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【特集】経産省とボーイング連携で業界に活力、「次世代航空機関連」飛翔へ<株探トップ特集>

経済産業省は米ボーイングと次世代航空機開発における技術協力で合意。ボーイングの戦略的ビジョンに乗って、技術力ある企業がスポットライトを浴びる時が迫っている。

―機体の電動化・軽量化で活躍の機会広げるジャパニーズカンパニーを追え―

 経済産業省は15日、米ボーイングと次世代航空機の開発で必要となる技術協力で合意した。機体の電動化や複合材製造などの分野で連携を強化することが主な内容となっており、ボーイングは戦略的ビジョンを日本企業に開示することで参入を促すほか、同省は技術力のある企業を紹介することで国内航空機産業の更なる発展につなげたい考えだ。

●成長機会の獲得やCO2排出量削減が狙い

 今回、両者が合意に至った背景には、成長が見込まれる航空機市場での事業機会の獲得や世界的な流れとなっている二酸化炭素(CO2)の排出量削減に対応する狙いがあるとみられる。

 ボーイングは昨年7月に開催されたファンボロー航空ショーで、民間航空機の市場予測を公表。旅客数の増加と航空機の更新ニーズから、今後20年間の新造機需要は機体数ベースで4万2730機、金額ベースで6兆3000億ドル(約690兆円)になると試算した。同社によると、現在900機以上の航空機が製造から25年超を経過し、2020年代中頃には毎年500機以上の航空機が25年目を迎えるといい、新造機需要のうち代替需要が44%を占めると予想している。

 また同社の試算によれば、今後も保有される航空機数に新造機数を加えた世界の航空機総数は、37年までに現在の2倍となる4万8540機に達する見通しで、サイズ別ではLCC(格安航空会社)の拡大や中国及び東南アジアでの代替需要から単通路機(客室に通路が1本しかないもの)が最も力強い伸びを示し、ワイドボディ機(双通路)も世界の航空会社が路線拡充のため最新鋭の777Xや高効率の787型機の導入を増やすとみている。

 一方で、航空機総数の増加に伴ってCO2排出量は現在から倍増する可能性があり、国際民間航空機関(ICAO)や国際航空運送協会(IATA)が掲げる“2050年までに05年比でCO2排出量を50%削減”目標を達成するためには機体の環境性能向上が欠かせず、とりわけ電動化への関心が高まっている。

●電動化技術に取り組むJAXAコンソーシアム

 こうしたなか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は18年7月に、日立製作所 <6501> や三菱電機 <6503> 、三菱重工業 <7011> 、川崎重工業 <7012> 、IHI <7013> 、SUBARU <7270> 及び経産省と連携するかたちで、航空機の電動化技術を開発するコンソーシアムを発足させた。JAXAはこの時に開いた会見のなかで、国内には電動モーターや電池など航空機の電動化に不可欠な技術を持つ企業が多数存在すると指摘。参入障壁は高いが、実用化がされていない分野であるため業界地図はまだ確立されておらず、国内企業にもチャンスがあると述べた。

 また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では「航空機用先進システム実用化プロジェクト」を進めており、IHIの再委託先として住友精化 <4008> や住友精密工業 <6355> 、島津製作所 <7701> が高耐熱電動機や効率の良い排熱システムの研究開発を推進。サンコール <5985> はIHIの航空機エンジン電動化プログラムに参画している。

 このほか、 ボーイングと経産省の合意署名後に開かれたキックオフミーティングに参加したシンフォニア テクノロジー <6507> 、ジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> にも注目しておきたい。

●NEDOは機体軽量化プロジェクトを推進

 航空機の電動化を進めるうえで欠かせないのが、航続距離の延伸につながる機体の軽量化だ。そこで耐熱性や耐酸化性に優れ、軽量といった特徴を持つ炭化ケイ素系繊維に熱い視線が注がれており、宇部興産 <4208> や日本カーボン <5302> の製品は既に航空宇宙分野などで応用されている。

 更に、NEDOの「次世代構造部材創製・加工技術開発プロジェクト」のもと、イビデン <4062> や豊田自動織機 <6201> などが共同で航空機エンジン用のセラミックス基複合材料(CMC)部材の開発を行っているほか、津田駒工業 <6217> は航空機用複合材料の複雑形状積層技術開発、ジャムコ <7408> は次世代軽量カーボンハニカムパネルの開発、東レ <3402> は低コスト機体開発を実現するための数値シミュレーション技術開発に取り組んでいる。

 このほか、電気絶縁性能や強度に優れる繊維強化プラスチック(FRP)を扱うシキボウ <3109> 、チタン大手の大阪チタニウムテクノロジーズ <5726> 及び東邦チタニウム <5727> 、航空機用アルミニウム鍛造品を製造するUACJ <5741> 、主翼向け複合材を手掛ける昭和飛行機工業 <7404> [東証2]の商機拡大も期待される。

●ナブテスコ、日機装、新明和などにも注目

  ボーイングと経産省との技術協力は、他の航空機関連企業にとっても追い風となりそうで、航空機用塗料を展開する日本特殊塗料 <4619> 、昨年末にボーイングの新型旅客機「737 MAX 9」に装着されるラジアルタイヤ(主脚用)の認証を取得したブリヂストン <5108> 、航空機器を手掛けボーイングの主要サプライヤーでもあるナブテスコ <6268> 、着陸時の逆噴射気流を制御するカスケードを取り扱う日機装 <6376> 、航空機エンジン部品を生産する放電精密加工研究所 <6469> [JQ]、航空機シートを製造するKIホールディングス <6747> [東証2]、空気抵抗を軽減するフェアリングを供給する新明和工業 <7224> などへの恩恵が見込まれる。

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