【通貨】為替週間見通し:ドルは伸び悩みか、米金利見通しの不透明感強まる
ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより
■ドル弱含み、2018年の米利上げペース鈍化の思惑も
先週のドル・円は弱含み。一時111円07銭までドル安・円高に振れる場面があった。22日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事録(議事要旨)内容を受けて、米国金利の先高観は後退したことがドル売りを促した。12月利上げは確実視されているものの、低インフレの状態は長く続く可能性があることから、米長期金利は上げ渋っており、2018年における利上げペースは鈍化するとの見方が広がった。
米商務省が22日発表した10月耐久財受注速報値は前月比-1.2%と、市場予想に反して減少したこともドル売り材料となった。国内総生産(GDP)の算出に使用される「航空機を除く非国防資本財の出荷」は前月比+0.4%で9月実績の+1.2%から鈍化しており、10-12月期における経済成長率は鈍化する可能性があることもドル売り材料となった。
米税制改革法案の年内可決への期待は持続しているものの、市場参加者の間では「米上院での法案可決は織り込み済み」との声が聞かれている。24日のニューヨーク市場では、株式や原油先物の上昇を意識してドル買い・円売りがやや優勢となったが、ドル・円は111円62銭で上昇一服となり、111円55銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:111円07銭-112円72銭。
■ドルは伸び悩みか、米金利見通しの不透明感強まる
今週のドル・円は伸び悩みか。22日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(10月31日-11月1日開催分)で、金融政策の方向性はメンバー間でおおむね一致したものの、インフレの伸び悩みが市場の観測よりも強く意識されていることが明らかになった。このため、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利正常化(利上げ)を早急に進めることへの懐疑的な見方が増えており、リスク選好的なドル買いはやや抑制される可能性がある。
ハト派寄りのFOMC議事要旨を受け、11月の米消費者信頼感指数や7-9月期国内総生産(GDP)改定値などの主要経済指標が市場予想を下回った場合、市場コンセンサスである2018年の3回の利上げペースは鈍化するとの見方が広がり、ドル売りに振れる可能性があろう。
また、トランプ政策の柱となっている税制改革について、引き続き議会での攻防が注目される。税制改正法案については下院と上院の間で細かな調整が必要との見方が依然多いようだ。両院での調整が難航すればドル売りが強まる可能性がある。
一方、欧州中央銀行(ECB)による早期利上げ期待はやや高まっていることから、30日発表の10月失業率や同月の消費者物価指数などの経済指標も材料視されそうだ。ユーロ圏経済の持ち直しを示唆する内容だった場合、ユーロ買い・米ドル売りが活発となり、ドル・円の取引にもドル売り圧力が加わる可能性がある。
【米・CB11月消費者信頼感指数】(28日発表予定)
28日発表の米CB11月消費者信頼感指数は123.50と、10月の125.9を下回る公算。ただ、過去の実績との比較で相対的に高い水準は維持される見通しで、米国経済の拡大基調が示された場合、金利正常化を後押しする材料となり、ドル買いが強まりそうだ。
【米・7-9月期国内総生産(GDP)改定値】(29日発表予定)
29日発表の7-9月期国内総生産(GDP)改定値は、前期比年率+3.2%と速報値+3.0%から上方修正される見通し。ハリケーンの影響が加味されるものの、想定を大きく下回らなければ連邦準備制度理事会(FRB)の12月利上げ期待は揺るがない見通し。
予想レンジ:110円00銭-113円00銭
《FA》
提供:フィスコ