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【市況】S&P500 月例レポート ― 市場に影を落とす“貿易戦争”と“移民問題” (2) ―


●株式市場

 6月は市場にとって難しい月となりました。貿易問題と移民政策(いずれも政治問題)が新聞紙面やインターネットを賑わせ、市民が通りを埋め尽くす事態(集会やデモ)に発展しました。現在の貿易問題で市場は神経質になっていますが、より懸念が深刻化しているのは米国以外の国々です。6月の米国市場はS&P BMI米国指数でみると0.52%上昇(S&P 500指数は0.48%上昇)しましたが、米国以外の市場は2.25%下落しました(米国以外の先進国が1.68%下落したのに対し、新興国は4.34%とより大幅な下落となりました)。移民問題も相場に影響しています。米国では論争が激しさを増しており、今後も(特に欧州では)選挙の争点として、政策に影響を及ぼし続けるでしょう。

 ファンダメンタルズに目を向けると、税率が引き下げられ、売上高が前年同期比26.7%の伸びを記録した2018年第1四半期は「大成功」と評価できるものでした。第2四半期もこの流れを引き継ぐと予想され、売上高は前年同期比9.4%増が見込まれています(売上高の伸びは今後さらに加速が予想されます)。

 6月(そして、四半期、年初来、大統領選以降)の注目すべき動きは、株価とセクター別パフォーマンスのばらつきです。セクター別のパフォーマンスは極端な動き(大統領選以降、情報技術セクターは52.4%上昇した一方、電気通信サービスセクターは5.4%下落しており、過去20ヵ月間のリターンの差は57.8%に達しています)を見せていますが、それらをまとめた市場全体のリターンは緩やかです(年初来では1.67%上昇。配当込みのトータルリターンはプラス2.65%)。

 7月は例年、閑散としたムードで始まります。夏季休暇シーズンのため市場参加者が減少し、取引等が低調となるためです。7月4日は独立記念日の祝日で銀行や取引所が休みとなり、3日は取引所が早く(午後1時)閉まるため、活動はスローダウンします。しかし、7月6日の金曜日は取引開始前に雇用統計の発表があるため、活気が戻ってくるでしょう(相場が大きく変動することはないと思われます)。第2四半期の業績発表がスタートする7月13日は相場が活発に動くと思われます(過去、13日の金曜日は55.84%の確率で上昇、対して全取引日では54.20%)。またこの日は、Citigroup(C)、JPMorgan Chase & Co(JPM)、Wells Fargo(WFC)など大手銀行が決算発表を予定しています。市場(とトレード)は所得税減税が引き続き財務内容にどのような影響を及ぼしているかを注視し、アナリストは予想を微調整すると思われます。

 貿易問題は公の場(と水面下)での協議が続くことから、今後も市場に影響を及ぼすと予想されます。7月31日から始まるFOMCでは2日間にわたり激しい議論が見込まれますが、政策は据え置かれるでしょう。

 過去の実績を見ると、7月は57.8%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は5.03%、下落した月の平均下落率は3.24%、全体の平均騰落率は0.69%の上昇となっています。今後のFOMCのスケジュールは、7月31日-8月1日、9月25日-26日、11月7日-8日、12月18日-19日、2019年1月29日-30日となっています。

●ファンダメンタルズ

 2018年第1四半期の利益と売上高の発表が終わり(依然として好調のようです)、まもなく訪れる第2四半期の決算シーズンに注目が集まる中、一部の企業は厳しい見方を示しています(企業は通常、業績の下振れを抑制しようとする一方、ポジティブサプライズの波には乗ろうとします)。現在、2018年第2四半期の利益はこれまでの最高である2018年第1四半期を5.8%、2017年第2四半期を26.7%上回る見通しです。2018年通年の利益予想はこれまでと変わらず、2017年を26.8%上回る見込みで、2019年は(現時点では)2018年を10.9%上回る見通しです(第3四半期に入らなければ、2019年予想を扱うことはできません)。

 市場は引き続き、足元の株価収益率(PER)を懸念しています。PERは3月時点の12ヵ月予想1株当たり利益(EPS)に基づくと、営業利益ベースでは20倍を超え、公表利益ベースでも23倍を超えていますが、現時点で市場は前払いを良しとしているようです(2018年末予想EPSに基づくPERは営業利益ベースでは17倍、公表利益ベースでは18倍、2019年末予想では16倍です)。企業利益の増加がPERを押し下げる中、現在のレンジ相場はPERの上昇を抑える役割を果たしています。2018年第2四半期のEPSは企業利益の増加(過去最高の更新が見込まれます)に伴い引き続き上昇する見通しで、その結果、PERは押し下げられますが、実際のPERは株価次第となるでしょう。

 2018年6月に支払われた1株当たり配当は3.60ドルで、2017年6月の3.46ドルから4.30%増加しました。2018年第2四半期では、配当金の支払いは1株当たり13.10ドルと過去最高を更新し、これまでの最高の2018年第1四半期(12.79ドル)を2.4%、2017年第2四半期(12.12ドル)を8.15%上回り、配当総額も1,116億ドルと過去最高を記録しました(それ以前の最高は2017年第4四半期の1,095億ドル)。2018

 年上半期には216銘柄が増配した一方、減配はホテル大手のWyndham Worldwideのわずか1銘柄でした。これは同社が事業をスピンオフして2社に分社化したためで(いずれもS&P中型株400指数に追加)、スピンオフ後の2社は分社化前と同じ配当率を発表しています(テクニカル上の減配でも減配には変わりありません)。216対1という比率は最近の指数の歴史において比類するものがありません(筆者が入手しているデータは2003年以降のものです)。

 本稿執筆時点で、発表された配当率と配当方針だけに基づくと、2018年は2017年の配当を7.2%上回る見通しで、またもや記録的な年になるかもしれません。事業環境、現金の入手可能性、予想される利益の増加、株主還元を強調する企業の「意欲」を踏まえれば、実際の配当の伸びも前年比で2桁になる場合もありそうです。

 自社株買いは1,891億ドルの過去最高を記録し(それ以前の過去最高は2007年第3四半期の1,719億ドル)、2018年3月までの12ヵ月間の総株主還元額(配当と自社株買い)は初めて1兆ドルを超えました(1兆30億ドル)。

※「市場に影を落とす“貿易戦争”と“移民問題” (3) 」へ続く

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