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【特集】“火災警報器”交換ラッシュ到来、防火関連銘柄に脚光 <株探トップ特集>

モリタHD <日足> 「株探」多機能チャートより

―広がる事業領域、社会福祉施設の設置期限18年3月で需要本格化も―

 火災警報器が交換ラッシュの時期を迎えている。日本火災報知機工業会では、電池部品の寿命や電池切れなどで警報器そのものが機能しなくなるおそれから、10年で交換するよう推奨している。2006年の改正消防法ですべての新築・改築物件に警報器設置が義務付けされてから今年で11年。家庭用・商業用含め交換が必要な時期を迎え、更新需要が生まれている。近年では、医療施設や老人ホーム、カラオケなどの娯楽施設にも延べ面積に関わらずスプリンクラーや警報機の設置を義務づける改正案が加えられている。派手さはないものの、着実に事業領域が広がっている防火関連銘柄に注目したい。

●改正消防法で防火機器の需要広がる

 13年に長崎県で起きた高齢者向け社会福祉施設火災や、同年に発生した福岡県有床診療所火災などを受けて、15年4月に改正消防法が施行された。小規模老人ホームをはじめとする社会福祉施設に対し、18年3月までに自動消火設備の設置が義務付けられた。

 そこで注目したいのは、消防車から住宅用消火器具まで扱うモリタホールディングス <6455> 。275平方メートル未満の小規模福祉施設向けに「スプリネックス ミニ」を販売している。スプリンクラーの代替で簡単に設置でき、水の4倍の消火性能をもつ消火薬剤を放射することが特徴になっている。火災による死亡事故の原因の多くは煙を吸ったことで起きる一酸化炭素中毒だが、同社製品は初期段階での消火を目的としており、施設の安全性が高まることになる。「設置期限にまだ猶予があることから本格的な需要はこれから。全国に約6000ある小規模福祉施設のうち、4分の1に当たる1500施設での導入を目標としている」と同社広報部は話している。

 他にも、避難のために患者の介助が必要な有床診療所・病院について、以前は病院では延べ面積3000平方メートル以上、診療所などでは6000平方メートル以上のものに設置が義務付けられていたが、16年4月の一部改正で、原則として延べ面積にかかわらず、スプリンクラー設備の設置が義務付けられるようになった。防火機器の設置が広がることから、消火設備機器を手掛ける日本ドライケミカル <1909> や日本フェンオール <6870> [東証2]の製品の需要拡大に注目したい。

●警報器設置の意識付けが課題

 消防法改正や条例の後押しで防火機器設置が急速に進み、東京消防庁によると16年に起きた火災はここ5年平均でも減少傾向にあるとしている。ただ、年齢別にみると65~74歳の高齢者の死者数が全体の7割近くに上っているデータもある。また、住宅火災1492件のうち、火元住戸に火災警報器もしくは自動火災報知設備ともに設置されていない事例は401件(26.9%)に上っている。

 既存住宅への設置は推奨されてはいるものの、法的に強い義務付けがされていないことや、設置にかかる手間や費用、そして必要性などの観点から自宅に設置しないという人も少なからずいるだろう。自宅や近隣への安全性を高める上で設置に向けた意識の高まりが望まれる。

 パナソニック <6752> や綜合警備保障 <2331> 、セコム <9735> では住宅用火災警報器を展開しており、設置率向上による業績への寄与が見込める。また、家庭の台所に欠かせないガス警報器を手掛ける新コスモス電機 <6824> [JQ]にも目を配っておきたい。

●好調な事業環境で収益拡大を狙う

 都市部を中心に、再開発に伴うホテルやオフィスビルの新築工事などに加え、火災警報器などの交換需要でそれに関連する企業の事業環境は良好だ。

 火災報知設備大手の能美防災 <6744> は前期に大型案件が集中したことから今期は減益を予想するも、好調な事業環境や原価低減施策などで業績上振れに期待がかかる。同じく関連銘柄の一角であるホーチキ <6745> も、交換需要や防災受信機のリニューアルなどがあり、17年3月期営業利益は51億円と過去最高益の更新を見込んでいる。

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