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【特集】10兆円“王手”総菜市場、食品「ラストリゾート」の有望株は <株探トップ特集>

キユーピー <日足> 「株探」多機能チャートより

―市場拡大で伸びる各社業績、恩恵は食品トレーなど周辺にも―

 さまざまな社会情勢の変化を背景にした「中食(なかしょく)」市場の成長を受け、いま「総菜」に注目が集まっている。10兆円規模に迫る総菜市場だが、その勢いはいまだ衰えることなく拡大基調にある。ここにきて大型投資で積極攻勢に出る企業もあり、巨大マーケットに向ける食品各社の視線は熱い。たかが総菜、されど総菜――主役に躍り出る「総菜 」を巡る現状と、活躍期待銘柄を追った。

●市場規模10兆円に迫る!

 飲食店での食事を「外食」、自宅での手作り料理を「内食(うちしょく)」というが、自宅において総菜、弁当など調理済みの食品を食べることを、外食と内食の中間との意味合いから「中食」という。その中心を担うのが総菜市場で、内需関連株の一角として株式市場でも急浮上しそうだ。

 日本惣菜協会は16日、16年の市場規模は、2015年の9兆5813億円から順調に拡大し、前年比2.7%増の9兆8399億円となったと発表した。23日に発刊予定の中食・総菜業界の国内市場をまとめた「2017年版惣菜白書」の調査結果によるもの。総菜市場が拡大している背景には、女性の社会進出、加速する高齢化、そして単身世帯の増加など、現代日本が直面している社会状況の変化が挙げられる。帰宅してすぐに食べられる総菜は、働く女性にとって強い味方であることは言うまでもないが、調理の手間が省けることに加え、消費者が必要とする適度な分量からでも購入できるという利便性は高く、高齢者、単身者のニーズにもマッチしている。

●伊藤ハム米久は50億円で新工場

 こういったさまざまな追い風を受け、伊藤ハム米久ホールディングス <2296> も攻勢に出ている。同社は約50億円をかけて茨城県取手市に総菜工場を建設する。「来年3月に稼働する予定で、今回はシェアが拡大しているピザ・スナック類の専用工場になる。中食市場全体が拡大するなか、既存の製造設備の稼働率もかなり逼迫している状況で、将来についても拡大するとみており投資を決断した」(広報)と語る。もちろん、他の総菜類については別の工場で製造しており、「こちらも伸びている状況」(同)という。株価は、3月28日に直近高値1128円をつけた後は調整局面に入り1000円近辺で推移しているが、ここからの動向には目を配っておきたいところだ。

 ここ株式市場において注目を集めているのが、わらべや日洋ホールディングス <2918> だ。同社はセブン―イレブンなど大手コンビニ向け中心に、弁当やおにぎり、総菜などを手掛けており、業績は順調に拡大している。4月14日に発表した17年2月期連結営業利益は前の期比33%増の40億9900万円と大幅増益となり、18年2月期の連結営業利益も前期比12%増の46億円の予想と好調継続の見通しだ。株価は、年初来高値圏の2900円近辺で推移、3000円超えから一段高も期待できそうな気配だ。

●収穫期入りのキユーピー

 総菜関連株が脚光を浴びるなかキユーピー <2809> が、その存在感を増している。マヨネーズ、ドレッシングなどを主力とする同社だが、意外にも総菜分野でも頭角を現しはじめている。同社では「市場自体の伸びもあり、サラダ総菜事業は右肩上がりを続けている」(広報部)。今後の見通しについては、「キユーピーといえばマヨネーズなどの調味料が代名詞だが、将来的にはサラダ総菜事業のウエイトが拡大していく可能性は大きい。また、既に全国に生産拠点があり、今後は種まきが終わり収穫期に向かう状況」(同)と、総菜事業にかける期待度は高い。

●総菜店でロック・フィールド

 また、総菜店RF1(アール・エフ・ワン)などを運営するロック・フィールド <2910> にも活躍の場が広がっている。同社は業績も好調、3月2日に第3四半期累計連結決算を発表しているが、売上高385億1400万円(前年同期比1.9%増)、営業利益24億2500万円(同25.6%増)、純利益16億7600万円(同35.7%増)と大幅増益となった。

 そのほか、少量食べきりサイズの「おかず畑ミニ」シリーズが好調なフジッコ <2908> 、「ご飯がススムキムチ」のピックルスコーポレーション <2925> [東証2]などにも注目が集まりそうだ。

●事業環境絶好調のエフピコ

 また、総菜市場が拡大するなかで恩恵を受けるのが、食品トレー、弁当や総菜の容器を製造するエフピコ <7947> だ。付加価値の高い新製品の開発と品揃えのスピードを加速、オリジナル製品の販売構成を高めることで、製品売上高の増加と利益率の向上を図っており、業績も好調。また製品全般について6月1日出荷分から価格改定も発表しており、これも収益に寄与しそうだ。株価も一貫して上昇波動を形成、現在は年初来高値圏の5800円近辺で推移している。

 ある業界関係者は、「人口が減少するなか、食品業界の事業環境は厳しい。そんななかで、主力製品に次ぐ第2の柱として、(食品各社は)拡大する総菜市場に照準を合わせてきている。ある意味、総菜は食品業界のラストリゾートといえるのかもしれない」という。急激に変化する日本社会の構造変化を背景に、総菜という巨大市場を巡る熱い戦いは、今後本格化しそうだ。

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