市場ニュース

戻る
 

【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「乱高下しやすい高値圏」

株式評論家 富田隆弥

◆「山高ければ風雨強まる」――9日の東京市場の乱高下はまさにそんなところだろう。日経平均株価は前場に468円高の2万3382円と上昇を加速させていた。ところが、昼過ぎから雲行きが怪しくなり、14時半に391円安の2万2522円とわずか2時間半で860円も急落。そして、大引けは45円安の2万2868円であるから30分でほぼ350円も戻した。

◆10月の日経平均は16連騰もあって、2日の2万0400円から31日の2万2011円と1611円(+7.9%)も上げた。11月はその勢いを加速させ、9日の2万3382円まで約1週間で1371円(+6.2%)も上げている。こうした歴史的急騰を演じたところだけに、スピード調整であっても「ヒヤリ」とした下落になるのは当然だろう。

◆ただ、市場関係者の先高観測は依然根強い。チャートは21年前(1996年)の2万2750円高値を突破、1991年以来26年ぶりの水準となり、過去最高値(1989年3万8957円)から08年安値の6994円までの下げ幅(3万1963円)に対する半値戻し(2万2975円)も達成。好業績の発表が相次ぎ「業績相場、脱デフレ相場が始まった」、「スピード調整は当然」、「調整を入れても下値は限られる」といった声が多く、「歴史的大相場」を口にする向きも少なくない。

◆確かに強い相場なので、調整を入れてもすぐに切り返すことは想定される。ただし、テクニカル指標の多くが過熱を強めており、RCIは日足、週足、月足いずれも過熱ゾーンに張りついている。右肩上がりの流れが続くうちは「流れに従え」が基本だが、テクニカルの過熱を極めた状態がいつまでも続くとも思えず、調整には「基調の変化」が伴うことに注意したい。

◆テクニカルの過熱は、世界マーケットをリードするNYダウにも当てはまる。米国も景気、企業業績は好調だが、チャートはリーマンショックから8年半上げ続け、この1年間の上昇加速は三段上げの仕上げ局面に入っていると捉えることもできる。

◆FRBの新議長がパウエル氏に決まり、市場は「無難」と評価しているようだが、株式市場が歴史的高値にあるだけにカジ取りの難易度は過去に例のないものとなる。12月のFRBでの利上げは織り込まれているものの、長短金利が縮小しているほか、自動車ローン問題が燻るなど米国経済の先行きには不穏な兆しも出ている。昨年11月9日の大統領選から1年を経過し、チャートは一つの変化日ポイントを迎えている。

◆日米とも当面は乱高下しながら高値を形成すると見ているが、皆が楽観(強気)に傾いていることもあり、調整により基調が変わる可能性があることは承知しておきたい。

◆佐川急便の持ち株会社である「SGホールディングス <9143> 」の12月13日上場(IPO)が決まった。証券会社による営業が活発になることが想定されるが、早くも買うべきか悩んでいる個人投資家もおられるようだ。私から申し上げることがあるとしたら、全体相場のことも踏まえ、いま株に関しては「金持ちケンカせず」となろう。

(11月9日 記、毎週土曜日に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均