【特集】消えたシリコンサイクル、そして株価大変貌 「半導体関連」奇跡の底値買い厳選株 <株探トップ特集>
足踏みが続く全体相場をよそに歴史的変化が進行している。半導体が突入した“究極の成長期”とは? 好決算相次ぐ世界の半導体株の流れに、もちろん日本株も乗っている――。
―アップル時価総額“1兆ドル”突破の意味、歴史的変化がマーケットにもたらすものは―
企業の4~6月期決算発表が佳境入りを迎えているが、これまでの経過を見る限りは総じて好調といってよい。特に 半導体メーカーの業績は日米ともに高収益を際立たせるものが多く、株式市場でも早晩、株価の大幅な見直しが進む可能性が高まっている。
あらゆるものをオンライン化するIoT社会が到来、そして人工知能(AI)が我々の日常に浸透し、ビッグデータの普及がさらにそれを加速させていく。まさにパラダイムシフト(産業構造の転換)が現在進行形で進むなか、その根幹を支える半導体は従来のシリコンサイクルの概念から離脱した“究極の成長期”に突入しているという見方が浮上している。
●アップル1兆ドルの意味、咲き誇る半導体関連企業
日米ともに半導体セクターの企業業績は足もとも絶好調に推移、投資家サイドからも熱い視線が向けられている。7月末に米アップルが発表した4~6月期決算に市場関係者は目を見張った。売上高が前年同期比17%増と2ケタ増収で、最終利益は前年同期比32%増の115億ドルと同四半期の過去最高を記録。最終利益を日本円に換算すれば1兆3000億円弱となる。きょう(3日)発表された日本の製造業の盟主、トヨタ自動車 <7203> の4~6月期最終利益が6573億円であったから、その倍の利益を叩き出したことになる。販売不振観測のあったiPhoneX(テン)の売り上げは、実は堅調に推移しており収益を牽引、腕時計型モバイル端末などスマートフォン以外の製品も寄与した。
アナリスト陣によるアップルの目標株価引き上げの動きも相次ぎ、2日の米株市場では同社株の時価総額は上場企業初の1兆ドルに到達した。これがFANG株復活の鐘を鳴らし、そして半導体関連をはじめとするハイテク株上昇の引き金となった。
改めて振り返れば7月下旬に発表された米半導体大手企業の4~6月期は好決算のオンパレードだった。インテルの4~6月期売上高は前年同期比15%増で、これに合わせ18年12月期通期の売上高予想も上方修正しマーケットの耳目を集めた。また、ザイリンクスの4~6月期は同11%増収、アドバンスト・マイクロ・デバイスは同53%増収と飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
こうした好決算はもちろん米国に限ったことではない。例えば、同じく7月下旬に4~6月期決算を発表した韓国半導体大手SKハイニックスは売上高が前年同期比55%増、最終利益75%増と大幅な伸びで、市場コンセンサスも上回り株高に反映させている。
●驚きを誘ったアドバンテストの収益変貌
そして、いうまでもなく日本企業もこの流れに乗っている。半導体テスターで世界屈指のアドバンテスト <6857> の業績は、市場関係者の驚きを誘った。7月25日取引終了後に発表した4~6月期連結決算は、売上高が709億3100万円と前年同期比で74%の伸びをみせ、営業利益は158億1800万円と同7倍、最終利益については138億9200万円と何と前年同期の14倍の水準に膨らんだ。これは同四半期としては実に14年ぶりの水準である。ちなみに第1四半期ということもあって今3月期の通期業績見通しは従来予想を変更しなかったが、最終利益段階で通期計画278億円(前期比54%増)に対し約半分の水準に到達してしまった格好となる。
この好決算を受けても通期見通しを上方修正しなかったことについて、アドバンテストでは「米トランプ政権の通商政策に絡む貿易摩擦問題を考慮したもの。来年の1~3月期が非常に不透明感が強いために(見通しの増額は)保留した」とするが、一方で「現時点で見返せば、(マーケットの目線から)保守的にすぎると見られてしまうのも仕方がない感じはする」としており、業績が上振れる可能性を否定していない。同社の話では「データセンター向けメモリー需要が非常に旺盛なほか、スマートフォンもこれから5G(第5世代移動通信システム)の導入に伴う買い替え需要が出てくる。通信規格の変更に伴いスマホがスペックアップするたびに、半導体テスターの新規需要が生まれるため、5G関連需要についても中長期視野で期待している」と前向きだ。また、同社は売り上げの9割以上を海外で稼ぎ出しているが、そのなかで中国向け需要の開拓に意欲をみせている。
中国では「中国製造2025」を推進し国を挙げて工業大国を目指す構えにある。今後半導体産業を本格的に立ち上げる過程で、そのイノベーションを手助けする役割を日本の半導体製造装置メーカーが担うというシナリオが有力視される。今は米中貿易摩擦問題が、ハイテク関連株にとって重荷となっているが、これは中国が目指す経済・産業戦略の根底を揺るがすものではなく、その膨大な需要は日本メーカーにも確実に降り注ぐ。
●マシンtoマシンで膨大化し続ける情報量
アドバンテストの好決算の余韻冷めやらぬ翌日(7月26日)、半導体製造装置のトップメーカーとして君臨する東京エレクトロン <8035> が行った決算発表にもおのずと市場の注目が集まることになった。東エレクの4~6月期業績も好調を極め、連結最終利益が前期比35%増の557億4100万円と大幅な伸びを達成した。半導体メーカーのDRAMや3次元NAND型メモリー関連投資が高水準で、同社が強みとするエッチング装置などを中心にニーズを取り込むことに成功している。
好調な業績の背景として、東エレクではやはりデータセンター関連の投資意欲が旺盛なことを挙げている。「ビッグデータ全盛時代を迎え、データセンター向けの需要は今後もとどまることなく拡大し続けるとみている。したがって、これは“特需”とはいえない」と同社は言い切る。
その理由についてこう続けた。「昔は半導体といえばその需要先は主にパソコンだった。また、スマートフォンの登場で半導体需要は爆発的に伸びたが、それでもパソコンの延長線上で個数連動型の需要サイクルから抜け出すことはできない。ところがビッグデータが普及し、その拡大と歩調を合わせ人工知能の応用が進む現在は状況が変わってきたといえる。今は、人間を介さずマシンtoマシンで情報が生み出され、情報量そのものが勝手にどんどん膨らんでいく時代。この流れに沿って半導体需要も、個数連動による需要の波から離脱して増え続けていく。データセンターの増設はそれを裏付けるものだ。つまりシリコンサイクルやスーパーサイクルという以前に、“サイクル”そのものが消えた可能性がある」(会社側)という。
これは目先に一喜一憂するスケールの話ではない。例えば、最近では韓国サムスンによる新型DRAMの量産時期を先送りするとの観測が、投資マインドにネガティブに働く材料として懸念されたが、こうした定点的な動きは半導体市場の全体観とは全く次元の違う話なのである。
●“コペルニクス的変化”の前夜に底値買いを満喫
株式市場でも半導体関連株に対する既存の概念がコペルニクス的に変わる機が熟しているのかもしれない。現在は半導体市場の先行きに対して、識者の間でも強気な見方と弱気な見方が真っ二つに割れている状況だ。これまでの歴史をみれば、足もとの受注環境が絶好調でも、そこで懐疑論を唱える向きが常に勝利してきたことは確かである。しかし今、過去の歴史には刻まれてこなかったAIとビッグデータの台頭が、根元でインフラ革命を起こしている可能性は否定のできないものとなっている。
とすれば、ここは半導体市場拡大により収益成長の道筋が描ける銘柄で、株価面で低評価されているものに目を向ける時だ。底値圏に位置する半導体関連株の中には、ここが世紀の買い場となっている、というケースもあり得るからだ。チャート的に仕込み妙味のある5銘柄を紹介する。
【丸文】
丸文 <7537> は独立系半導体商社で米テキサス・インスツルメンツ(TI)の製品などを取り扱っている。通信系半導体が好調なほか、医療用向けレーザー部品なども収益寄与が期待される。4~6月期は営業利益が前年同期比87%増、通期予想では25%増の47億円を見込む。株価800円台前半のもみ合いで底値鍛錬は十分だ。PER8倍台と超割安水準で、PBRも0.5倍と1株純資産1646円の半値に位置している。
【佐鳥電機】
佐鳥電機 <7420> も半導体などを扱う電子部品商社で、電装化の進む自動車向けに電子デバイスが好調。前18年5月期営業利益は4割以上の減益を余儀なくされたが、19年5月期は一転、前期比2.8倍の11億円を見込む。年間配当は前期実績比で4円増配となる38円を計画、配当利回りにして4%台は特筆される。一方で、丸文同様にPBR0.5倍と解散価値の半値水準にある時価は割安感が際立つ。
【野村マイクロ・サイエンス】
野村マイクロ・サイエンス <6254> [JQ]は超純水装置メーカーとして高いシェアを持ち、半導体業界向け需要などを捉え、高水準の受注残を確保している。19年3月期は人件費などコスト増加が足を引っ張り営業利益段階で前期比8%減の11億3600万円を見込む。ただ、これは上振れる公算も小さくない。株価800円近辺は底値圏でPERも10倍を下回っており拾い場と判断される。ただ、8月10日に4~6月期決算発表を控えており、この結果を確認してからでも間に合いそうだ。
【伯東】
伯東 <7433> は化合物半導体製造装置に強みを持つ電子機器商社。化合物半導体はシリコンよりも電子の移動速度が速く、低電力かつ高速動作に優れるほか、光に反応するなどの特性があり、産業分野で幅広いニーズがある。電子部品は車載向けが好調で18年3月期の営業8割増益に続き、19年3月期も2割強の増益(45億円)を見込む。PER10倍未満でPBRも0.6倍台と割安に放置。5日・25日移動平均線のゴールデンクロス示現で水準訂正に動き出した矢先で要マークとなる。
【日本マイクロニクス】
日本マイクロニクス <6871> は半導体テスターで使用される探針であるプローブカードを主力に手掛ける。アドバンテストの好業績が示すようにテスター需要は絶好調で、同社の株価見直し余地にもつながる。18年9月期営業利益は前期比2.2倍の33億円を計画。上期時点では17億7500万円(前年同期比6.3倍)と急拡大、ただし対通期進捗率は54%にとどまる。8月8日に予定される第3四半期決算は株価大底圏に位置するだけに注目。世界的な電気自動車(EV)シフトが進むなかパワー半導体の需要が喚起されているが、同社は国内自動車メーカーにパワー半導体のウエハー評価向けウエハープローバ「PW-8000」を納入しており、今後の展開力にも期待が募る。
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