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【特集】“Vチューバー関連銘柄”最前線、新市場から大化け株は生まれるか <株探トップ特集>

ユーチューバーが小学生の将来なりたい職業上位に入る時代、バーチャルユーチューバーにも注目が必要だ。

―「キズナアイ」チャンネル登録者数200万人超、上場企業も続々参入で成果は―

 動画投稿サイト「YouTube」への投稿で収入を得る「YouTuber(ユーチューバー)」は今やすっかり社会に浸透し、サッカーや野球選手と並び小学生男子の「将来なりたい職業」のトップ10にランキングされるまでになった。

 そのユーチューバーで起こっている新たな“波”が、人の動きをコンピューターグラフィックス(CG)に変換した「バーチャルユーチューバー」だ。日経MJが6月に発表した「日経MJ 2018年上期ヒット商品番付」にも選ばれるなど、急速に認知度が高まっており、これをビジネスに生かそうという動きも徐々に広がっている。今後、株式市場でも本家である「ユーチューバー」以上の注目テーマとなる可能性があろう。

●グッズや写真集も発売

 バーチャルユーチューバーは、Vチューバーとも呼ばれ、人間ではなく主に3Dコンピューターグラフィック(CG)で作成されたバーチャル(架空)のキャラクターのユーチューバーのことを指す。姿形はCGで作られたキャラクターだが、その裏側にはリアルな人間が存在し、モーションキャプチャーと呼ばれる現実の人物や物体の動きをデジタル化する技術を用いて演者の動作をそのまま映像に反映させ、キャラクターを動かしている。

 そのため、アニメなどのキャラクターとは異なり、「YouTube」を視聴している人とリアルタイムでコミュニケーションをとることができるのが大きな特徴となっている。VRデバイスが比較的安価に手に入るようになったことや、米アップルの「iPhoneX」のように表情を読み取る技術が発達したことなどが普及の追い風になっている。

●政府の訪日促進アンバサダーにも起用

 既に4000人以上に上るといわれているVチューバーだが、その草分けといわれている「キズナアイ」は、8月2日時点のチャンネル登録者数は205万人を超えている。その活躍は配信動画内だけにとどまらず、グッズや写真集の販売、イベントの開催、テレビ出演など多岐にわたる。さらに今年3月には、日本政府観光局(JNTO)ニューヨーク事務所が訪日促進アンバサダーとして起用したことでも話題になった。

 ほかにも、「輝夜月(かぐやるな)」「ミライアカリ」「電脳少女YouTuberシロ」などはチャンネル登録者数が50万人を超える人気Vチューバーだ。「はじめしゃちょー」「Hikakin」といった登録者数が600万人を超えるトップユーチューバーには及ばないものの、「キズナアイ」のチャンネル開設が16年12月であることを考慮すると、驚異的なスピードでファンを増やしている。

●Vチューバー専門プロダクション増加へ

 Vチューバーに関しては、その人気の高まりから、プロダクション事業やVRを使った動画サービスなど、関連事業を始める企業も出始めており、Vチューバー専門のプロダクションは早くも10社以上が設立されている。

 こうしたなか、ユーチューバーのマネジメント大手であるUUUM <3990> [東証M]は、それまでVチューバーに関する話題が少なかったが、姉妹ユニットとして活動中のVチューバー「まじかるどーる」が、7月25日に公開した動画で同社への参加を表明したことから注目を集めている。同社には国内の人気ユーチューバーが多数所属していることから、今後はコラボレーションなども期待されている。

 また、サイバーエージェント <4751> は今年5月、Vチューバーに特化したプロダクション会社CyberVを設立した。6月にはVチューバー同士によるeスポーツなども行い、認知度向上に取り組んでいる。同社はさらに子会社を通じて、Vチューバーを活用したタイアップ広告商品「バーチャルクリップ」を提供している。Vチューバーを含めた総フォロワー数300万を超えるネットワークを活用して、企業のニーズに適した動画クリエイターによるタイアップ広告を企画・制作している。

●人気IPを活用したVチューバーをプロデュース

 グリー <3632> は4月、Vチューバーなどに特化してライブエンターテインメント事業を行う新会社「Wright Flyer Live Entertainment」(WFLE)の設立を発表した。新会社は今後1~2年で100億円規模の投資を行い、日本国内のみならずグローバルでも事業を展開するという。

 同社は人気IPのコンテンツホルダー各社と今後も積極的に提携し、Vチューバーを共同でプロデュースするとしている。6月にはパソコン用ゲームの企画・開発などを行うニトロプラス(東京都千代田区)のイメージキャラクター「すーぱーそに子」を、Vチューバーとして共同プロデュースを開始した。

 イード <6038> [東証M]も今年5月、運営するゲーム情報サイトのイメージキャラクター「インサイドちゃん」をデビューさせている。

 このほか、コロプラ <3668> も5月に行われた3月中間期の決算説明会で馬場功淳社長がVチューバー事業について、「是非やりたいと思っている」と参入の方針を明らかにしている。どのような形での参入になるかは不明だが、今後も参入する企業は増えそうだ。

●Vチューバー立ち上げの専門部署を設立

 一方、プロダクション以外の事業としては、サイバーステップ <3810> [東証2]に注目だ。同社は今年5月、高性能な光学式のモーションキャプチャーが行えるスタジオを社内に立ち上げ、Vチューバー部門を設立したと発表した。社内でキャラクター制作、モーションキャプチャー、動画撮影・編集が行える人員を揃え、自社および他社のVチューバーの立ち上げを行うとしている。

 また、イグニス <3689> [東証M]では子会社パルスが展開するバーチャル・ライブ・プラットフォーム「INSPIX」を活用したバーチャル劇場「岩本町劇場」を、提携先である岩本町芸能社(東京都千代田区)と共同で8月10日にプレオープンさせる。岩本町芸能社はVRタレントのマネージメントを専門とする芸能事務所で、岩本町劇場のプレオープンでは、所属のVRアイドルユニット「えのぐ」による本格ライブを生配信するとしている。「INSPIX」の認知度も高まることが予想され、今後の展開に注目したい。

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