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【特集】イノベーション Research Memo(8):既存事業の成長に加えて新事業・新サービスの創出により高成長を目指す


■市場動向と成長戦略

1. オンラインメディア事業
オンラインメディア事業は、企業が顧客獲得を目的とした広告宣伝費用の一部であり、インターネット広告市場の一部(運用型広告)として位置付けられる。インターネット広告市場についてはここ数年、年率10%台の成長が続いているが、なかでも運用型広告は年率21%成長(2012~2016年)と高い成長が続いている。投資対効果が高いことが背景にあり、今後も運用型広告は高成長が続くものと予想される。

こうしたなかで、イノベーション<3970>は今後も「ITトレンド」「BIZトレンド」を主力サービスとして成長拡大していく方針だ。成長戦略としては、3次元での成長を進めていく戦略となっている。具体的には、「掲載製品・サービス数の拡大」「サービスカテゴリー数の拡大」「来訪ユーザー数の拡大」に取り組んでいく。

「掲載製品・サービス数の拡大」では、対象となるIT製品が現在、国内だけで約1.3万製品あり、その中で1320製品前後の掲載数と全体の約1割強の水準しかないことから、依然拡大余地は大きいと言える。同社サイトの認知度向上に向けたプロモーション活動(広告や展示会出展等)や営業体制の強化を図ることで、掲載社数並びに掲載製品数を拡大していく戦略だ。また、今後は、AIシステムやIoTソリューション、FinTechサービスなど新規領域の拡充や、医療分野など専門業種で利用される製品ごとにまとめた業種別のカテゴリーを拡充し、サイトの利便性向上を進めていく方針となっている。

IT製品は技術進化が激しく、次々に新しい製品・サービスが創出されている。2~3年前はテレビ会議システムの資料請求件数が多かったが、直近では「働き方改革」の取り組み強化もあって勤怠・就業管理システムの資料請求件数が多くなっている。今後もAIやIoT、FinTechといった先進技術を使った製品が多く登場することが予見され、こうした製品の掲載数を拡充していくことで資料請求件数を伸ばしていく戦略だ。特に、こうした先進的な製品は中小企業やベンチャー企業で多く開発されるが、これら企業は営業基盤が弱いため「ITトレンド」のような見込み顧客獲得のためのツールを活用するメリットは大きい。同社では今後も、「ITトレンド」の媒体価値を高めながら、同事業での収益成長を目指していく方針となっている。

2. セールスクラウド事業
市場調査会社の予測によれば、統合型マーケティング支援ツールの2016年度における国内市場規模は、前年比59.7%増の107億円となり、この中で同社が属するSaaS型(クラウドサービス)市場は同75.0%増と大きな伸びになったと見られる。また、今後も企業のマーケティングに対する生産性向上の取組強化が進むなかで、同市場は2020年度まで年率37.3%成長(2014~2020年)と高い成長が続く見通しとなっている。また、別の調査会社の調査によれば、MAツールの企業への普及率は0.5%、上場企業に限ってみても4.3%とまだ普及率は低く※、今後の普及拡大による成長ポテンシャルは大きいと言える。

※コンサルティング会社の(株)Nexalが2017年5月に約33万社の企業サイトについて、独自プログラムを用いたWebサイトクローリングによるソースコード調査を基に算出。


こうしたなかで、MAツールのアカウント件数で国内トップの実績を持つ同社では、今後も販売パートナーとの提携戦略や製品の機能拡充を継続して進めていくことで、ターゲットとなる中堅・中小企業の顧客数を拡大していく方針となっている。

3. 中長期の成長イメージ
同社は今後も既存事業での拡大を図っていくと同時に、新技術・新サービス開発のための投資も積極的に進めていくことで、中長期的な成長を推進していく戦略となっている。新技術・新サービス開発については2017年4月に新設したSales Tech Lab.(セールステックラボ)で進めている。「法人営業の新たなスタイルの創造」が設立の趣旨で、同拠点にてAI技術等の先進技術を活用した新事業・サービスの創出を目指している。現在は、電気通信大学とAI技術を使って営業の生産性向上を実現する仕組みを共同研究しているほか、他の大学とも共同研究を進めており、初年度の投資額としては34百万円を見込んでいる。

また、今後の商品化を検討しているサービスとしてセミナー動画プラットフォーム「Seminar Shelf(セミナーシェルフ)」(β版)を開発し、試験的な運用を2017年8月より開始している。「Seminar Shelf」は営業・マーケティング担当者向けのセミナー動画専用サイトとなり、会員登録するだけで関心のある企業のセミナーをセミナー会場に行くことなく、場所・時間を選ばずPCやスマートフォン等で視聴できるサービスとなる。セミナー動画は10分程度に編集してアップする。ビジネスモデルはまだ固まっていないが、動画を掲載する企業にとっては、視聴する会員が有力な見込み顧客となるほか、視聴時間のデータも収集できるため、より確度の高い見込み顧客を抽出することが可能となる。同社では当面、試験運用を行った上で収益化の目途が立てば商用化していく考えだ。

その他、成長戦略としてはM&Aなども活用していく考えで、2017年4月にM&A部門も新設している。対象はBtoBに特化したWebマーケティングを展開している企業のほか、SFAやCRM、名刺管理、法人企業データサービス等の周辺領域を展開している企業となる。

成長戦略を纏めると、同社独自のノウハウに基づいた法人営業プロセスに関わる一気通貫のサービスを提供し、中堅・中小企業のニーズに対応した製品・サービス群を拡充しながら、既存事業の拡大を図り、また、提携パートナーである日経BPとの事業連携強化による収益基盤の拡充や新事業・新サービスの創出、M&Aによる事業領域の拡充なども進めながら、高成長を実現していく考えだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《MH》

 提供:フィスコ

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