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【特集】緊急調査「ロシアゲート」と株価の行方、“強気相場”復帰は早い <株探トップ特集>

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

―米トランプ政権不安で遠のいた2万円乗せ、市場は影響限定的の見方―

 トランプ米大統領がロシアとの関係を巡る米連邦捜査局(FBI)の捜査に圧力をかけたとの疑惑から、米政治の混乱懸念が浮上。17日の米国市場の急落に続き、この日の東京株式市場でも日経平均株価は一時前日比360円超下落した。トランプ大統領には弾劾懸念も浮上しており、大型減税策などが進まなくなるとの見方もある。しかし、市場には「ロシアゲートの相場への影響は限定的」との声も少なくない。その理由とは何か。

●NYダウ急落し大幅な円高進行、米政策期待の剥落懸念も

 18日の東京株式市場は日経平均が前日比261円02銭安の1万9553円86銭で引けた。待望の2万円乗せからは再度、遠ざかった格好だが、市場が懸念するのは「トランプ米大統領が、FBIのコミー前長官にロシアとの関係を巡る捜査を打ち切るよう求めていた」という疑惑だ。トランプ大統領はコミー前長官を解任したことで捜査妨害をした疑いが持たれている。

 ニクソン政権下のウォーターゲート事件との類似性から「ロシアゲート」とも呼ばれている今回の疑惑では、トランプ大統領に弾劾の可能性も浮上。トランプ政権の目玉とされている減税政策などの実現は遅れる可能性があり、米経済への影響も危惧されている。足もとの経済指標もさえずダウ工業株30種平均は17日に急落、為替は1ドル=110円台へ大幅なドル安・円高が進行した。また、18日の東京株式市場では電機などハイテク株や銀行株が売られた。

●「トランプ大統領弾劾のハードルは相当高い」との見方

 では、今回のロシアゲートは今後の金融市場にどれだけ影響を与えるのだろうか。焦点は、米政治の混迷が与える実体経済への影響だが、市場には強気派が多い。

 東洋証券の大塚竜太ストラテジストは「影響は限定的だろう」とみる。米国の景気は良好であり、政治不安により「ファンダメンタルズが毀損されるわけではない」という。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストも「米国景気はややスローダウンしつつあるが、頭打ちはしていない。当面の調整があってもNYダウの下げは限られるだろう」という。

 同様に「政治ショックは一時的だと思う」と外為どっとコム総研の神田卓也調査部長は指摘する。トランプ大統領が弾劾裁判にかけられる可能性があるが、弾劾には米議会の下院の過半数、上院の3分の2の賛成が求められる。しかし、上下両院で与党・共和党が過半数の議席を占める現状にあり「弾劾が成立する可能性は相当低い。たとえ弾劾が成立したとしてもペンス副大統領が昇格した方が市場は好感するだろう」と神田氏はいう。為替相場に関しては「当面は1ドル=110~115円のレンジ相場だが、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の前後から115円に向けドル高が進む」と予想する。

●当面は内需株優位か、高収益性銘柄を評価へ

 さらに、いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員も「トランプ政権の政策は止まっているが、これまで米国株式市場は堅調な値動きを続けていた。ポイントは米国の政局ではなく、景気動向だ」とみる。「米政局で株価が下がる局面は買い場」とし、「今後の日経平均のレンジは1万9000円~2万1000円で6月ごろには上値に到達することもあり得る」と予想する。

 個別では「安定的に利益を積み上げられる銘柄が魅力的。当面は内需系の食品、小売り、通信といったセクターが狙い目だろう」と秋野氏。米国の利上げはあっても長期金利の低迷が予想されるなか、「債券代替投資の流れは続く」という。このなか、上場来高値を更新するニトリホールディングス <9843> や良品計画 <7453> のような高収益銘柄が強調展開を続けそうだ。

●東洋証券ストラテジスト・大塚竜太氏

 ロシアゲート問題自体は米国株市場に及ぼす影響は限定的であるとみている。トランプ米大統領は就任当初からマスコミとの折り合いが悪く、今回の件もメディアを通じての見解が前面に押し出される格好となっている。これに絡めた海外ヘッジファンドなどの売り仕掛けが今回は火を噴いたかたちとなっているが、これまでには“不発弾”も多い。この問題でトランプ大統領が実際に弾劾されるような状況には至らないとみている。

 また、万が一トランプ氏が失脚するようなことになっても、ショック安は一時的なもので終わるだろう。米国経済はトランプ政策に身を委ねるような弱い状況にはなく、むしろ強過ぎて6月利上げが濃厚視されるようにクールダウンが必要な局面なのだ。今回の問題でファンダメンタルズが毀損されるわけではなく、先の地政学リスクの時と同様、投資家は冷静になるべきだと思う。外国為替市場でも1ドル=110円ラインを大きく割り込まむことはないとみており、中期的には112~115円と円安方向を目指すと考えている。日経平均の下値は25日移動平均線近辺の1万9170円前後が一つのメド。また、いったん戻りに転じれば上値は軽く、2万円大台回復は月内にも可能とみている。

●証券ジャパン調査情報部長・大谷正之氏

 トランプ政権の対ロシア疑惑の問題は表面化したばかりで、現段階では不透明要因が多すぎて今後の影響度を想定するのは難しい。米大統領の弾劾要求も飛び出しており、少なくとも今後半月程度は波乱の継続が予想される。ただ、米景気や企業業績は比較的堅調で、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの可能性に変化はなさそうだ。

 日経平均が4月半ばから急ピッチな上昇を続けてきた背景には円安・ドル高の進行があった。決算発表が進展するなかでも、円安が個別銘柄の今期業績見通しの支えとなった。従って、1ドル=110円前後の水準が防衛ラインで、これ以上の円高・ドル安推移は日本株にとって打撃となる。

 取引時間中ベースで、4月17日の安値1万8224円から5月16日高値1万9998円までの上昇幅の半値押しは1万9111円となっている。また、25日移動平均線、75日移動平均線、26週移動平均線など主要な指標がいずれも1万9100円台に集まっていることから、この水準が支えとなる可能性が高く、1万9100円台まで下落しても、その後上昇トレンドは継続することになりそうだ。

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