【特集】日本橋に空を――"首都高地下化"構想で関連株は浮上するか <株探トップ特集>
三井不 <日足> 「株探」多機能チャートより
―再び高まり始めた東京・日本橋上空の高速道路撤去構想、株式市場でも密かな関心―
「日本橋に空を取り戻そう」。これまで何度も浮かんでは消え、消えては浮かんできた東京・日本橋の上空に覆いかぶさる首都高速道路の地下化構想が現実味を増してきた。国土交通省と東京都、首都高速道路などで組織する「首都高日本橋地下化検討会」は1日に初会合を開き、このなかで2018年春ごろまでに対象区間や地下ルートをとりまとめる方針を確認。同年夏ごろまでに概算事業費と施工手順などの事業スキームを決定するとしており、株式市場では“首都高地下化”関連株への関心が高まっている。
●老朽化に加え、都市再生プロジェクトが追い風に
日本橋上空を走る首都高が景観を損ねているという指摘は以前から多く、地下化の議論は2000年以降、幾度となく繰り返されてきた。01年には当時の扇千景国交相が有識者による「東京都心における首都高速道路のあり方委員会」を設立し、02年に日本橋地区における首都高の再構築案を提示した。また、06年には小泉純一郎首相(当時)の指示に基づき「日本橋川に空を取り戻す会」が民間再開発の後に首都高を地下化する方式を発表。国交省の「首都高速の再生に関する有識者会議」も12年に地下化に言及したが、事業化には至らなかった。この背景として首都高の移設には4000億~5000億円もの莫大な費用がかかるとの試算や、日本橋区間の地下には上下水道や通信、電力といったインフラ施設が数多く埋まっていることから工事が非常に困難なことが挙げられ、都市景観の向上という目的だけでは十分な費用対効果が得られないとして頓挫した経緯がある。
ここにきて再浮上してきたのは、日本橋上空に首都高が開通して50年以上が経ち老朽化が目立ってきたことが主な要因。さらに14年に首都高の大規模更新計画が策定されたことや、16年に日本橋周辺で検討が進むまちづくりの取り組みが国家戦略特区の都市再生プロジェクトに追加されたことも追い風となっている。特区のプロジェクトに位置づけられたことで、都市計画決定の迅速化など行政手続きの優遇措置が受けられるようになり、同地区での再開発の動きが活発化。再開発と首都高の移設をセットで進めることによって、移設費用を削減できる可能性があり、これが地下化に向けた機運の高まりにつながっている。
●三井不と野村不HDは日本橋南側を再開発
小池百合子・東京都知事が7月21日の会見で「首都高の地下化により、国際金融都市にふさわしい品格のある都市景観を形成していく」と述べたが、同月には三井不動産 <8801> と野村不動産ホールディングス <3231> が日本橋の南側で計画する再開発事業の第1弾となる「日本橋一丁目中地区」(約3万9000平方メートル)の概要が明らかになった。計画案によると、歴史的建築物である「日本橋野村ビル旧館」を残しながら、高さ287メートルの高層ビルを中心に複数のビルを建設し、オフィスのほか、商業施設やホテルなどを誘致する予定。20年度に解体工事を始め、25年度の完成を目指す。
また、日本橋二丁目地区市街地再開発組合の一員となっている高島屋 <8233> は来年9月に、新・都市型ショッピングセンター「日本橋高島屋S.C.」(売り場面積で約6万6000平方メートル)を開業する計画。「日本橋高島屋S.C.」は日本初の重要文化財である「本館」を残し、「新館」と18年春に先行開業する「東館」、15年に開業した「ウオッチメゾン」を加えた4館で構成される。
●三菱地所は常盤橋街区で大規模複合再開発
このほか、東京駅日本橋口前に位置する常盤橋街区では、三菱地所 <8802> が中心となって行う約3万1000平方メートルの大規模複合再開発が4月からスタート。10年超の事業期間をかけて段階的に4つのビル開発を進める計画で、18年1月に高さ230メートルのA棟を、23年には東京の新たなランドマークとなる高さ390メートルのB棟の工事を始める。
証券街として知られる日本橋兜町周辺では、平和不動産 <8803> が今後3年間で同地区の再開発事業に約150億円を投じる計画だ。そのうちのひとつ、ヤマタネ <9305> 傘下の山種不動産なども参加する「日本橋兜町7地区開発計画(仮称)」では、高さ90メートルの複合ビルを建設。18年度に着工し、20年度の完成を目指す。「国際金融都市・東京」構想を踏まえ、500人規模のホールや株主総会・IR説明会などで利用する会議室・セミナールームを整備する。
●応用地質、鉱研工業、安藤ハザマにも注目
石井啓一国交相は7月21日の会見で「事業の着手は早くても20年の東京オリンピック・パラリンピック後になる見込み」と述べているが、地下化が正式に決まれば、まず地質調査が実施されることになるため、応用地質 <9755> や土木管理総合試験所 <6171> 、川崎地質 <4673> [JQ]に注目。地盤改良工事を手掛ける日本基礎技術 <1914> やライト工業 <1926> 、ボーリングで多くの実績を持つ鉱研工業 <6297> [JQ]などにも商機がありそうだ。
また、大規模工事ではJV(建設工事共同企業体)が組まれるが、大成建設 <1801> や大林組 <1802> 、清水建設 <1803> 、鹿島建設 <1812> といった大手ゼネコンをはじめ、トンネル施工で定評のある安藤・間 <1719> や奥村組 <1833> 、西松建設 <1820> などが有力候補となる。
さらに、道路舗装大手のNIPPO <1881> 、高架橋の補修に強みを持つショーボンドホールディングス <1414> 、セメント大手の太平洋セメント <5233> 、道路情報表示システムを手掛ける星和電機 <6748> [東証2]、消火設備のホーチキ <6745> などにもビジネスチャンスが訪れそうだ。
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