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【特集】桂畑誠治氏【そろそろ小休止? 「1996年高値越え」いつ】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―騰疲れで警戒感も、日経平均2万2666円奪回へのシナリオは―

 東京株式市場はリスク選好ムードのなかで投資マネーの流入が根強く続いている。ただ、連騰疲れからくる目先的な警戒感も拭いきれず、売り圧力も意識される状況にある。1996年6月につけた戻り高値2万2666円の奪回に注目が集まっているが、それを指呼の間にして週明けの東京株式市場は足踏みする格好となった。一段の上値期待が膨らむ一方で、ここから積極的な買いを入れることに躊躇する投資家も少なからずいる。ベテラン市場関係者2人に年末に向けた株価の見通しについて意見を聞いた。

●「年内に日経平均2万4000円を目指す展開に」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 佳境入りとなっている決算発表は総じて好調だ。東京株式市場では企業や経済のファンダメンタルズを考慮した場合、依然として水準訂正余地が残されており、足もと外国為替市場で円安傾向に振れていることも考慮すれば、日経平均は一段の上昇が見込める状況にある。

 トランプ米大統領の訪日では、日本企業が米国の雇用に貢献しているとの安倍首相の主張が利いたかどうかは定かではないが、首脳会談で貿易不均衡問題について踏み込んだ発言は見送られ、今後の日米経済対話のなかで麻生副総理とペンス副大統領に任せる姿勢をみせている。これは日本にとってはポジティブで、ドル円・相場の動向も絡め株式市場にフレンドリーな印象を与えている。

 また、注目された次期FRB議長人事はジェローム・パウエル氏に決定、マーケットは大方織り込んでいたとはいえ、ハト派の人選だったことに買い安心感が広がる。なお、12月のFOMCでは、来年の利上げについて参加者の見解が明らかとなるが、低インフレ率を背景として引き上げに慎重な見方が増えれば、これも株高を助長することになろう。

 トランプ大統領が掲げる経済対策でとりわけ重要な位置づけにある法人税改革については、これまでの35%の税負担を20%に引き下げる形でまとまる可能性が高まっている。この件についても市場は織り込み切れておらず、実現すれば株高要因として作用しよう。さらに法人税制改革は米経済の拡大を後押しし、為替市場ではドル買いの動きを誘発することで、東京市場には米株高と円安という2つの追い風がもたらされることになる。

 一方、北朝鮮を巡る地政学リスクについては、今後中国に対し北朝鮮への行動を強めるように促す方向が予想される。外交政策によって落としどころを探る展開は続く。北朝鮮の軍事的威嚇で一時的に株価は下押す場面があるかもしれないが、大勢的な上昇波動を崩すには至らないだろう。

 日経平均株価は年末までに2万4000円台を窺う展開があっても不思議はない。全体相場底上げのなかでも、特に海外景気の好調や円安などを背景に半導体や電機・精密セクターに有利な地合いが想定される。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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