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【特集】ますます増加の「65歳以上」人口、拡大シニア市場の先行者は? <株探トップ特集>

ウエルシア <日足> 「株探」多機能チャートより

―欠かせないシニア向け商品強化、取り込みのカギは「日常生活」―

 急速に進む社会の高齢化を背景に、 シニア向けをテーマとした商品の市場が拡大している。総務省統計局の「人口推計」によると、2017年2月1日時点での日本の総人口は1億2679万人で、前年同月比22万4000人減少した。一方で、65歳以上の人口は3477万8000人で、同62万3000人増加し、総人口における割合は27.4%となった。今後も65歳以上の割合が増加する見込みであることを考慮すると、シニア層に向けた商品の強化は、欠かせないものとなるだろう。

●シニア世代の消費は余暇より生活必需品

 一口にシニア向けといっても、そのライフスタイルはさまざまであることから、シニア向けビジネスもまたさまざまなものがある。例えば、いわゆる団塊の世代(1947~49年生まれ)が2007年以降順次60歳を迎えるに当たり、シニア層が余暇を楽しむなどして消費の牽引役になると期待されていたのは記憶に新しい。

 ただ、実際はシニア層による余暇などへの消費は期待していたほどではないようだ。民間の調査機関によるシニア世代の消費の動向をみると、旅行などの教養娯楽や交際費をはじめとする余暇を楽しむ支出はむしろ減少しているという。定年退職時の平均退職金額が06年をピークに減少傾向にあることや年齢の引き上げなどから、60代世帯の金融資産保有額が減少していることがその背景にあるようだ。

 一方で、食料品や携帯電話の通信費など、日常生活に必要な支出は増加しているという。これらを考慮すると、注目は日常生活でシニア層が好むサービス・商品を提供している企業となるだろう。

●イオングループはシニアの取り込みで先行

 こうした動きに対応したのが、イオン <8267> だ。グループの中核であるイオンリテールがシニア層をターゲットとした店舗の展開を進めており、13年には、イオン葛西店(東京都江戸川区)を「G.G(グランド・ジェネレーション)ストア」として開業。開店1~2時間前にラジオ体操や簡単な運動を行う健康サポートや、囲碁・将棋などができるスペースの提供などを実施している。同社では同様のシニア向けの取り組みを葛西店を含めて計4店で進めてきたが、今後は本格的に展開し、25年までに全国100店舗以上にする方針。巡回バスの運行のほか、行政や医療機関との連携も視野に入れている。

 また、イオングループのドラッグストアであるウエルシアホールディングス <3141> では、一部の店舗内に「ウエルカフェ」を設け、地域に開放している。栄養相談会やメークアップサロンなどのイベントスペースとしてだけではなく、休憩場所や交流の場として、シニア層の取り込みにも貢献している。

●アサヒグループ食品は介護関連製品売上を3.5倍へ

 食品業界では、さまざまな企業がシニア向け食品を手掛けているが、なかでもアサヒグループホールディングス <2502> では、傘下のアサヒグループ食品が20年をメドにシニア介護関連製品の売上高を約50億円と17年予想比の3.5倍に伸ばす方針だ。シニア向けの品ぞろえを拡充するため、口腔ケア商品「オーラルプラス」シリーズから初の食品「うるおいキャンディ」2品と、栄養バランスのよい献立にできる“おいしい介護食”「バランス献立」33品を9月1日に発売する。

 また、化粧品業界ではファンケル <4921> が昨年10月に60歳以上向けのスキンケアブランド「ビューティブーケ」シリーズを発売した。無添加のスキンケア商品を中心とするブランドで、年配の女性が使いやすいように、容器やパッケージを工夫したのが特徴。ブランド立ち上げに伴い店舗でテスト販売したところ、新規顧客数は計画比で2割近く伸びて好調な滑り出しとなり、今年4月からは通販と直営店全店舗で本格展開を開始した。

 同じく化粧品業界では、花王 <4452> が11年から他社に先駆けて50代を主なターゲットとする商品を展開していたが、資生堂 <4911> も15年1月からシニア向けブランドを展開ししのぎを削っている。その資生堂は、ポーラ・オルビスホールディングス <4927> とともにしわ改善化粧品を展開しているが、販売チャネルや価格の違いがあるため双方で顧客を取り合うことも回避し、相乗効果で新たな市場を作り出している。

●介護特有のにおい解消に取り組むエステー

 このほかにも、エステー <4951> は今年5月に介護用品分野へ参入。得意とする消臭芳香剤分野で介護特有のにおいの解消に取り組んでいる。

 さらに、トランス・コスモス <9715> は今年5月、通信販売事業の「日本直販」でシニア向けの通販カタログを創刊した。衣料や雑貨、健康器具などさまざまな商品をそろえ、シニア層の幅広いニーズに応えており、日本直販の認知度を生かして、新たな需要を開拓する。

 こうした各社の動きからも今後、シニア層にターゲットを絞った商品・サービスはますます増えるとみられている。先駆している前述した銘柄群などには注目が必要だろう。

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