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【特集】レクサスESが「ミラーレス時代」の幕を開ける――消える死角・関連株の行方 <株探トップ特集>

世界初の「ミラーレス量産車」となるレクサスESの登場は、新時代の幕開けとなるか。関連企業の動向を追った。

―サイドミラーから小型カメラへ、自動車新時代に飛躍するのは―

 トヨタ自動車 <7203> は9月12日、今月下旬発売の「レクサス」の日本向け新型「ES」に、量産車として世界で初めてデジタルアウターミラーを採用すると発表した。デジタルアウターミラーとは、車両のフロントドア外側のカメラで撮影した車両左右後方の映像を、フロントピラー部に設置された5インチのディスプレーに表示にする仕組み。これによりサイドミラーが不要になることから、「(サイド)ミラーレス車」とも呼ばれている。

 トヨタがミラーレスの量産車を投入することで、今後、ミラーレス車が国内外に広がっていく可能性が高く、関連銘柄には注目しておきたい。

●死角をなくすミラーレス車

 これまで一般的に装備されていたドアミラーやバックミラーでは、どうしても死角ができてしまうという安全面での問題があった。

 これに対して、ミラーレス車では、死角になりやすいところをカメラの画像で確認できるようになるほか、感度を調整することで夜間や暗い場所でも見えやすくなり、接触事故の防止にもつながるなどのメリットがある。その一方で、雨天時にはディスプレーが見えにくく、目が疲れるなどのデメリットがあると指摘されている。

 今回、新型ESに搭載されるデジタルアウターミラーは、カメラ部を雨滴が付きにくい形状とし、ディスプレーを通して見ることで、天候の影響を受けにくい優れた視認性を確保。また、ウインカー操作、リバース操作と連動させ表示エリアを自動的に拡大するほか、ドライバーの操作で任意に表示エリアを広げることも可能とし、運転状況に応じた周辺確認支援を実現した。

 トヨタでは、ESの上級グレード車にオプションとして設定する。従来のドアミラーを小型のカメラに置き換えることで、斜め前方の視界を拡大するとともに、風切音の低減により、上級グレードにふさわしい高い静粛性も実現した。

●ミラーレス車は自動運転車の試金石

 量産車のミラーレス車は新型ESが世界初だが、コンセプトカーとしては、独フォルクスワーゲンが2012年に「XL1」を、また独BMWも16年に「i8ミラーレス」を発表。さらに、独アウディも「イートロン」でミラーレス車を発表している。

 日本では16年6月に国土交通省が保安基準を改正し、乗用車やトラックなどでミラーレス車の製造が認められるようになった。トヨタ以外では、日産自動車 <7201> はバックミラーがカメラモニターに切り替わる装置を展開し、既に複数の車種に採用。サイドミラーへの応用も期待される。また、ホンダ <7267> もミラーレス車の研究開発を進めているという。

 各社がミラーレス車への注目を高めているのは、ミラーレス車で使う画像情報の収集と解析の仕組みが、自動運転車に応用できるためだ。つまり、ミラーレス車の開発が自動運転車の試金石にもなるため、開発にも力が入っている。

●パナソニックなど電子ミラー関連に注目

 ミラーレス車の関連銘柄としては、前述の完成車メーカーに加えて、電子ミラーの関連銘柄が挙げられる。

 パナソニック <6752> は17年9月、スペインの自動車部品大手フィコサ・インターナショナルと共同で「電子インナーミラー」を開発し、トヨタのミニバンに純正部品として採用されたと発表した。同製品は、リヤウィンドーの内側に広角レンズを搭載したカメラを設置することで、後方の広い範囲を映すことができ、通常のインナーミラーに比べ視野角が広いのが特徴という。また、前述の新型ESでも、パナソニックがデジタルアウターミラーの根幹であるカメラとディスプレーを提供(カメラハウジングは東海理化電機製作所 <6995> が提供)している。

 新型ESのデジタルアウターミラー向けにECU(電子制御ユニット)を提供したデンソー <6902> は、15年にモルフォ <3653> [東証M]と資本・業務提携し、モルフォの画像認識技術などを活用した電子ミラーの開発に取り組んでいる。

●村上開明堂の電子ルームミラーは国内メーカー量産車に採用

 村上開明堂 <7292> [東証2]は17年12月、電子ルームミラー「ハイブリッド インナーミラー」の量産車への搭載が決定したと発表した。国内自動車メーカーが20年半ばに発売する車種に搭載される予定だという。同社は16年6月に、サイドミラーに設置したカメラの映像をルームミラーで表示する仕組みも開発しており、今後の展開が注目されている。

 このほか、市光工業 <7244> は、親会社でカメラセンサーに強い仏ヴァレオと提携し電子ミラーの開発を進めているほか、前述の東海理化は電子インナーミラーや電子アウターミラーを開発している。JVCケンウッド <6632> も同社が注力するデジタルコックピットシステムの一環として電子ミラーの開発に力を入れている。

●関連する部品・技術にも注目

 電子ミラー関連の技術では、テクノホライゾン・ホールディングス <6629> [JQ]は、子会社が車載カメラからの映像を瞬時に画像処理を行い周囲の車両や歩行者、標識などを判別するADAS(先進運転支援システム)用非圧縮映像記録再生装置を販売している。テックポイント・インク <6697> [東証M]は電子ミラーなどに使う新しい液晶ディスプレー制御用半導体を開発しサンプル出荷を行っている。

 また、死角をなくす電子ミラー応用技術などを開発した萩原電気ホールディングス <7467> や、電子ミラーなど向けに液晶表示制御用LSIなどを手掛けるザインエレクトロニクス <6769> [JQ]なども関連銘柄として注目したい。

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