【特集】6年連続上昇“9~12月相場”、年末高への助走と「好実態株」 <株探トップ特集>
2012年から6年連続で上昇を記録している9月から12月にかけての東京株式市場。年末高アノマリーに乗るならば、今。上昇相場到来に備える好実態株をリストアップした。
―鉄壁アノマリー捉える物色候補「割安&好業績15銘柄」リストアップ―
8月も残すところあとわずかとなり、来週から9月相場に入るが、その前に注目したいデータがある。日経平均株価の8月末終値と12月末終値を比較し、勝敗で表した数字がそれであり、昨年まで6連勝を記録している。日本株は6年連続で9月から年末にかけて上昇相場を演じており、その上昇幅は2012年が1555円、13年が2902円、14年が2026円、15年が143円、16年が2226円、そして17年は3118円と、15年を除き10%超の上昇をみせている。つまり、アノマリーに従えば今は絶好の買い場とみることもできるのだ。
足もと8月の日経平均株価は米中貿易摩擦への警戒感からもみ合いが続いていたが、ここにきて米国株高に追随する形で急速に戻り足に転じ、28日にはフシ目の2万3000円を一時突破した。その後は利益確定売りに押される場面もあったが、日経平均は終値ベースで7連騰と強調展開を継続している。18年4-6月期(第1四半期)の企業業績は好調なうえ、投資指標面での割安感も強く、今後は急ピッチの上昇に乗り遅れた向きの押し目買いなども期待される。米中通商問題に対する懸念はあるものの、ここは年末高を意識した上昇相場に備え、物色候補を選別しておきたい。
●第1四半期“ロケットスタート”企業に注目!
「株探」の集計では、3月期決算企業約2400社のうち、4-6月期(第1四半期)に経常利益が前年同期比で増加した企業は1298社と全体のおよそ55%に上った。世界的な景気拡大を背景とする旺盛な設備投資ニーズなどに支えられ増益基調が続いている。今回は第1四半期決算が好調なスタートを切り、足もとで利益成長が続く小型株に注目した。なかでも投資指標面で割高感がなく、最低投資金額が少額で分散投資できる銘柄に照準を絞った。
下表では、3月期決算の東証1部上場企業を対象に、(1)時価総額100億円以上1000億円未満、(2)4-6月期の経常利益が前年同期と比べて20%以上増加、かつ四半期ベースで3期以上増収増益が続く、(3)予想PERが30倍以下、(4)最低投資金額が10万円以下、といった条件を満たした15社を選び出し、4-6月期経常利益の増加率が大きい順に並べた。
●フォーカスは民間企業向けシステム好調でテーマ性も豊富
増益率トップとなったのは独立系ソフト開発会社のフォーカスシステムズ <4662> 。公共システムや通信制御システムなどの受託開発を主力とするほか、インフラ設計や保守・運用サービス、セキュリティ関連ビジネスも展開している。18年4-6月期(第1四半期)は民間企業の主要取引先からインフラ構築案件の受注が伸びたうえ、高収益案件も増加し、経常利益は前年同期比8倍の2.8億円と同期間として過去最高益を達成。19年3月期は18年ぶり最高益更新を目指すが、好調な滑り出しとなった。同社はVR(仮想現実)、AI(人工知能)、ブロックチェーン、ドローン分野の開拓を進めるなど、時流に乗るテーマへの取り組みでも存在感を高めており、こちらも注目ポイントだ。
●アジアパイルは売上高と利益が青天井、東京産は21年ぶり高値圏走る
2位のアジアパイルホールディングス <5288> は建設基礎工事に使うコンクリートパイルで国内2位のシェアを誇る。4-6月期は国内で前期に着工した大型工事の完工が集中したうえ、旺盛なコンクリートパイル需要を背景にベトナム子会社の業績も好調に推移し、売上高222億円(前年同期比19.7%増)、経常利益14.6億円(同3.3倍)といずれも四半期ベースの過去最高を記録した。株価は決算発表の翌営業日である8月13日に約3年ぶりの高値となる897円まで上昇したあと調整局面にあるが、指標面で割高感はなく、再び上値を試す展開が期待される。
3位に入ったのは三菱系機械商社の東京産業 <8070> 。4-6月期は太陽光発電設備などを手掛ける化学・環境事業が業績を牽引し、経常利益は前年同期比3.1倍の10.8億円と初めて10億円の大台突破を果たした。第1四半期時点の上期計画12億円に対する進捗率は90.1%に達しており、業績上振れが確実視される状況にある。好決算と業績上振れへの期待感から株価は7月31日に21年ぶりとなる700円を突破、その後も下値を切り上げる展開が続く。指標面では予想PER12.5倍、PBR0.9倍と割安感が残っており、さらなる株価上昇に期待がもてそうだ。
●トムソンは反転上昇機運、ヨータイと冶金工は高値圏も割安感強い
4位の日本トムソン <6480> は国内外の旺盛な設備投資需要を追い風に、主力の直動案内機器とニードル軸受けの販売が好調だった。一方、海外売上比率が高い機械セクターには米中貿易摩擦が重くのしかかり、決算発表後の株価は急落した。ただ、8月14日にフシ目の700円を割りこんだところから切り返しをみせ、上昇トレンドへ転換している。また、同じ機械株では14位にバルブ国内最大手のキッツ <6498> がリストアップされた。4-6月期は半導体製造設備向けバルブの好調が継続したうえ、国内で値上げを実施したことも収益を押し上げた。信用倍率が低下傾向にあり、需給面からも注目したい。
5位のヨータイ <5357> 、6位の日本冶金工業 <5480> はともに業績絶好調にもかかわらず、予想PER10倍以下と割安感が強い銘柄として注目したい。ヨータイの4-6月期は世界景気の回復を背景に主要顧客である鉄鋼メーカーやセラミックス関連などの需要が旺盛で耐火物の販売が大きく伸びた。一方、冶金工はステンレスの高機能材の需要増加や値上げの浸透などが収益を押し上げた。両社とも決算発表と同時に通期業績予想を上方修正したが、修正した通期計画に対する第1四半期実績の進捗率は30%を超えており、一段の増額も期待できる。なお、ヨータイと同じく耐火物大手で15位のTYK <5363> も業績が想定以上に好調で、通期計画の上方修正に踏み切った。株価は9ヵ月ぶりの高値圏を快走する展開が続いている。
●カーリットHはリチウム電池検査ニーズを取り込む
10位のカーリットホールディングス <4275> は産業用爆薬を祖業とし、発煙筒や電子材料、化成品を製造するほか、ボトリング事業や産業用部材事業も展開する。また、高度な火薬技術を活用したリチウムイオン電池の安全性評価試験も手掛け、電気自動車(EV)の普及で高まるニーズの取り込みに成功している。第1四半期は電池試験案件が増勢だったうえ、電池材料などの販売も伸び、経常利益は前年同期比47.3%増の4.5億円に膨らんだ。同社は固体電解質分野の研究開発を進めており、全個体電池関連としての注目度も高い。
┌ 経常利益 ┐ 増収増益 予想 最低投資
コード 銘柄名 増益率 4-6月期 連続期数 PER 金額
<4662> フォーカス 700 288 5 20.5 95200
<5288> アジアパイル 229 1468 3 13.1 85100
<8070> 東京産 208 1081 3 12.5 78900
<6480> トムソン 201 1545 6 15.4 82000
<5357> ヨータイ 143 1295 4 7.9 93000
<5480> 冶金工 119 2675 3 9.0 36700
<2335> キューブシス 80.8 132 3 20.7 94500
<1976> 明星工 66.9 1352 3 12.7 84400
<1805> 飛島建 66.0 1378 4 7.3 19000
<4275> カーリットH 47.3 458 5 15.6 99100
<9306> 東陽倉 45.4 426 5 14.3 35700
<7245> 大同メ 44.8 1589 4 8.1 95700
<8275> フォーバル 41.0 592 4 12.8 93400
<6498> キッツ 34.9 2530 3 13.4 98000
<5363> TYK 28.5 1082 5 13.6 50400
※経常利益の単位は百万円、増益率は%。増収増益連続期数は四半期ベースの連続回数。最低投資金額は8月29日終値現在、単位は円。
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