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【特集】大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第1回(後編)
日本株は何曜日が狙い目、意外と知らない「曜日アノマリー効果」~後編
前回は曜日ごとに売買代金に差が出ること、そしてそれによって執行コストに影響が及ぼすことがあることを触れました。今回は、もう一歩踏み込み投資戦術の観点から曜日アノマリー効果をみていきます。
まず、曜日ごとの銘柄の動きを見るために、「ファクターリターン」という概念の説明をします。ファクターリターンは計量分析の基礎となるもので、ある指標を軸として銘柄がどのような動きをしたのかを分析します。
簡単な例として、代表的な投資指標であるPER(株価収益率)を使い、月曜における東証一部上場銘柄のPERのファクターリターン(PERが指標として効いていたのか)を計測する例を示します。
ここで使用するPERは、前営業日つまり金曜の終値時点の値を使います。月曜の投資効果を測る銘柄の選定は、月曜の寄り付き前に終えている必要があるからです。選ぶ銘柄は金曜の終値時点のPERが高い方から100銘柄、低い方から100銘柄といった具合です。こうして抽出した高PER、低PER銘柄群のそれぞれについて、月曜時点のリターンの平均値を計算し両者を比較します。
仮に高PER銘柄群の平均リターンが1%、低PER銘柄群では2%であった場合、低PER銘柄群の方が1%だけ高リターンだったとなります。ここから月曜日の東証一部銘柄は、PERのファクターリターンがプラス、つまり「PERが効いていた」と結論付けることができます。「効いていた」とするのは、PERは低い方が投資対象として魅力的という前提があるためです。
週の初めと終わりは、逆張り
これを踏まえて、いくつかのファクターについて曜日アノマリー効果を見ていきます。まずは、もっとも基礎的なファクターである「リターンリバーサル(以下、リバーサル)」の効果をみていきます。リバーサルとは、簡単にいえば逆張りのことで、値下がりした銘柄はいずれ反発し、逆に値上がりした銘柄は下落することが多いという前提を基にしています。
これを計量分析で確認するには、前営業日の引けまでに上昇または下落した銘柄が、翌日にどのような動きをしたのかを計測します。下落していた銘柄が反転して上昇、または上昇していた銘柄が反落すれば、このファクターリターンの値はプラスになります。
一方で、前営業日に上昇した銘柄がさらに上昇(下げた銘柄がさらに下落)した場合、このファクターリターンはマイナスの値となります。リバーサル効果がマイナスの状態を一般的に「モメンタム効果」と呼びます。モメンタムは相場の勢いを示す言葉で、上昇している銘柄がさらに上昇していれば、モメンタムが強い銘柄になります。
リバーサルの分析は過去の計測期間が1日、1週、1カ月などの種類があります。たとえば、「1日リバーサル」は前営業日の上昇または下落した銘柄の動き、「1カ月リバーサル」は少し長めに過去1カ月間に起きた銘柄の動きを計測します。ここではまず1日リバーサルの効果を見ていきます。下のグラフがその結果です。
月曜と火曜はリバーサル、水曜は弱めのモメンタムとなり、木曜はほとんど傾向がなく、金曜は再び強いリバーサル、となりました。つまり月曜と火曜と金曜は前日に下落していた銘柄が上昇またはその逆、水曜日は前日に上昇した銘柄はさらに上昇またはその逆、の動きになりやすいということです。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
前回は曜日ごとに売買代金に差が出ること、そしてそれによって執行コストに影響が及ぼすことがあることを触れました。今回は、もう一歩踏み込み投資戦術の観点から曜日アノマリー効果をみていきます。
まず、曜日ごとの銘柄の動きを見るために、「ファクターリターン」という概念の説明をします。ファクターリターンは計量分析の基礎となるもので、ある指標を軸として銘柄がどのような動きをしたのかを分析します。
簡単な例として、代表的な投資指標であるPER(株価収益率)を使い、月曜における東証一部上場銘柄のPERのファクターリターン(PERが指標として効いていたのか)を計測する例を示します。
ここで使用するPERは、前営業日つまり金曜の終値時点の値を使います。月曜の投資効果を測る銘柄の選定は、月曜の寄り付き前に終えている必要があるからです。選ぶ銘柄は金曜の終値時点のPERが高い方から100銘柄、低い方から100銘柄といった具合です。こうして抽出した高PER、低PER銘柄群のそれぞれについて、月曜時点のリターンの平均値を計算し両者を比較します。
仮に高PER銘柄群の平均リターンが1%、低PER銘柄群では2%であった場合、低PER銘柄群の方が1%だけ高リターンだったとなります。ここから月曜日の東証一部銘柄は、PERのファクターリターンがプラス、つまり「PERが効いていた」と結論付けることができます。「効いていた」とするのは、PERは低い方が投資対象として魅力的という前提があるためです。
週の初めと終わりは、逆張り
これを踏まえて、いくつかのファクターについて曜日アノマリー効果を見ていきます。まずは、もっとも基礎的なファクターである「リターンリバーサル(以下、リバーサル)」の効果をみていきます。リバーサルとは、簡単にいえば逆張りのことで、値下がりした銘柄はいずれ反発し、逆に値上がりした銘柄は下落することが多いという前提を基にしています。
これを計量分析で確認するには、前営業日の引けまでに上昇または下落した銘柄が、翌日にどのような動きをしたのかを計測します。下落していた銘柄が反転して上昇、または上昇していた銘柄が反落すれば、このファクターリターンの値はプラスになります。
一方で、前営業日に上昇した銘柄がさらに上昇(下げた銘柄がさらに下落)した場合、このファクターリターンはマイナスの値となります。リバーサル効果がマイナスの状態を一般的に「モメンタム効果」と呼びます。モメンタムは相場の勢いを示す言葉で、上昇している銘柄がさらに上昇していれば、モメンタムが強い銘柄になります。
リバーサルの分析は過去の計測期間が1日、1週、1カ月などの種類があります。たとえば、「1日リバーサル」は前営業日の上昇または下落した銘柄の動き、「1カ月リバーサル」は少し長めに過去1カ月間に起きた銘柄の動きを計測します。ここではまず1日リバーサルの効果を見ていきます。下のグラフがその結果です。
月曜と火曜はリバーサル、水曜は弱めのモメンタムとなり、木曜はほとんど傾向がなく、金曜は再び強いリバーサル、となりました。つまり月曜と火曜と金曜は前日に下落していた銘柄が上昇またはその逆、水曜日は前日に上昇した銘柄はさらに上昇またはその逆、の動きになりやすいということです。
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