【特集】大谷正之氏【貿易摩擦問題に再び揺らぐ、日経平均は上か下か】(3) <相場観特集>
大谷正之氏(証券ジャパン 調査情報部長)
―売買高減少で夏枯れ傾向、ボックス圏から抜け出すには―
週明け6日の東京株式市場は市場エネルギーが減少傾向にあるなか、方向感の定まらない展開となった。米国トランプ政権の通商政策に対する警戒感が根強く、好決算発表銘柄でも発表直後は上昇しても、その後は戻り売りに伸び悩むケースが少なくない。8月から9月にかけて日経平均株価は上下どちらを指向するのか。それとも狭いボックスゾーンでのもみ合いが継続するのか。マーケットをよく知る経験豊富な市場関係者3人に、ここからの全体相場見通しと物色対象などについて聞いた。
●「全体相場は方向感に欠けるが個別物色には勢い」
大谷正之氏(証券ジャパン 調査情報部長)
8月は国内・海外ともに投資家が夏休みモードとなるため、市場参加者が限定的となる期間も多く、方向感に乏しい地合いとなりそうだ。日経平均が2万3000円を超えてくると戻り待ちの売りが想定され、一方で2万2500円を割り込むと押し目買いが入る可能性が高く、このレンジでのボックス相場が見込まれる。
今週は、4-6月期決算が終盤を迎えており、開示される業績内容を吟味しながらの個別銘柄物色の色彩が一段と強まりそうだ。これまで発表された4-6月期決算の内容を見ると、総じて予想に比べ堅調との印象がある。なかでも、電子部品株の好調ぶりが目立っており、自動車の電装化に関連した銘柄などの成長性に注目したい。
9日から、両国閣僚による新たな日米通商協議がスタートする。保護主義的な動きを強める米国が、自動車や農業分野で一層の市場開放を求めてくるのではないかという警戒感が出ており、関心が高まりそうだ。また、米中貿易摩擦への懸念がくすぶり続けているなかで、海外投資家も日本株に対して積極的に買い越すスタンスを取りにくいようだ。
個別銘柄では、新光電気工業 <6967> に注目。同社は半導体パッケージの大手メーカーで世界的に投資意欲旺盛なメモリー需要を追い風に業績は好調に推移している。7月26日に発表した19年3月期の連結業績予想の修正では、営業利益を71億円から77億円(前期比57.2%増)へ増額している。売上高予想は小幅に減額したため、株価の反応はいまのところ限定的だが、上値余地は望めそうだ。
さらに、ミネベアミツミ <6479> に注目したい。同社は3日、19年3月期通期の連結純利益を従来予想の650億円から660億円(前期比31.1%増)に上方修正した。機械加工事業でベアリング需要が拡大したことなどが寄与している。ベアリング以外の機械加工品の収益も改善した。もう一つ家庭用ゲームソフト開発大手のカプコン <9697> も見逃せない。「モンスターハンター・ワールド」「バイオハザード7」など既存タイトルの販売好調に加え、今後は新タイトルの登場にも期待が寄せられている。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(おおたに・まさゆき)
1960年生まれ。立正大学文学部卒、83年丸和証券入社、営業を経て96年から現職。日本テクニカルアナリスト協会 検定テクニカルアナリスト(CFTe)、AFP(日本FP協会認定)、(内閣府認証)NPO法人金融証券マーケットフォーラム理事。トレンドの芽をいち早くキャッチすべく、フィールド重視の調査を心がけている。
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