【特集】窪田朋一郎氏【GW明けで上昇待ったなし 夏相場への扉は開くか】(1) <相場観特集>
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
―米株市場、円相場、企業業績、貿易戦争の行方など材料盛沢山―
7日の東京株式市場は方向感の定まらない展開となり日経平均株価は小幅続落となった。為替の円安が一服したことに加えて、米中間の貿易摩擦に対する懸念がくすぶり上値を重くしている。本格化する企業の決算発表への慎重なムードも拭い切れない。しかし値上がり銘柄数は多く全体の6割を占め、東証2部や新興市場なども上昇傾向にあるなど投資家心理は悪くないようだ。ゴールデンウイーク明け後の相場展開はどうなるのか。証券界の第一線で活躍し、相場の先読みにも定評のある市場関係者2人に見通しを聞いた。
●「決算発表通過後に下値探る可能性もそこは買い場」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
東京株式市場では、今週木曜日(10日)と金曜日(11日)に企業の決算発表ピークを迎えることもあって目先は方向感が出にくい状況にある。ここまでの決算を見る限り、内容の良い銘柄と悪い銘柄がまちまちの状態で相場全体への影響は一概には判断できない。直近の日経225ベースのEPSは1716円であり、PERにして13.09倍。EPSの水準はゴールデンウイーク明け以前と比較してもほとんど変化がなく、これが漠然とした買い手控えムードを助長している。
4月の米雇用統計発表後、米利上げに対するコンセンサスは年内あと3回というところで、ひと頃の米長期金利上昇に対する警戒感は緩和されている。しかし、これが日米金利差を背景とした一段のドル高・円安思惑を後退させる根拠ともなり、東京市場では円安メリットが期待された主力輸出株へ投資マネーが誘導されにくい環境を作っている。
また、米株市場ではアップルの決算が市場予想を上回り株価も大幅に上昇、東京市場にも好影響が期待されるところではあったが、なかなか思惑通りには進まない。アップル好決算はクラウドや音楽サービスの好調が反映されたもの。iPhoneが不振であることは変わらず、サプライヤーである日本の電子部品メーカーや半導体関連への買いに連動しないのがつらいところだ。
今後で気をつけたいのは、トランプ米大統領の政権運営に対する先行き不透明感や、いったんは沈静化に向かった米中貿易摩擦の再燃だ。米中間の交渉は再び先鋭化していることもあって、相場に与える影響も尾を引く懸念がある。
日経平均は5月中旬までは2万2000円台前半でのもみ合い圏推移を予想するが、決算発表通過後はいったん下値を試す可能性がある。ただし下げ幅は限定的とみており、そこは買い場と心得たい。2万1500円前後を下限抵抗ラインとして、その後、全体相場は夏場に向け再び上値指向を強めてくると考えており、日経平均は7月から8月にかけ2万3000円台に浮上する形を想定している。
物色対象としては内需株に照準を合わせたほうが有利であろう。出直りムードにあった半導体関連も東京エレクトロン <8035> とディスコ <6146> のように企業間で業績見通しには差があり、一本調子に戻り相場に転じるような感じはしない。内需系でインバウンド需要が業績面を後押しする不動産や化粧品関連株に着目している。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース