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【特集】桂畑誠治氏【地政学リスク再び、ここからの株式と為替はこう動く】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―シリア空爆でも頑強な日経平均、果たして相場は変わったか―

 14日未明に行われた米英仏のシリア空爆は世界に緊張をもたらしたが、週明け16日の東京株式市場ではその地政学リスクを織り込み、日経平均株価がプラス圏で着地する強さを発揮した。一方、主力株の上値も重く現時点で予断を許さない局面にあることは間違いない。今後のマーケットの行方をベテラン市場関係者はどう見ているのか。株式市場と為替の動向について、それぞれ業界のプロの目線からの意見を紹介する。

●「中東の影響軽微、カギを握るのは日米首脳会談」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 シリア空爆については化学兵器が作られた地点へのピンポイント的なもので範囲も限定的だった。またシリアが化学兵器を継続的に使用するような暴挙に出なければ空爆は今回の1回だけにとどまりそうであり、その辺の事情をマーケットは冷静に読み込んでいる。制裁だけの軍事攻撃ということであれば、米ロ対立の構図も、ここから急速に険悪化していくことは考えづらく、株式市場への影響も限定的なものにとどまろう。

 日本株市場にとってカギを握るのは17日の安倍首相とトランプ米大統領の首脳会談といえる。自由貿易協定(FTA)における交渉は日本側にすればできる限り回避したい。そのために安倍首相は手ぶらでフロリダに行くわけにはいかず、対米黒字を減らす“お土産”を持っていく必要がある。その中身について現時点では定かではないが、例えば原油やLNGなどのエネルギー関連の輸入を増やし、対米黒字の削減に反映させるというような方策が考えられる。

 米国は当然ながら貿易面で譲歩を要求してくるわけだが、環太平洋パートナーシップ(TPP)の絡みもあり安倍首相は難しい舵取りを強いられる。しかし、ここで日米間の対立が前面に押し出されるような形とならなければ、株式市場にはポジティブ。米国企業の業績発表も総じて好調が予想され、米株主導で基本的に日経平均は強含みもみ合いの展開となるのではないかと考える。向こう1ヵ月間の日経平均は企業の業績発表を横目にしながらもやや買いに分がある展開といえ、レンジとしては下値2万1000円、上値2万2700円のゾーンを想定している。

 物色対象を考えた場合、トランプ米大統領が貿易赤字の問題を重視していることもあって、自動車などの輸出セクターは機関投資家の実需買いも入りにくいだろう。今は内需の中小型株、特に消費関連の好業績銘柄に照準を合わせたい場面だ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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