市場ニュース

戻る
 

【通貨】為替週間見通し:ドルは下げ渋りか、リスク回避の円買い抑制の可能性も

ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより

【先週の概況】
■ドル弱含みも米朝首脳会談実現の可能性残る

先週のドル・円は弱含み。「中国は自動車の輸入税を25%から15%に引き下げる」との報道を受けて米中貿易戦争回避への期待が広がり、ドル買い・円売りが先行し、ドル・円は21日の東京市場で一時111円40銭まで上昇した。しかし、トランプ米大統領は24日、米朝首脳会談の延期の可能性に言及したことや、トランプ米政権が輸入車による自動車産業や安全保障への影響について調査を始めたと発表したことから、リスク回避の円買いが優勢となった。

イタリア、スペインの政治不安を嫌気してユーロ売り・円買いが活発となったことや、23日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で利上げペース加速の可能性が明示されなかったこともドル売り・円買い材料となった。ドル・円は24日の欧米市場で一時108円96銭まで下落した。

ただ、トランプ米大統領は25日、北朝鮮との対話を再開したことを明らかにし、「予定通りに米朝首脳会談が行なわれる可能性も残る」と指摘すると、地政学的リスク増大を警戒したドル売り・円買いは後退し、ドル・円は109円台半ば近辺まで反発した。25日のニューヨーク外為市場では原油先物の大幅続落を意識した円買いが観測されたが、リスク回避のドル売り・円買いは拡大せず、109円39銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:108円96銭-111円40銭。

【今週の見通し】
■ドルは下げ渋りか、リスク回避の円買い抑制の可能性も

今週のドル・円は下げ渋りか。米国の自動車輸入制限などトランプ大統領の政策運営に対する懸念から、リスク回避のドル売りが再び強まる可能性は残されている。ただ、米朝首脳会談が予定通り6月12日に行われる可能性は残されていることや、堅調な経済指標を背景に利上げペース加速への期待が再浮上する可能性があることから、リスク回避のドル売り・円買いは拡大せず、ドルを買い戻す動きがやや強まる見通し。

米ホワイトハウスは24日、6月12日に予定されていた米朝首脳会談の中止を発表したが、翌25日にトランプ米大統領が北朝鮮との対話を再開したことを明らかにし、米朝首脳会談実現の可能性は残されていると指摘した。米朝首脳会談の開催については予断を許さない状況が続くとみられているが、現時点では地政学的リスク増大を警戒したドル売り・円買いはやや後退している。ただし、米朝首脳会談の開催が無期延期になった場合、市場関係者の間からは「中東で核開発を進めるイランと北朝鮮は再び接近し、地政学リスクの増大に発展する」との声が聞かれている。この場合、朝鮮半島の非核化を期待したリスク選好的な円売りは大きく後退するとみられる。

通商面でトランプ政権は、鉄鋼・アルミ製品に続き、自動車の輸入制限に踏み切るようだ。日本企業(自動車メーカーなど)には打撃となるが、米貿易収支改善への思惑が強まることから、リスク回避のドル売り・円買いが大きく広がる可能性は低いとみられる。また、1-3月期国内総生産(GDP)改定値や5月雇用統計などの主要経済指標が市場予想を上回った場合、年4回の追加利上げ実施への思惑が広がり、日米金利差の拡大を想定したドル買い・円売りが活発となる可能性がある。

【米・1-3月期国内総生産(GDP)改定値】(5月30日発表予定)
5月30日発表の1-3月期国内総生産(GDP)改定値は、速報値の前期比年率+2.3%と同水準の伸びになるとみられる。GDP改定値が上方修正された場合、株高・ドル高の相場展開となる可能性がある。

【米5月雇用統計】(6月1日発表予定)
6月1日発表の米5月雇用統計は、失業率3.9%、非農業部門雇用者数は前月比+19.0万人、平均時給は前年比+2.7%が市場コンセンサス。平均時給の伸びが市場予想を上回った場合、利上げ加速への期待がやや高まり、ドル買い材料となりそうだ。

予想レンジ:108円00銭-111円00銭

《FA》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均