【特集】世界で動き出す「無人店舗」、“流通革命”を担う本命株は? <株探トップ特集>
コンビニや外食、宿泊業界で「無人店舗」のニュースが目立ち始めた。株式市場でも本格テーマ化の兆し。
―人手不足対策の決め手、eコマースの巨人アマゾンも実験店の運用開始―
景気の回復に伴う労働需要の高まりに対して供給が追い付いていない状態が続いており、企業の人手不足は一段と厳しさを増している。特に運輸、建設、小売、宿泊、飲食業など非製造業で深刻といわれており、これらの企業の決算では人手不足に対応するための採用費や労務費の上昇が利益圧迫の要因となっているほか、人手不足による機会損失の影響を挙げる企業もある。
こうしたなか、コンビニエンスストアや外食、宿泊業界で「無人店舗」のニュースが増え始めた。無人店舗とは、商品の補充など管理業務以外は無人で運営される店舗のことで、主に入店時の認証システムと、退店時の決済システムでそれぞれ管理されている。現在はまだ実験的に運営されているケースが多いが、人手不足解消の決定打として実用化に向けた取り組みが進められており、株式市場でも話題に上ることが増えそうだ。
●複数のカメラやセンサーを組み合わせた「Amazon Go」
総合オンラインストア世界大手の米アマゾン・ドット・コムは今年1月、ワシントン州シアトルに無人ショップ「Amazon Go」をオープンさせた。アマゾンのアカウントと専用アプリがあれば入店と商品の購入が可能で、店内にはアマゾンが昨年買収した自然食品スーパー、ホールフーズ・マーケットの商品コーナーや、「Amazon Go」のみで扱われる加工食品コーナーなども設けられている。
同店では、利用客は入店時にゲートに設置されている装置にQRコードをスキャンして入店し、後は商品を自由に選ぶだけ。その後、商品を手に携えるか買い物袋に入れて店舗を出るだけで自動的に会計が行われる。店舗内にはカメラやマイクが複数台設置され、棚に設置されたセンサーと組み合わせることで、商品の購入やキャンセルなどの動作も正確にとらえることができるという。
●淘カフェはRFIDを利用することで店舗を簡素化
このAmazon Goよりも無人店舗で先行しているのが中国だ。同国最大のECサイト「タオバオ(淘宝)」を運営するアリババグループは昨年7月、無人ショップ「Tao Cafe(淘カフェ)」をオープンさせた。7月8日から12日に杭州で開催された淘宝造物節(タオバオ・メイカーフェスティバル)での期間限定の公開だったが、利用客は入店時にアプリ認証と顔写真の撮影を行うだけで、その後はAmazon Go同様に商品を選んで店舗を出るだけとなっている。RFID(無線認証)を利用することで、Amazon Goのように複数のカメラやセンサーを必要とせず、店舗の仕組みをより簡素化している。
このほか、広東省を中心に展開している無人コンビニの「BingoBox」では、アプリ認証を入口で行い、購入する商品をスキャンして退店する。支払いは、決済機能を持ったメッセンジャーアプリ「WeChat」(ウィーチャット)と連携して行う仕組みで、既に10店舗以上を展開している。
●「変なホテル」に無人コンビニ
国内では、JR東日本 <9020> が昨年11月、JR大宮駅で無人店舗の実証実験を行った。入口のゲートに設置されている装置に同社のICカード「Suica」をかざして入場すると、あとは商品を自由に選ぶだけとなっており、決済はサインポスト <3996> [東証M]の「スーパーワンダーレジ」という無人レジシステムで「Suica」を利用して支払う仕組み。商品管理は、Amazon Go同様に店内に設置されたカメラで商品と来店客を認識・トラッキングし、在庫は棚に設置されている小型カメラでカウントを行うようになっていた。
また、エイチ・アイ・エス <9603> 子会社のハウステンボスは、運営する長崎県佐世保市の「変なホテル」内に、無人コンビニ「スマートコンビニ」を今年5月にオープンさせた。顔認証システムを用いて入店し、購入する商品を画像認識でクレジット清算、顔認証で退店するという仕組みで、NEC <6701> が顔認証システムと画像認証システムを提供。また、決済システムはコイニー(東京都渋谷区)が手掛けている。
オプティム <3694> は今年4月、佐賀大学本庄キャンパス内に「モノタロウAIストア powered by OPTiM」をオープンさせた。工場や工事用の間接資材をネット通販するMonotaRO <3064> の店舗で、利用客は同社の店舗専用アプリ「モノタロウ店舗」をインストールし、画面に表示されるQRコードを入店ゲートにかざして入店する。商品を選び、バーコードをアプリでスキャンすることでカートに追加し、退店前にクレジットカードまたは法人向けの請求書払いかを選択して決済を行うという仕組みで、確定後に表示された退店コードをゲートにかざして店舗を出るようになっている。
●RFID、電子決済関連に商機
株式市場でもこれまでに、「セルフレジ」関連が人気化した経緯があるが、無人店舗では人工知能(AI)の活用によりカメラ映像で商品を認識して決済を進め、レジそのものをなくすことまで進んでいる。
ここでキーとなるのは、本人認証と決済の仕組み、さらに防犯への取り組みとなり、これらに関連した銘柄にはビジネスチャンスとなろう。また、企業にとっても無人店舗の実現は、人件費のカットだけでなく、顧客の購買行動のビッグデータ収集という面でも効果が期待されており、これを分析する企業にも商機が広がりそうだ。
関連銘柄としては、RFIDシステムの開発を手掛けるフライトホールディングス <3753> [東証2]やサトーホールディングス <6287> 、富士通フロンテック <6945> [東証2]、カーディナル <7855> [JQG]、アルテック <9972> などが挙げられる。また、スマートフォンや専用端末を利用した電子決済を手掛ける夢の街創造委員会 <2484> [JQ]、ビリングシステム <3623> [東証M]やGMOペイメントゲートウェイ <3769> にも注目したい。
さらに、今年2月に無人店舗の技術開発や事業化で業務提携を発表したパナソニック <6752> とヴィンクス <3784> にも注目が必要だ。パナソニックはローソン <2651> の実験店舗向けにICタグの読み取りから清算、袋詰めまでを行う無人レジ装置「レジロボ」を提供しているが、この「レジロボ」にヴィンクスのソフトウェアを組み込むという。また、ヴィンクスが進める無人店舗をはじめとしたフューチャーストアにパナソニックのロボティクス技術などを導入するとしており、その動向は引き続き高い関心を集めそうだ。
株探ニュース