【市況】ファンド決算に絡む45日ルールに要注意 <東条麻衣子の株式注意情報>
NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより
27日の米国市場では、米国とメキシコがNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉を決定したことを受けNYダウは259ドル高と大幅に上昇し、S&P500とナスダックがともに最高値を更新した。これまで懸念視されていた上海総合指数にも底打ち感が出ていることもあり、株式市場は全体的にリスクオンムードとなっている。
米国のレーバーデー(9月3日)までは引き続き薄商いが続くと考えられるものの、いまの相場は筆者が先週まで指摘していた動きに反し、悪材料は見えず、好材料に大きく反応している。これを見る限り上昇の勢いが勝っているようだ。
とはいえ、9月には相場の基調を変化させてもおかしくない要因が大きく2つあると考えている。
■ファンド決算に絡む45日ルール
9月の末にはヘッジファンドが四半期決算を迎える。そして、その45日ルールの応当日にあたるのが8月15日となる。45日ルールとは「ヘッジファンドの顧客が、その運用成績に不安があって解約を望む場合、決算日の45日前までに申し出なければならない」という取り決め。もし、解約が決算直前に集中すれば、資金がショートする可能性が出てくる。これを回避するためのルールであり、ヘッジファンドは解約に伴う資産返却に備えて、運用ポジションの整理を行い、まとまった現金を用意する。
通常であれば、6月、12月決算の解約に比べてこの時期の解約はさほど気にする必要はないのかもしれない。だが、現在のように米国を取り巻く通商問題や新興国の通貨不安、イランやロシアに対する米国による制裁、トランプ大統領の政治資金問題などを加味すると、リスク資金を回収しようと考える顧客が通常より増えてもおかしくないのではないだろうか。
この45日ルールに伴った動きが「いつ」、「どの程度」出てくるのかは予想がつきにくく波乱要因として注意しておく必要がある。
■米国による第3弾の対中貿易関税
トランプ政権は、9月に2000億ドル相当の中国製品に追加関税を発動する計画だ。当初は税率10%としていたものの、その後25%まで引き上げている。中国も報復関税で対抗してはいるものの、中国企業による対米輸出の規模は米企業の対中輸出を大きく上回っている。最終的には中国が妥協して解決へ向かうと考えているが、28日朝方の報道ではトランプ大統領が「中国からの通商協議の申し入れを拒否」し「今は話し合いに適切な時期ではない」とコメントしたとも伝えられており、9月の第3弾追加関税の可能性が大きな懸念材料として残っている。
現状のマーケットを見る限り上昇の勢いが強いことは間違いないが、ここから全力で買い向かうには需給と政治情勢を踏まえると、リスクが高いといえるのではないだろうか。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。相場変調の可能性が出た際、注意すべき情報、懸念材料等を配信。
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