【特集】田部井美彦氏【GW明けで上昇待ったなし 夏相場への扉は開くか】(2) <相場観特集>
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
―米株市場、円相場、企業業績、貿易戦争の行方など材料盛沢山―
7日の東京株式市場は方向感の定まらない展開となり日経平均株価は小幅続落となった。為替の円安が一服したことに加えて、米中間の貿易摩擦に対する懸念がくすぶり上値を重くしている。本格化する企業の決算発表への慎重なムードも拭い切れない。しかし値上がり銘柄数は多く全体の6割を占め、東証2部や新興市場なども上昇傾向にあるなど投資家心理は悪くないようだ。ゴールデンウイーク明け後の相場展開はどうなるのか。証券界の第一線で活躍し、相場の先読みにも定評のある市場関係者2人に見通しを聞いた。
●「6~7月に掛けて日経平均2万5000円台乗せも」
田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)
米4月雇用統計の内容に対する米株式市場の反応からも、米国の利上げ基調に変化はなく、今後も外国為替市場での極端な円高進行の可能性は限定的だ。したがって、今後の東京株式市場は円安基調に支えられて、輸出関連の主力銘柄がリードする上昇相場が予想される。また、日中韓首脳会談や、米朝首脳会合などの重要イベントが到来するが、それらが経過することで懸念材料が払拭されて、株価面ではプラスに作用するケースが多い。今後6~7月に掛けて、1月23日につけた年初来高値の2万4129円34銭を上回って2万5000円台での推移も期待できそうだ。
現在の通常国会終了後は、9月に予定されている自民党総裁選に向けて、経済関連をはじめとした政策論議が活発化して、株式市場にとってプラス材料となる可能性もある。さらに、トランプ米大統領選も中間選挙に向けて、経済をより活性化する政策を具体的に打ち出してくることになりそうだ。
個別銘柄では、4月27日に19年3月期(米国会計基準)の連結営業利益が前期比8.8%減の6700億円になるとの見通しを発表し、これを受けて株価が急落したソニー <6758> に注目したい。同社は前期20年ぶりに営業利益が過去最高を更新しているうえに、新経営陣が標榜している18年度からスタートする中期経営計画に注目したい。収益商品のイメージセンサーは、熊本工場の完全復旧で増産に拍車が掛かる。中期的には豊富に蓄積した映像と音楽のソフトをゲームに展開するなどの将来展望もある。さらに、ロボット、人工知能(AI)の応用も期待できそうだ。
次に注目なのが、自動車部品国内最大手のデンソー <6902> だ。同社は、今期から米国で電気自動車(EV)向け自動車部品の本格供給を非トヨタ自動車 <7203> 向けでスタートすることで、新たな飛躍期を迎える。もう一つ注目なのが、関西発祥の複合一貫輸送で力を発揮しているエーアイテイー <9381> 。日中間の海上輸送で高い実績を重ねており、小口貨物の混載輸送サービスでのキメの細かい対応で成長を遂げている。
(聞き手・冨田康夫)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース