置をとると発表した。エスコムは1000億ランドの融資を求めていたが、上記の救済措置以外は南アの経済状況や電力関税など今後の動きによるとした。また、3分割されるエスコムの独立した理事会などは2019年中旬に発表し、電力市場の再構築については1カ月後に発表するとした。エスコムでは労働組合が強く、改革が進められず、難しい状況となっている。

●プラチナETFは安値拾いの買い意欲が強い

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク・プラチナでファンド筋の売り圧力が強い。昨年11月6日時点の2万3924枚が買い越しのピークとなり、2月12日時点では1606枚の売り越しに転じた。買い玉が623枚減少、売り玉は2万4907枚増加した。今回の上昇はテクニカル面で改善し、買い戻し主導の上昇とみられる。今後は米中の通商協議に対する合意期待を受けて新規買いが入るかどうかが焦点である。

 一方、プラチナETF(上場投信)残高は2月26日時点のロンドンで9.78トン(1月末8.92トン)、米国で21.64トン(同20.47トン)、南アで24.46トン(同22.95トン)となった。安値拾いの買いが入って軒並み増加しており、引き続き投資資金が流入するかどうかも確認したい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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