【特集】健康増進へ“スニーカー通勤”プロジェクト開始で期待の株は <株探トップ特集>
アキレス <日足> 「株探」多機能チャートより
―発足2年目スポーツ庁が狙う通勤服装改革、クールビズに続く成功例になるか―
発足後2周年を迎えたスポーツ庁は10月2日、ビジネスパーソンのスポーツ参画人口拡大を通じて国民の健康増進を図る官民連携プロジェクト「FUN+WALK PROJECT」をスタートすると発表した。その第1弾として来年3月から「スニーカー通勤」など歩きやすい服装を推奨するキャンペーンをスタートさせる。同庁では、このプロジェクトが“クールビズ”のような国民的運動として定着することを目指しており、スニーカー関連の企業をはじめ、スポーツや健康関連のビジネスにとって追い風が加速することになりそうだ。
●スポーツ庁「FUN+WALK PROJECT」スタート
スポーツ庁によると、国民の成人で週1回以上のスポーツ実施率は、全体で42.5%となっているものの、20代から40代に限ると30%台前半にとどまっているのが実情。第2期スポーツ基本計画では、成人の週1回以上のスポーツ実施率を65%程度まで引き上げることを目標とし、そのためにはこの世代の実施率を引き上げることが重要としている。
また、国民医療費が40兆円を超える現在、スポーツを通じた健康増進は、国民医療費の抑制、健康寿命の延伸への貢献も期待される。そこで、スポーツ庁は普段の生活から気軽に取り入れることのできる「歩く」に着目し、「歩く」に「楽しい」を組み合わせることで、自然と「歩く」習慣が身につくようなプロジェクト「FUN+WALK PROJECT」をスタートさせる。
●スポーツ参画人口の拡大で、国民の健康増進を
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた国民全体の取り組みとして、本格的なスポーツをする人のみならず、日々の暮らしのなかで気軽に体を動かす人も含めて、スポーツ参画人口の拡大を進めていく。18年3月からは、日常生活の中での「歩く」を促進するため、「スニーカー通勤」など“歩きやすい服装”を推奨する第1弾キャンペーンを開始する。
このプロジェクトでは、1日の歩数を普段よりプラス1000歩(約10分)することを目指し、まずは1日8000歩(国民の平均歩数は男性7194歩、女性6227歩)を目標とし、日常的に気軽に取り入れられる運動「歩く」を通じて、スポーツ参画人口の拡大を図り、国民の健康増進につなげていく。
●アシックス、スポーツ用品取り入れのカルチャー定着がビジネスチャンスに
個別銘柄では、大手総合スポーツ用品 メーカーで、スポーツシューズで強みを発揮しているアシックス <7936> に注目。同社ではこのプロジェクトについて「非常にポジティブに受け止めている。当社の従業員は、当たり前のようにスポーツシューズを着用して通勤しているので新しさはないが、他の企業でも浸透し、就労世代の健康意識が高まるのであれば、素晴らしい取り組み」(事業戦略部広報チーム)としている。
さらに同社では、ビジネスチャンスと捉えており「働くシーンに当たり前のようにスポーツ用品が取り入れられるカルチャーが日本にも定着すると、それは大きなチャンスである。既にスニーカー通勤を検討している企業から声がかかり始めている。相手企業のニーズを確認しながら、企画立案を進めていきたい」(同)と意欲をみせている。
10月6日に国内最大の旗艦店「アシックス原宿フラッグシップ」がオープンした。この旗艦店はアシックス、アシックスタイガー、ホグロフスの3ブランドを総合的に取り扱い、各ブランドの世界観を同時に見ることが可能で、スポーツやファッションなど質の高いライフスタイルを提案していくという。
●ABCマートは“街履きもできるスポーツシューズ”に注力
靴小売り専門店最大手のエービーシー・マート <2670> では「従来からのスニーカー購買層に加えて、こうしたプロジェクトがスタートすることで新たな顧客層が獲得できる可能性があるものとして期待感がある」(広報担当)としている。
同社では、スポーツシューズの需要は高いものと予想し、販売戦略として、引き続きスポーツシューズの販売強化に注力し、ライフスタイルにスポーツ感覚を取り入れた“アスレジャー”と呼ばれるファッションスタイルの提案を行い、“街履きもできるスポーツシューズ”とそれに関連したアパレルの販売を強化していく。
今期の出店計画では、当初50店舗の国内出店を計画していたが、計画を上回る出店が既に確定となったため、下半期の計画は都市部を中心に19店舗、通期で63店舗の出店に変更している。下半期からは、“アスレジャー”需要を取り込むための新たな業態としてスポーツファッション専門店「ABC-MART SPORTS」を展開する。
●アキレスは新素材のランニングシューズで走る楽しさ訴求
一方、スポーツシューズ大手のアキレス <5142> では、自社開発した新ポリウレタン素材・「MEDIFOAM(メディフォーム)」を搭載し、スポーツ・ランニング障害の軽減に配慮し、走る楽しさを支えるランニングシューズ 「MEDIFOAM」の第2弾となる17年秋冬モデルを、11月中旬から全国のスポーツ専門量販店・スポーツ専門店および靴専門店などで販売している。さらに、同社は負担がかかりやすいかかと部分に、衝撃吸収・圧力分散する最先端ハイテク素材「ソルボセイン」搭載のコンフォートシューズ「アキレス・ソルボ」を主軸とする婦人向け製品を全国の有名百貨店向けなどへ拡販している。
●ウォーキングに欠かせない歩数計はオムロンとシチズン時計
このほかに、スポーツウエア大手のデサント <8114> は、自社ブランド「デサント」のランニングシューズ投入で市場シェア拡大を目指す。さらに、靴や衣料の通販を中心に、卸販売、小売店など展開するヒラキ <3059> [東証2]は、低価格帯のスニーカーで強みを発揮している。また、婦人・紳士靴の量販店向け卸売りが柱で、ケミカルシューズに強みを持つ東邦レマック <7422> [JQ]は、世界で初めて“ダイエットシューズ”として特許を取得したウォーキングシューズを開発している。
一方、意識的なウォーキングの継続に欠かせないグッズとして歩数計があるが、オムロン <6645> 、シチズン時計 <7762> の両社はさまざまな用途に対応した豊富な品揃えで需要拡大を目指している。
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