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【特集】“豊洲問題”が投げかけるもの―脚光「土壌汚染対策」株 <株探トップ特集>

エンバイオH <日足> 「株探」多機能チャートより

―今国会「対策法改正案」提出が追い風、高まる関心とビジネス機会拡大―

 土壌汚染の調査・対策工事を手掛ける企業が再注目されそうだ。築地市場から豊洲市場への移転問題をきっかけに土壌汚染への社会的関心が一段と高まるなか、都市再開発や2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた土地取引などに絡んで処理需要が膨らむことが予想される。3月3日には政府が土壌汚染対策法改正案を閣議決定し、今国会で審議される見通しとなったこともあり、関連企業のビジネス機会拡大が期待される。

●土壌汚染調査の実施対象が拡大へ

 土壌汚染対策法改正案のポイントは、汚染状況調査の実施対象となる土地が広がること。現行法では土地の形質変更(土壌の掘削や盛土)を行う場合、大規模な土地を除いて工場が操業を続けていれば土壌汚染調査が猶予される規定があり、こうした土地では汚染状況の把握が不十分であることから地下水汚染の発生や汚染土壌の拡散が懸念されている。そこで改正案では小規模な土地であっても、形質変更を行うときはあらかじめ届け出をさせ、都道府県知事は調査を行わせると明記されている。

●国内潜在的市場16.9兆円とも

 豊洲市場では地下水から基準を超える汚染物質が検出されたことが問題となっているが、その原因は土壌汚染にある。この問題でも明らかなように、土壌汚染は土地の資産価値を低下させるだけでなく、風評被害、損害賠償の請求などによる経営リスク、生産者や生産物のブランド価値低下など、さまざまな問題を引き起こす可能性がある。こうしたリスクを意識して大企業の多くで計画的に対策が進められている半面、国内企業の大部分を占める中小企業は費用面がネックとなり遅れているのが現状だ。推定では国内の 土壌汚染対策の潜在的市場は16兆9000億円ともいわれているが、今年4月から土壌汚染対策法の特定有害物質にクロロエチレン(別名:塩化ビニル、塩化ビニルモノマー)が追加指定されるなど規制強化の流れにあり、対策需要は今後さらに拡大することが見込まれる。

●エンバイオの受注高は順調に拡大

 エンバイオ・ホールディングス <6092> [東証M]は、汚染土壌を掘削せずに地中の汚染物質を分解する「原位置浄化工法」や、汚染土壌を掘削して場内で汚染物質を分解・除去した後に埋め戻す「オンサイト浄化工法」などの技術を持つ。足もとの土壌汚染対策事業の受注は良好で、契約残高のうち18年3月期の売り上げ予定分は19億5700万円(前年同期時点の翌年度残高と比べ67%増)と順調に拡大。会社側では「営業体制の強化に加え、新技術によって浄化できる案件が増えたことが主な要因」(管理部)とするとともに、土地所有者の意識の高まりも理由のひとつに挙げている。また、同社は土壌汚染の可能性などがある用地を購入し、浄化した後、売却するスキームを確立していることも注目点だ。

●環境管理は独自モデルを持つ企業と提携

 環境管理センター <4657> [JQ]は環境総合コンサルタントで、超微量分析に強みを持つ。16年10月には、土壌汚染対策にコストキャップ保証(対策工事費用を事前に確定させるサービス)をつけるという独自のビジネスモデルを構築しているフィールド・パートナーズ(東京都港区)と資本・業務提携しており、対策事業のさらなる拡大が期待される。

●ダイセキSは土壌処理量が増加に転じる

 ダイセキ環境ソリューション <1712> は、土壌汚染の調査・コンサルティングから浄化工事までの一貫体制が特徴で、産業廃棄物リサイクルで蓄積した技術や無害化処理技術を駆使し、環境にやさしい浄化処理を実現している。同社は17年2月期第3四半期(16年9-11月)に約20万5000トン(6-8月期比12.3%増)の土壌を処理しており、16年2月期第2四半期から続いていた低下傾向に変化の兆しが出ている点は見逃せない。

●不動テトラや鉱研工業、地盤ネットHD、いであにも注目

 このほかでは、不動テトラ <1813> や安藤ハザマ <1719> 、DOWAホールディングス <5714> 、鉱研工業 <6297> [JQ]、応用地質 <9755> なども土壌汚染調査・対策を手掛けており、社会的関心の高まりが追い風となりそうだ。

 また、汚染土壌処理の環境改善剤などを手掛ける昭栄薬品 <3537> [JQ]、土壌汚染改良コンサルティングの日本アジアグループ <3751> 、土質調査を行う土木管理総合試験所 <6171> 、地盤調査データを解析するサービスを提供する地盤ネットホールディングス <6072> [東証M]、環境コンサルのいであ <9768> も関連銘柄として注目したい。

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