【特集】決戦は23日、開催地決定迫り「大阪万博」関連株に熱視線 <株探トップ特集>
2025年万博の開催地決定が23日に迫っている。55年ぶりの「大阪万博」が実現したとき、マーケットはどう動くのか――。
―経済効果「2兆円」、東京五輪後の経済牽引にも期待―
世界の熱い視線を集め株式市場の波乱要因となっていた米中間選挙が終了、重大イベント通過で東京市場も落ち着きを取り戻している。そうしたなか、大阪での誘致を狙う2025年国際博覧会(万博)の開催地が23日に決定する。まさに、こちらは日本にとっての重大イベントだ。ポスト五輪として、日本経済の次の牽引役になるとの期待感もあり、株式市場での関心度も高い。開催地決定が迫るなか、関連株の現状を追った。
●ポスト五輪、日本経済の牽引役に期待感
日本政府は昨年の9月、25年に大阪での開催を目指す万博で、パリの博覧会国際事務局(BIE)に正式な立候補申請文書を提出し、本格的な誘致活動に出た。今年に入ると、フランス・パリが立候補を辞退、最大のライバルがいなくなったことで、大阪開催が一気に現実味を帯びることになった。しかし、ほかの立候補地であるロシアのエカテリンブルク、アゼルバイジャンの首都バクーなども攻勢を強めており予断を許さない。ある関係者も、「当然期待はしているが、ふたを開けてみなければ分からない状況」と話す。
12年に始まった第2次安倍内閣誕生を契機にスタートしたアベノミクスは、20年開催予定の東京五輪を追い風に日本経済復活の道程をひた走ってきた。しかし、五輪という大イベント終了後の日本経済に不安感を抱く人々も少なくはない。それは、過去の経験則が物語っており、開催後に経済が失速するというのは、もはや世界の常識ともいえる。牽引役だった五輪という機関車が次の開催国に走り去り、投資縮小が急速に進むことで経済伸長にストップが掛かる。もちろん、五輪終了という虚脱感、ムードの沈滞も経済に悪影響を及ぼすことになる。
●経済波及効果は約2兆円、広がる夢洲ドリーム
そこで、ポスト五輪として期待が高まっているのが大阪万博だ。誘致が決定すれば、1970年開催の大阪万博から55年ぶりとなる。また、万博会場として予定している夢洲(ゆめしま)は、統合型リゾート(IR)のカジノ誘致でも注目を集めている。もちろん、「いまさら万博でもないだろう」という声も少なくはないのも事実だが、インバウンド需要の継続・拡大も期待できるうえ、関西経済の起爆剤にもなり得る大イベントだけに、そこは“されど万博”といったところだ。
経済産業省の試算によると、入場者規模2800~3000万人、経済波及効果は約2兆円を見込むだけに、当然のことながら経済へのインパクトは大きい。加えて、五輪後の経済停滞ムードの払拭、すなわち投資意欲の向上といった精神的側面の影響も見逃せない。
株式市場では万博誘致に絡み、さまざまな局面で関西銘柄を中心に動意してきた。来週23日に迫ったBIE総会での「決定」を前に、“思惑買い”を招く可能性もある。さらに誘致決定となれば、長期にわたるテーマ買い物色の対象になりそうだ。
国内準大手証券ストラテジストは「開催自体は25年のことなので、今から継続的なテーマとして物色人気が続くかといえば疑問符がつく。経済的効果も現時点では把握しにくい」としながらも、「ただ、直近は投資作戦的には面白いタイミングだと思う。開催地決定を前に関連銘柄には思惑含みの買いが入ることも予想される」と指摘する。
やはり注目すべきは会場予定地に絡む銘柄だろう。これは、前述の通りカジノ誘致の地でもある夢洲が舞台であり、「万博がだめでも、カジノがあるさ」ということになる。夢洲に絡んでは、この地で展開する倉庫・物流各社にスポットライトが当たっている。
●山九、上組に注目、桜島埠、杉村倉は動向注視
なかでも、夢洲に用地を取得している山九 <9065> 、上組 <9364> には注目が集まりそうだ。山九は10月31日に第2四半期累計連結決算を発表、連結経常利益は前年同期比29.8%増の195億9900万円に伸び、従来予想を上回って着地、あわせて通期の同利益を従来予想の322億円から350億円に上方修正している。株価は、10月10日に年初来高値6550円更新もその後は軟調展開。ただ、10月31日に下ヒゲで5210円をつけた後は、ジワリ浮上の気配も漂う。
上組は前週末9日取引終了後に第2四半期累計連結決算を発表、人件費などが利益を圧迫し営業利益が1.2%減となった。これを受けて、きょうは長い下ヒゲで160円安の2201円まで売られたが、その後急速に買い戻され、結局は67円高の2428円で引ける波乱展開となった。そのほかでは、商い薄ながらも万博、カジノを巡る思惑株として投資家の注目度が高い櫻島埠頭 <9353> [東証2]、急騰習性を持つ杉村倉庫 <9307> [東証2]などにも目を配りたいところだ。
●名門ロイヤルホテル、常連株の京阪HD
一時の勢いが落ちたと言われるインバウンド需要だが、仮に万博開催ともなれば多くの訪日客を呼ぶことになる。五輪後を懸念する観光業界の不安を払拭し、インバウンド需要復権を招くことにつながりそうだ。特に、五輪需要を当て込んだホテル業界には安堵感を与えそうで、これも株式市場では好材料として受け止められる可能性は高い。
ホテル関連としては、ロイヤルホテル <9713> [東証2]が挙げられる。“名門”との評判も背に業績は好調。同社は9日取引終了後、第2四半期累計連結決算を発表しており、営業利益が前年同期比10.4%増、純利益は4億700万円(同3.5倍)となった。6月にリーガロイヤルホテル東京の「日本料理なにわ」をリブランドし、「京料理たん熊北店Directed by M.Kurisu」「鉄板焼みや美」としてオープンさせたのをはじめ、収益拡大に向けたさまざまな施策に取り組んだ結果、客室・宴会・食堂の主要3部門が前年実績を上回った。株価は、年初から一貫して調整が続き、年初来安値圏で下値模索。好決算を発表も人気薄を反映してか株価の反応は限定的だったが、万博思惑も絡みここから反転攻勢にでるか注目が集まる。
万博・カジノで浮上するまさに“常連株”と言えば京阪ホールディングス <9045> を忘れてはならない。幾度となく株式市場では材料として取り上げられているが、傘下のホテル京阪が夢洲に近いJR桜島線のユニバーサルシティ駅前に、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のパートナーホテルを2つ運営していることが大きなポイント。“好立地”を背景に存在感を見せているが、同社は京阪エリア地盤の私鉄で、運輸、不動産、流通、レジャー・サービスを展開しているだけに、万博開催は極めて大きな追い風となる。“トランプ波乱も何するものぞ”とばかりに株価好調、新値街道を走る展開だ。
●三精テクは実績+地元で思惑も
大阪万博関連として、必ずその名前が挙がるのが三精テクノロジーズ <6357> [東証2]だ。夢洲に土地を所有しているわけでもない、ましてやホテルなども運営していない。同社は遊戯機械、舞台機構、昇降機、特殊機構メーカーで、前回の大阪万博において、エレベーターやエスカレーター、オートロード(動く歩道)をはじめ、舞台機構や各種遊戯機械を提供。また、モントリオール万博や、つくば博、愛・地球博でも豊富な実績を持っていることが、株式市場で注目される背景にある。加えて、地元大阪の企業であることも思惑買いを招く素地としてある。
同社も9日取引終了後に第2四半期累計連結決算を発表しており、売上高が前年同期比99.2%増の239億5600万円、営業利益は同2.5倍となる13億8200万円だった。これを受け株価は大幅高、6月12日につけた年初来高値1864円を視界に捉えている。今年3月に完全子会社化したオランダのベコマ社の業績が寄与したほか、遊戯機械部門で国内外の大型案件が順調に進捗したことが寄与した。また、大型公共ホールの新設や大規模コンサートが堅調だった舞台設備部門も業績向上に貢献している。
●関西系・建設会社に商機巡る可能性
前出のストラテジストは、万博関連に絡み「具体的にはカジノ関連がテーマ買いの対象となりやすいだろう。また、年末商戦を前にゲーム関連株などが買われやすく、その流れと相まってバンダイナムコホールディングス <7832> やコナミホールディングス <9766> といった銘柄を中心に投資家のニーズを掘り起こす可能性がある。このほか、関西系の建設会社なども商機が巡る可能性があり、関西地盤のゼネコン大林組 <1802> などを筆頭にマーケットの関心が高まることも考えられる」と言う。
松井一郎大阪府知事は、今年に入って6月にフランス、9月ハンガリー、デンマーク、イタリア、さらに10月末から11月にかけてはマレーシア、パキスタンを訪問し「最後のお願い」に余念がない。また、吉村洋文大阪市長も多くの国を訪れ“票集め”に力を注いできた。仮に、大阪誘致が成功すれば、25年5月3日~11月3日までの185日間の開催となる。
決戦は23日、いよいよ運命の時が迫っている。
株探ニュース