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【特集】東芝 “真実の価値”、「筆頭株主」旧村上系ファンドが狙うモノ <株探トップ特集>

東芝 <日足> 「株探」多機能チャートより

―6月株主総会視野に風雲急、市場に錯綜する思惑とは?―

 東芝 <6502> の筆頭株主に「物言う株主」として知られるエフィッシモが浮上した。これを受け、24日の東京株式市場で同社株は一時前日比10%高の228円まで急騰した。東芝の大株主に旧村上ファンド系企業が登場したことを、衝撃的な出来事と受け止める市場参加者は少なくない。東芝の株主は流動化しており、今後、新たな株主が登場する可能性もある。これから6月の株主総会シーズンに向けて東芝を巡る状況は一段と緊迫の度を高めそうだ。

●「監理銘柄」指定の株価急落時に大量買いか

 旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントは、川崎汽船 <9107> やヤマダ電機 <9831> 、ジャパンディスプレイ <6740> などの大株主となり、株式市場で存在感を示してきた。そのエフィッシモが、23日に提出した大量保有報告書で東芝の8.14%の株式を保有したことが判明した。この株式取得により、エフィッシモは東芝の筆頭株主に浮上した可能性が高い。保有目的は「純投資」としている。

 そもそも、エフィッシモはいつ東芝株を大量取得したのか。この点に関して、「今月15日の監理銘柄への指定で株価が急落した際の安値を拾ったのではないか」(市場関係者)という見方が出ている。それまでにも東芝株を一部保有していた可能性があるが、上場廃止の恐れのある監理銘柄に指定されたため内部規定で東芝株を保有することができなくなった機関投資家が投げ売りした局面で大量買いしたことにより、筆頭株主に躍り出たという見方だ。

 エフィッシモの株式保有姿勢も「短期の売却を狙ったものだろう」という見方がある一方、「今回は第一歩。さらに買い増すこともあるだろう」と見方は割れている。いずれにせよ、今後、エフィッシモの保有株比率がどう動くかが注目されることは必至だ。

●6月株主総会に向け株主提案の可能性も

 3月下旬という時期に、筆頭株主として名乗りを挙げたことも思惑を呼んでいる。6月の株主総会で株主提案を行う可能性があるからだ。今月30日にはメモリー事業の分社化を巡る臨時株主総会が開催される。この総会にエフィッシモが参加するかは不明だが、6月の株主総会に向けては「一定期間株式を保有するのなら、筆頭株主として何らかの要求を出してくるかもしれない」(アナリスト)と見られている。

 具体的な要求があるとすれば、東芝の一段の合理化要求か、あるいはメモリー事業に対するものか。「ポーズだけのものかもしれないが、自分たちの存在感を示すためにも株主提案権を行使してもおかしくはない」(同)という。

●「軍需関連」東芝はつぶれないとの憶測も

 そして、なぜエフィッシモは東芝株を狙ったのか。ある市場関係者は「東芝に価値があるとみており、投資に対するリターンが得られると判断したことは間違いない」という。

 東芝は今3月期末には1500億円規模の債務超過に転落すると見られているほか、米原発事業による巨額の追加損失が発生する恐れがある、という報道も出ている状況にある。しかし「日本の軍事産業の根幹に絡む東芝がつぶれることはないだろう。たとえ、上場廃止となっても倒産さえしなければ無価値とはならない」と前出の市場関係者はいう。東芝のメモリー事業の価値は2兆円以上と言われ、鉄道やエレベーターなど社会インフラ事業にも相応の価値はあるとみられている。

●状況次第では外資含め転売の可能性

 そんななか、市場が懸念するのは、エフィッシモが保有株を転売することだ。エフィッシモのような投資ファンドが長期の安定株主となることは考えにくいからだ。

 その場合、海外企業に転売することも選択肢のひとつとして浮上する。政府が東芝の技術の海外流出を防ぐ姿勢をみせても高値での買収姿勢を示されれば、阻止することはできないことは、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ <6753> [東証2]買収の例が示している。「エフィッシモはダミーでバックにさらに大きな投資家がいるのでは」との憶測も聞こえる。

 いずれにせよ、今回新たに表面化したのは東芝の株主は相当流動化しており、エフィッシモに続く新たな大株主が登場してもおかしくないということだ。こうしたなか、6月の株主総会で株主提案を巡る委任状争奪戦(プロキシーファイト)が起こるような事態も否定はできない。当面の焦点は4月11日に東芝が決算発表をできるかだが、6月の株主総会に向け同社株を巡る騒動が新たなステージへ突入したことは間違いない。

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