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【特集】キーワードは“専門性”、人材関連銘柄「次の狙い」 <株探トップ特集>

長らく脚光を浴び続けてきた「人材関連銘柄」選別の次の一手として、「専門人材」に着目した。

―人手不足倒産5年2.5倍、深刻人材難解決で買われる株―

 ここまで順風満帆だった日本経済の進路を、深刻度を増した人手不足という暗雲が覆っている。人材の確保ができず事業継続を断念せざるをえない“人手不足倒産”まで続出しており、企業の存続をかけた非常事態といっても大げさではない状況だ。人材関連銘柄は、安倍政権の重要政策のひとつ「働き方改革」という大きなテーマ性も背景に、株式市場においても長期にわたり脚光を浴びてきた。今回は、専門性が強いことも加わり、厳しい人手不足に直面している業界で活躍する人材関連銘柄の現状と行方を探った。

●人手不足倒産は5年間で2.5 倍増

 好景気を背景に、空前ともいえる人手不足に陥っている日本列島。加えて、少子高齢化による人口、労働力の減少なども背景に、もはや「有効求人倍率の上昇」とか、「新卒者の売り手市場」などと喜んでばかりいられる状況にはない。人材の確保は企業の最重要課題であり、そして人手不足はその存続を揺るがす事態になっている。

 帝国データバンク(東京都・港区)は、4月9日に「人手不足倒産の動向調査(2017年度)」で、「(人手不足倒産は)5年間で2.5 倍増」と発表した。17年度の「人手不足倒産」は114件となり、4年連続で前年度を上回り、年度合計で初めて100件を超えたという。増加幅も2年連続で拡大しており、13年度比では2.5倍に増加している。業種別件数を見ると、「建設業」が前年度比34.8%増加で最多となる31件を占めた。このほか「運輸・通信業」(17件、同83.3%増)、「製造業」(16件、前年度比66.7%増)など、幅広い業種で倒産が増加傾向にあるとしており、既に人手不足は看過できない状況にあることが分かる。

●IT人材でアルトナー、夢テク、アルプス技研

 人材関連と称せられる銘柄は、加速する人手不足を背景に、その成長性を買われ群を抜いてその数は多い。そのなかでも、人工知能(AI)の進展に伴うIT業界の開発人材、急速な少子高齢化に伴う看護師、介護士などの不足は顕著だ。また、幅広い業界が人手不足の状況に置かれるなか、専門分野に特化した人材関連銘柄も次々と登場している。

 IoT(モノのインターネット)化が進展、急速に人々の生活へ浸透してきたAIだが、自動運転仮想通貨などをはじめとして、関連分野はもはや枚挙にいとまがない。電機大手各社も、IT人材の確保に躍起で、今年度も大幅な採用計画を打ち出している。こういった状況下、IT人材に絡む銘柄は長期にわたり好調を継続する可能性が高く、株式市場でも熱いまなざしが向けられている。

 アルトナー <2163> [東証2]はソフトウエア開発などの技術者派遣 に特化した人材サービス会社。高水準のスキルを持つ技術者の育成に重点を置き、派遣単価の引き上げに注力している。人材の確保は好調に進捗しており、中期成長力を評価する声が高い。18年1月期は営業利益段階で前の期比23%増の6億8100万円、19年1月期も前期比13%増の7億6800万円と連続2ケタ増益を見込んでいる。株価は4月10日に1367円まで買われ年初来高値を更新するも調整局面、現在は1100円近辺にある。

 そのほかIT人材関連では、アルプス技研 <4641> と夢真ホールディングス <2362> [JQ]傘下の夢テクノロジー <2458> [JQ]にも目を配りたい。2月8日に発表した夢テクノロジーの18年9月期第1四半期の連結経常利益は前年同期非連結比29.6%増の1.6億円と好調。株価は、2月6日に年初来安値865円まで売られるものの、ここを底に反転攻勢をみせ、前週12日には1266円まで買い進まれて年初来高値を更新している。アルプス技研も業績好調で、株価は長期上昇波動を形成しており上場来高値圏で頑強展開。

●ディップは「ナースではたらこ」

 日本社会の少子高齢化という人口構造の急激な変化で、まったく人材の供給が追いついていない分野が、看護師や介護士の分野だ。看護師については、病院以外においても介護施設に加え訪問看護ステーションなどにおける需要が急拡大している点が人手不足の背景にある。

 この分野では、看護師など専門人材の紹介・派遣などを行う夢テクノロジー、Career <6198> [東証M]などが注目されるが、アルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」、総合求人情報サイト「はたらこねっと」などを展開するディップ <2379> も面白い存在だ。同社は運営サイトの「ナースではたらこ」に登録した転職を希望する看護師・准看護師に対し、面談や転職相談などを通して最適な医療機関を紹介している。

 ディップが12日の取引終了後に発表した19年2月期連結業績予想は、売上高423億6000万円(前期比11.3%増)、営業利益116億3000万円(同7.7%増)、純利益79億6000万円(同5.7%増)と増収増益を見込んでいる。ただ、市場予想に届かないことから失望売りが出た格好で、株価は翌日13日に続き週明けのきょうも急落し年初来安値を連日で更新している。とはいえ、業績好調なうえ、新卒採用の強化、認知度向上のためのテレビコマーシャル放映など、積極攻勢への布石の結果でもあり、今後の展開に注目したいところだ。同社では「人手不足という状況下で、当社のサービスへの注目度は日々高まっている。そうしたなか、有料職業紹介事業も恩恵を受けており、今後も売り上げなど伸ばしていきたい」(IR)という。

●夢真HD、建設技術者派遣は高稼働率

 20年の東京五輪を控え、活発な建設需要を背景に見逃せないのが夢真HDだろう。同社は建設現場などへの技術者派遣を行うが、株式市場での注目度がひと際高い存在だ。12日、3月度の月次速報を発表しており、建築技術者派遣事業の売上高が前年同月比31%増の25億3400万円となったほか、営業利益が同58%増の4億9400万円となった。引き続き稼働人数の増加や派遣単価の上昇により売上高が増加したことに加えて、旺盛な需要を背景に高稼働率を維持したことで、営業利益は単月として創業来過去最高を更新した。なお、技術者採用に関しては、17年10月からの累計で1373人と、年間計画2500人に対して堅調な推移となっている。株価は、2月22日に1353円まで買われ年初来高値を更新、その後調整を入れ現在は1200円を挟みもみ合う展開。

●MS-Japanは「士業」でガッチリ!

 以前から人手不足が社会的に問題視されたIT、医療・福祉、建設などに絡む人材関連株は、株式市場でも既に脚光を浴びてきた。ここにきては、より専門分野に特化した関連銘柄にも注目が集まっている。

 昨年12月、東証マザーズに新規上場したみらいワークス <6563> [東証M]は、プロフェッショナル人材向けサービスを展開。主にビジネスコンサルティングとITコンサルティングの両領域を対象に、顧客企業、コンサルティング会社、システム開発会社において人材が足りない場合に、派遣や業務委託、人材紹介の形態で案件を受注している。また、シンクロ・フード <3963> は飲食店専門の求人情報サイト「求人@飲食店.COM」を運営しており、飲食業界において人手不足が叫ばれるなか活躍期待が高まる。

 MS-Japan <6539> は公認会計士、税理士、弁護士などのいわゆる「士業」と、一般事業会社の管理部門職種(経理・人事・総務・法務・経営企画など)に強みを持つ人材紹介会社。同社が1月末に発表した18年3月期第3四半期累計の経常利益は、前年同期比37.6%増の9億400万円に拡大し、通期計画の10億8600万円に対する進捗率は83.2%に達している。

●7日続伸と気を吐くC&R社

 クリーク・アンド・リバー社 <4763> にも注目してみたい。同社は、映像や出版などコンテンツ制作を代行、具体的にはテレビ番組やウェブコンテンツ、ゲームなどのクリエイター派遣や請負を手掛けるほか、医師派遣などにもその裾野を広げているが、継続的な実需買いが観測されており、きょうで7日続伸と気を吐いている。19年2月期営業利益は前期比8%増の19億5000万円、20年2月期も増益基調は変わらず、初の20億円台突破が有力視されている。

●アトラエ、AI活用の人材マッチングサービスで業績好調

 専門分野特化で、よりきめの細かい人材サービスが求められる状況のなか、さらにAIを活用した人材マッチングサービスにも熱い視線が集まっている。アトラエ <6194> [東証M]は成功報酬型求人メディア「Green」など転職者向け求人サイトを運営するなど企業の求人需要の高さを背景に業績は絶好調。同社が2月13日に発表した18年9月期第1四半期決算では、売上高が前期比31.2%増の4億9600万円、営業利益が同50.4%増の1億5000万円、経常利益が同49.2%増の1億4800万円だった。ビジネスマッチングアプリ「yenta」など、AIやビッグデータ解析技術を活用した求職者と企業のマッチングで他社との差別化を図り、今後収益への貢献に期待も高まる。人材関連に加え、AI関連という時流に乗った切り口もあるだけに、株価動向には注視が必要だ。

 厳しさを増す人材の確保だが、少子高齢化、人口減少という労働力不足を招く根本的な問題の解決も求められるという非常に難しい局面に日本経済は追い込まれている。ある人材紹介企業では「大きな課題は、商品ともいえる紹介する人材自体が不足する可能性がある」ともいい、事態の深刻さをうかがわせる。ただ、現状においては間違いなく人手不足は追い風であり、折に触れて物色の矛先が向かうことになりそうだ。

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