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【特集】世界が変わる日――「AI関連」新ステージで躍る株 <株探トップ特集>

あらゆる成長産業に関わりイノベーションを巻き起こすAI――。東京株式市場でいま、最も注目のAI関連銘柄は?

―最強“相場テーマ”が起動する、2018年最新有望「5銘柄」―

 人工知能(AI)は今や完全に人類の生活と融合して表面的にも潜在的にも影響力を発揮、時代を動かす歯車となっている。あらゆるものをネットでつなぐIoT 自動運転車ロボット バイオ創薬フィンテックなど、人類を飛躍させる新たな成長産業すべてにAIは密接に関わり、そしてイノベーションを巻き起こしていく。

 新聞を手に取れば、今や見出しにAIの文字が躍らない新聞を見る日はないというくらい我々の日常に浸透している。しかし、本当に溶け込んだといえるのは、このアルファベット2文字が見出しから完全に消滅した時といえるかもしれない。そして意外にその日は早くやってくる可能性がある。

●AI相場が加速した16年3月の出来事

 2016年3月に米グーグル傘下のディープマインドが開発した「アルファ碁」が世界屈指のプロ棋士、李世ドル(イ・セドル)氏との5番勝負で4勝1敗と大勝。これが大きなインパクトを与え、株式市場では一連のAI関連株が上昇旋風を巻き起こした。革命的な大相場の背景にあったのは「ビッグデータ 」と「ディープラーニング」。この2つの要素が掛け合わされたことがAI発展の起爆剤となった。

 当時マーケットで認知されていたAI関連株はどういったものだったか、それはこの16年の春先から夏場にかけて大きく動意した銘柄がひとつの目安となる。

 例えばビッグデータ分析業務を手掛けるデータセクション <3905> [東証M]、人工知能「KIBIT」を擁するFRONTEO <2158> [東証M]、ディープラーニング活用の支援サービスを行うテクノスジャパン <3666> 、データマイニングに強いブレインパッド <3655> 、システム構築を手掛けAI分野の研究開発を進めるサイオス <3744> [東証2]、ビッグデータ・AI活用でマーケティング支援を行うロックオン <3690> [東証M]、ネットの投稿監視や広告画像のAI分析を展開するイー・ガーディアン <6050> などが代表格であった。

●人類を超えるAIとソフトバンクの慧眼

 そこから約2年の時が経ち、AIを取り巻く世界の景色も大きく変わった。既に囲碁も将棋も人間では全く太刀打ちできなくなり、それどころか、かつてイ・セドル氏に勝利したアルファ碁とは比べ物にならない強さのソフトが登場し、さらにそれを凌駕する次の世代も開発されている。ディープマインドのデミス・ハサビス最高経営責任者はこのアルファ碁の汎用化に意欲を示す。目には見えなくとも現在進行形で時代はめまぐるしく動いている。

 AIが人類の英知の総和を超えるシンギュラリティの到来は、「2045年」のメルクマールが意識されるほどの歳月はおそらく必要としないだろう。

 ソフトバンクグループ <9984> は、10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」設立に際してAIや半導体分野に積極投資する方針を表明している。百戦錬磨の孫正義社長ならではの慧眼で、その一挙一動がマーケットの熱い視線を引き寄せているが、これは世界の潮流のひとつの縮図に過ぎないともいえる。17年の世界のベンチャー企業への投資金額は1600億ドルを超えた。これは前年比1.5倍の水準で過去最高金額を大幅に塗り替えている。投資のステージは米国中心から中国をはじめとするアジア地域へと広がりをみせる一方で、AI分野に経営資源を注ぐベンチャー企業への投資が加速している現実がある。米国ではAI関連企業への投資は金額ベースにして前年比3割近い伸びを示しているという。

●AI開発のリーダーが世界を制する時代

 そして、この流れは今年さらに勢いを増す公算が大きい。米国では“AIの民主化”という概念が浸透しつつある。AIは特定の存在によって活用されるものではなく、陽光のように分け隔てなく降り注ぐ、誰もがその恩恵を共有できるものでなければならない。そのゴールに向かってマイクロソフトやグーグル、アマゾン・ドット・コム、エヌビディアといった錚々(そうそう)たるIT企業が凌ぎを削る。

 一方、ひとつ間違えればAIの進歩は諸刃の剣となる懸念も否定しきれない。昨年11月にスイスで“AIが判断して作動させる兵器”に関する初の国連専門家会議が開催された。いみじくもロシアのプーチン大統領が「AI開発のリーダーが世界を牛耳る」と公言するように無節操な開発競争は軍拡競争と似た意味合いを持つ。

 人間の脳の仕組みを模した「ニューラルネットワーク」を活用したディープラーニングで導いた結論は、我々の思考のレベルの延長線上にはなく、スタート地点から極めて大きな隔たりがあるケースも多い。アルファ碁がトップ棋士イ・セドル氏を破った時も、AIソフトの着手までの思考プロセスが開発者にも全く見えないブラックボックスであるということが、今後汎用化を進める過程で一つの課題として残った。道具として捉え、共存していくという姿勢を失えば、そこには危機が潜む。AIロボットが人間を排除するというようなSF世界の話が近未来に訪れないという保証はない。

●そして株式市場も次なるステージへ

 いずれにせよ、AIの存在が今後、世界の政治・経済に大きな影響を及ぼしていくことは疑いを挟む余地がなく、株式市場でも最強のテーマとして脚光を浴びることになる。

 直近では今月17日に米グーグルがクラウド経由で企業が容易にAIを活用できるサービスを開始することを発表した。その第1弾として高度な画像認識システムをわずかな画像をクラウドに送るだけで構築できるというサービスを展開する。AIの専門家を擁していない企業にとって、付加価値の高い領域でそれを活用できる機会を得られれば、収益性や企業価値の大幅な向上につながる。まさに米国の識者の間でコンセンサスとなっているAIの民主化を先導する企業ならではの動きといってよく、これは株式市場においても「AIネクストステージ」に向けた大きな契機となりそうだ。

 東京株式市場では、このAIネクストステージで活躍を待つ銘柄群が控えている。前述した関連銘柄以外では、メタップス <6172> [東証M]、JIG-SAW <3914> [東証M]、ホットリンク <3680> [東証M]、メンバーズ <2130> 、日本サード・パーティ <2488> [JQ]、シグマクシス <6088> 、フォーカスシステムズ <4662> 、インテリジェント ウェイブ <4847> [JQ]などが常連であり折に触れて物色の矛先が向かう形となろう。

●上昇加速の可能性を内包する5銘柄

 今回、関連株として改めて注目しておきたいのは以下の5銘柄だ。

 まず、インターワークス <6032> が目先上値の可能性を漂わせる動き。求人情報サイトを運営するが、AIを活用した人材採用に取り組んでいる。昨年11月には同社のグループ会社がAIを活用した人間に近い自然な会話による応対を実現するチャットボット製品の販売を開始した。人材採用ノウハウと最新テクノロジーを使った24時間対応の自動チャットシステムであり、採用の効率化と優秀な人材の早期発掘につながる。株式需給面でも信用買い残が枯れた状態で上値は軽い。昨年2月につけた高値1380円を通過点に16年6月の最高値1499円奪回を目指す。

 次に、独立系ソフト開発会社で、金融機関向け融資審査システムなどで強みを持つアイティフォー <4743> も強力な上昇トレンドを描いている。同社はAIを利用したコールセンターの支援システムを手掛けるほか、マシーンラーニングを活用してバックオフィスのホワイトカラー業務をロボットにより自動化するRPAなどが業績に寄与している。金融向けや地方自治体向け案件が拡大し18年3月期は大幅増収増益見通し。株価は昨年秋口から上放れ、13週線との上方カイ離を次第に広げる極めて上値指向の強い足だ。

 また、ITコンサル企業として今年に入って頭角を現してきたのがITbook <3742> [東証M]だ。安倍政権が公約する生産性革命ではロボット、IoT、AIを駆使して最先端のイノベーションを起こすことを目指しており、システム開発と技術者派遣で官公庁および民間向けいずれも高実績を有する同社の活躍の舞台が整ってきた。クラウドとAIを融合させた技術センターを設置しているコムチュア <3844> とIoTを活用した地方創生支援ビジネスで提携している。また、直近では、ソフトウエア開発の人材派遣などを展開するコスモエンジニアリングを子会社化することを発表、業容拡大効果が期待される。

 さらに、テクノホライゾン・ホールディングス <6629> [JQ]も株価変貌途上にある。FA・光学機器メーカーでレンズ技術に定評、監視カメラなどにも展開する。米国ではグラフィック半導体(GPU)大手のエヌビィディアがAI関連の雄として存在感を示しているが、テクノホライゾンはエヌビディアのAIスーパーコンピューターモジュールに対応する組み込みプラットフォームの販売を手掛けており、将来的な成長シナリオに思惑がある。18年3月期経常利益は期初見通しを大幅上方修正しており、前期比9割近い増益を見込む。

 博展 <2173> [JQG]はディスプレー制作など企業のイベントや販促支援業務を手掛け、18年3月期は業績急回復見込み。コミュニケーションロボット開発を手掛けるタケロボをM&Aで子会社化し、AIソリューションを手掛ける子会社アイアクトとともにAI分野を深耕している。ロボットホテルで有名となった「変なホテル」ではタケロボの客室ロボットが使われている。昨年12月初旬からの900~1000円ゾーンで静かに下値を切り上げてきたが、ここにきて上昇加速の気配を漂わせており目が離せない銘柄となっている。

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