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【特集】【FX】“パニック相場”再来の条件、仏大統領選後の為替相場は <GW特集>

Klug FX 編集長 山岡和雅

―マクロン氏優勢でリスクシナリオは後退、中長期ではユーロ売りも―

Klug FX 編集長 山岡和雅

 5月7日にフランスの大統領選挙の決選投票が行われ、勝者が5月16日に任期を迎えるオランド現大統領の後任として新大統領に就任する。

 4月23日に行われた第一回投票では、事前の世論調査で上位4名の支持率が比較的接戦となり、注目を集める中、中道無所属のマクロン元経済相が24.01%の得票率で一位。極右である国民戦線のル・ペン党首(24日に党首を一時辞任)が21.30%で二位につけた。

 中道右派の共和党フィヨン元首相が20.01%で三位、急進左派の左翼党メランション元共同代表が19.58%で差がなく四位につけた。現大統領オランド氏が所属する中道左派社会党のアモン前教育相は順位では五位となったものの、得票率は6.36%に留まっている。

 第一回投票前に市場が懸念していたのは、ル・ペン氏とメランション氏の極右・極左対決であったが、マクロン氏が得票率トップに立ち、決選投票に駒を進めたことで、懸念が後退。ユーロが一気に買い進まれる展開となった。

 マクロン氏とル・ペン氏との決選投票に関しては、以前からマクロン氏の優位が指摘されていた。ル・ペン氏に対する極右への忌避感から、両名以外の候補者の支持層は、中道派のマクロン氏を選択するという見通しが広がっていたため。

 実際、決選投票が決まってからの世論調査では、マクロン氏が60%前後、ル・ペン氏が40%前後の支持となっており、20ポイントという大差でマクロン氏の勝利が予想されている。

 両者以外の候補を支持していた有権者の状況を確認すると、フィヨン氏の支持層は40%前後がマクロン氏、30%前後がル・ペン氏と、マクロン氏優勢ながら、比較的接戦。残りの30%前後が棄権するとしている。マクロン氏は中道派であるが、元々は中道左派社会党の出身であることから、右派系の支持者からの反発が大きいとみられる。

 メランション氏の支持者はマクロン氏支持が約半数、ル・ペン氏の支持は15%前後に留まっている。こちらは35%前後が棄権するとしている。急進左派であるメランション氏とほぼ真逆の姿勢を示している極右ル・ペン氏との相性が良くないという面があるようだ。

 なお、マクロン氏がもともと所属していた社会党のアモン候補の支持層は80%程度がマクロン氏を支持しており、ル・ペン氏の支持はほとんど見られないなど、もっとも極端な見通しになっているが、もともとの支持層が小さい。

 では、マクロン氏で本決まりという認識でいいのかというと、リスクがないわけではない。

 ル・ペン氏は第一回投票の結果判明後、メランション氏の支持層に対するアピールを強化している。同氏の支持層は現状に対する不満が強い層であることから、現状からの変化が見込まれるル・ペン氏がうまく取り込めるのではとの期待があるようだ。現状棄権するとしている支持者層の取り込みに成功すると、マクロン氏との差は一気に縮まる。

 とはいえ、20ポイント近い差は、基本的にはセーフティーリードに近い。マクロン氏が勝利すると見て、相場動向を予想していくべきであると考えられる。

 では、実際にマクロン氏が勝利した場合、どのような相場展開が予想されるだろうか。

 基本的には安心感からのユーロ買いの動きが期待される。

 ル・ペン氏は1日のラジオ番組で、自身が大統領になった場合EUを離脱する姿勢を改めて示すなど、反ユーロ、反EU色が強い。

 圏内二番目の経済大国であるフランスが抜けた場合、ユーロの存続はかなり厳しいものとなる。また、EUからの離脱が認められた場合、英国に続いてフランスまでいないEUにどこまで意味があるのかという問題が生じる。

 こうした市場を大きく混乱させる可能性があるル・ペン氏の大統領就任が阻止され、マクロン氏が大統領になった場合、基本的には安心感が広がってもおかしくはない。

 ただ、ここまで世論調査で差がついていると、市場は基本的にマクロン勝利を織り込んで動いていると考えられる。そのため、結果判明直後の動きは限定的なものに留まりそう。

 4月23日の第一回投票の後では、ユーロ円は117円台から121円台への大きな上昇が見られたが、決選投票後はここまでの動きは期待しにくい。

 とは言え、実際の結果が出るまでは取引を手控えた参加者が、機関投資家を中心に少なくないと思われることから、ユーロ円は基本的に上昇傾向。124円を試す可能性もある。

 ただ、中長期的には少し注意が必要。

 複数の閣僚経験があるとは言え、マクロン氏の政治手腕はまだまだ未知数。議会の後ろ盾もないなかで、英国のブレグジット問題など重要な案件が山積みになっており、かなり厳しい政権運営が強いられるとみられる。

 失望感はユーロの売りを誘う。短期的な上昇が一服すると、ユーロは一転して売り込まれる可能性も。最初の上昇で123円から124円の上値抵抗水準を抜け切れていない場合、上値一服感も加わって、特に売りが強まり、第一回投票直後のギャップを埋めに118円程度まで下がる可能性も。

 なお、ル・ペン氏が勝利した場合は、パニック的なユーロ売りが予想される。

 ユーロの崩壊まで懸念される事態になるため、ユーロ円は直近の重要なサポートである115円割れまで意識される状況に。可能性は相当低いと思われるが、一応警戒が必要である。

2017年5月1日 記

<プロフィール>(やまおか・かずまさ)
・1992年チェースマンハッタン銀行入行後、1994年ロイヤルバンクオブスコットランド銀行(旧ナショナルウェストミンスター銀行)に移籍。
・10年以上インターバンクディーラーとして活躍した後にGCIグループに参画。
・事業譲渡により2016年3月にみんかぶグループ入り。
・外国為替分析のプロとしてメディア出演や講演多数。
(社)日本証券アナリスト協会検定会員。
主な著書として「夜17分で、毎日1万円儲けるFX」(明日香出版社)、「はじめての人のFX(外国為替証拠金取引)基礎知識&儲けのルール」(すばる舎)がある。


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