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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆米減税法案を巡る駆け引き◆

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

〇減税効果の各論攻防へ〇

米上院の減税法案可決を契機に、NYダウは2万4000ドル台に乗せ、1日値幅が300ドルを超える乱高下を演じた。昨日は109ドル安となったが、年末の利益確定時期と重なっており、調整の範囲内と考えられる。主力ハイテク株の調整が続き、中国SNS大手テンセントの時価総額が550億ドル吹き飛んだ(11月21日から12月1日まで)などが話題だが、年初から2倍強となった株高の反動と見られる。

トランプ政権最大で、最初の成果と言われる減税法案は上下両院案が異なり、主に実施時期(18年か19年か)、個人所得減税(区分や税率)などで調整が必要。なお、紆余曲折を予想する向きもあり、減税による株価押し上げ効果の判定は難しい。ややムード的に煽られている面もあろう。来週のFOMCなどによる利上げシナリオなどとの攻防に移行すると見られる。

上下両院の減税法案で一致している項目に、「海外子会社からの配当課税の廃止」がある。米企業が海外に貯め込んだ資金は2.5兆ドル。米本土への還流が狙いで、本国投資法として05年に実施された時は、前年比3.7倍の資金還流になったとされる。当然、ドル高材料だが、ドル指数の展開を見ると、前週に2カ月ぶり安値となった後、戻しつつも、それ程強くはない。「フラット派」の攻防が重石になっていることを示す。

それでも、来年の米企業収益見通しの上方修正が相次いでいるようだ。S&P500ベースで、1株利益を5%強押し上げ、1株利益水準は140ドル前後から150ドル前後に押し上げとの見方。また、増配効果、M&A活発化、国内投資活性化など、様々な効果が期待されている(IT関連株は既に実効税率が低いとして、相対的に効果が大きいとされる銀行、小売などが買われているが、単なるロング・ショートの手仕舞いにも見える)。

日本株でも恩恵探しが始まったようだ。一般的には、自動車、電機、機械などの業種が注目されるが、昨日は電炉大手・大和工業(5444)が4.3%高となった。米ニューコアとの合弁企業からの配当が大きいことで知られる。医薬品でも、大日本住友製薬のセグメント利益で北米は66%を占めるなど、意外に業種的広がりが大きく、収穫局面の個別材料評価となろう。全体として、日銀の金利差維持策だけでなくドル還流による為替安定効果、米経済活性効果が、来年の市場期待要因になると考えられる。


以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/12/6号)

《CS》

 提供:フィスコ

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