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【市況】S&P500 月例レポート ― 市場に影を落とす“貿易戦争”と“移民問題” (4) ―


●利回り、金利、コモディティ

 米国10年国債の利回りは、5月末の2.87%をわずかに下回る2.86%で5月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。英ポンドは5月末の1ポンド=1.3294ドルから1.3205ドルに下落し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは5月末の1ユーロ=1.1695ドルから1.1685ドルに下落しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円も5月末の1ドル=108.82円から110.68円に下落し(同112.68円、同117.00円)、人民元も5月末の1ドル=6.4104元から6.6225元に下落しました(同6.5030元、同6.9448元)。

 原油価格は3年ぶりの高水準となり(OPEC総会の結果も後押ししました)、5月末の66.93ドルから上昇して74.31ドルで月末を迎えました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は5月末の1ガロン=3.039ドルから、6月末は2.913ドルに下落しました(同2.589ドル、同2.364ドル)。金価格は5月末の1トロイオンス=1,303.00ドルから下落して1,254.40ドルで月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

 VIX恐怖指数は5月末の15.43から上昇して16.09で6月を終えました(同11.05、同14.04、月中の最高は19.61、最低は11.22)。

●各国中央銀行の動き

 オーストラリア準備銀行(RBA)は政策金利を据え置き(22ヵ月連続で1.5%)、2018年および2019年のGDP成長率が3%を上回るとの見通しを示しました。インド準備銀行は政策金利であるレポレートを0.25%ポイント引き上げて6.25%とし(利上げは2014年以来)、インフレがやや懸念されるものの、政策スタンスは中立を維持するとの見方を示しました。トルコ中央銀行は直近2ヵ月で3回目となる利上げを実施し、後期流動性金利(貸出金利)は16.5%から17.75%に引き上げられました。国際通貨基金(IMF)はアルゼンチンに500億ドルの融資枠を設定することで合意しました。

 6月のFOMCでは大方の予想通り、金利が0.25%ポイント引き上げられました(2018年3月にも0.25%ポイントの利上げを実施)。四半期見通しおよび四半期ごとの記者会見では、年内にさらに2回の追加利上げが示唆されたことに加え、2019年1月のFOMCからは記者会見を毎回開くことを表明しました。欧州中央銀行(ECB)は、資産買い入れを年内に終了するものの、金利は2019年9月まで据え置くとの意向を示しました。日銀は金利を据え置き、インフレ見通しを下方修正しました。イングランド銀行は金利を据え置きましたが、利上げを支持する票が若干増えました。

 S&P500指数は、5月の2.16%(配当込みのトータルリターンはプラス2.41%)の大幅上昇ののち、6月は0.48%上昇(同プラス0.62%)しました。第2四半期を2.93%(同プラス3.43%)の上昇で終えており、年初来の騰落率はプラス1.67%(同プラス2.65%)となっています。今年折り返し時点の上昇率は2017年通年の19.42%(同プラス21.83%)と比べれば控え目ですが、現在の強気相場の長さ(2018年8月22日には113.4ヵ月に達し、1990-2000年の強気相場に代わって“願わくは”過去最長となります)や経済が直面する貿易問題を踏まえれば、いかなる上昇であれ許容範囲と言えます。市場はこうした状況を消化しつつレンジ圏で推移し、2018年1月26日の終値での過去最高値から5.38%安、2018年2月8日の直近安値(この時点で10.16%下落し、市場は調整入り)からは5.32%高の水準で月を終えました。

 現時点で投資家はポジションを維持しており(再配分は見られていますが)、市場は相場の上昇/下落を決定づけ、現在のレンジ取引から抜け出す材料を必要としています。貿易戦争が相場の下落材料となる一方、好調な決算シーズンと、より重要なことに、明るい業績見通しが相場の上昇材料になるでしょう。

 6月は相場のボラティリティが低下し、1%以上変動した日数は5月の3日(上昇が2日、下落が1日)に対し、21営業日中2日(上昇が1日、下落が1日)となりました。平均日中値幅(高値と安値の差)でみたボラティリティも6月は3.70%と、5月の5.69%、4月の6.41%から低下が続きました。出来高は前年同月から4%減少したものの、5月からは2%増加し、過去5年間の月次平均を4%上回りました。

 投資家が貿易・政策面のイベントや銘柄固有のイベントに反応する中、セクター間のリターンのばらつきは続いたものの縮小しました。6月は最も値上がりしたセクター(生活必需品)と最も値下がりしたセクター(資本財・サービス)の騰落率の差は7.58%と、5月の9.41%、4月の13.81%から低下しました。過去1年間の平均は10.36%、年初来ではこの差は21.62%となっています。

 6月は月末に期末恒例のウインドウ・ドレッシングと一定の底値買いが市場に影響を与える中、11セクター中8セクターが上昇し、5月の7セクター、4月の6セクターを上回りました。年初来では低調の生活必需品セクターが、6月は4.15%上昇(1.41%値上がりした1月以来の上昇)と反発し、最も高いパフォーマンスを記録しました。同セクターは上半期を9.33%の下落で終えています。一般消費財セクターも3.50%上昇し、年初来では10.81%の上昇と騰落率が最高となりました。不動産セクターも3.88%上昇と反発しましたが、年初来ではなお0.96%の下落にとどまっています。

 公益事業セクターも同様の展開となり、2.46%上昇しましたが、年初来では1.52%下落しています。資本財・サービスセクターは、関税と利益率をめぐる懸念が株価を下押しする中、3.43%の下落で騰落率が最低となりました。同セクターは年初来では5.60%の下落となっています。エネルギーセクターは原油価格が3年ぶりの高値を付ける中、0.57%上昇し、年初来では5.27%の上昇となりました。金融セクターは、6月は2.02%の値下がりと5ヵ月連続で下落し、年初来の騰落率はマイナス4.91%となりました。

 6月も値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は284銘柄(平均上昇率は5.04%)と5月の279銘柄、4月の265銘柄を上回り、32銘柄が10%以上上昇しました(5月は49銘柄)。値下がり銘柄数は221銘柄(平均下落率は4.38%)と5月の226銘柄、4月の240銘柄を下回り、16銘柄が10%以上下落しました(5月は25銘柄)。年初来では引き続き、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回っています(とはいえ先月に続き改善)。6月末時点で245銘柄(5月は230銘柄、4月は220銘柄)が上昇し(平均上昇率は14.62%)、そのうち121銘柄(5月は113銘柄)が10%以上、45銘柄が25%以上上昇しました。値下がりした銘柄数は260銘柄(5月は275銘柄)で(平均下落率は10.45%)、そのうち114銘柄(5月は112銘柄)が10%以上、18銘柄が25%以上下落しました。


[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。

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